「星降る夜に咲く大輪の花は暗闇を照らす」その1
サナエちゃんから教えてもらった絶景スポットに辿り着くとそこには誰もいない暗闇だけが存在した。縁日の屋台から少し離れた場所に位置するこの場所はどうやら打ち上げた花火が丁度ど真ん中咲く穴場スポット的な場所らしい。
「うぅ、暗いな……ユカリちゃん花火までまだ時間あるの?」
十分くらいでこれたから最低でも後十分は待たないといけない、だがゆいゆいは暗い場所を極度に嫌がりやっぱり止めておこうと弱音を吐いた。私はその場で腰を降ろすとゆいゆいは慌てて私の傍に座って離れないように腕を掴んだ。
「ユカリちゃん、離れないでね?」
「うん」
「お姉さん、暗いの怖いからもっと傍に寄っていい?」
「うん」
「ユカリちゃん、ありがとう」
余りにも淡白に答え過ぎかな?折角ゆいゆいに甘えてくれてるんだから嫁として撫でたりした方が良いかな?
私はゆいゆいにしてあげられることはないかと耽っていると不意にゆいゆいが肩に顔を乗せてきた。
恐怖からなのか少し怯えている気がする、そしてこう告げた。
「ごめんね、頼りないお姉さんで」
その声は冷たくてさっきまでのゆいゆいの甘え声とは裏腹で落ち込んでいる時によく使う声だ。
「どうしたの急に?」
私は言葉を求めるがゆいゆいは少し間を空けてゆっくり話しだした。
「ユカリちゃんは私のこと実は頼りない女だと思ってるんじゃないかなって」
顔を見せてくれないが暗い表情なのがすぐに分かる、後悔してる時のゆいゆいはトーンが二つぐらい低くなる、だけど私は知っている。
これがゆいゆいの地声なのだと。
アリアンロッドさんからたまにゆいゆいの話を聞くとそこに語られるゆいゆいは無表情で無口の女性、生気も無く目は虚ろだと。お姉ちゃんかいる時は少し明るいくらいで基本は氷のような女性らしい。今でこそ明るいがこの明るさは【佐倉春佳】を元にした性格だと。
あの悲劇が起きてからゆいゆいの情緒不安定は加速して時折壊れてしまう。これでも精神が安定してる方ではあるが元々根暗の性格相まって素のゆいゆいが見れるのは私だけらしい。
それ程信頼している証だとアリアンロッドさんは喜んではいるけど私は胸が痛むだけだった。ゆいゆいは“無理”をしている、“我慢”しているんだと発覚するとゆいゆいの天真爛漫な笑顔は嘘となるのだから。無理して我慢して笑うなんて私には出来ない、でもゆいゆいは“お姉さん”だから、“大人”だから頑張って引っ張らないといけない立ち位置、精神が安定していないのに笑わないとけないなんて苦痛でしかないのにゆいゆいは我慢して皆を和ませてるんだ。
ゆいゆいがボロボロになって帰って来ても決して“痛い”も“辛い”も“苦しい”なんて言わない、本当は血反吐を吐くほど激痛を患っているのにゆいゆいは弱音を吐かない、だってお姉さんだから。
「そんなことないよ、ゆいゆいは私の目標であり憧れなんだから」
私は本心で語ってもゆいゆいには届かない、なら私はゆいゆいを肯定する。
「そう…なんだ」
「うん、私はゆいゆいの事が好き」
と言うとゆいゆいは喜んでくれる、私は本心と一緒に好きを語る、少しずつ後ろめたい気持ちを押し出して喜ばせよう。
「笑顔が好き、声が好き、顔も好きだし撫で肩でも筋肉あるから好き、大きくてたわわな胸も好き、あっ、胸に関してなんだけど……」
ゆいゆいのコンプレックスである巨乳と呼ばれる部位は更に褒める、昔は切り落とそうだなんてバイオレンスなことを考えていたから沢山褒めてあげないと。
私は大好きな胸を沢山褒めると赤面して悶えているのを確認した、まぁ私は全部好きだから身体に関して何時間も語れるから胸はあまり長く話せないんだけどね。 私はそれだけだと物足りないから好きな所全部言うことにした、そしたらゆいゆいは撃沈してしまい今まで一番可愛いと思えた。




