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幻影道 第五巻    作者: SAKI
63/72

「サマータイムメモリーズ・夏祭り編」その6

☆★☆★ ユカリ


 皆と離れた私達は早速二人で面白そうな屋台を発見しては競い合う。


「ふぇぇぇ…か、完敗だ…」


 輪投げに挑戦したらゆいゆいの完全勝利となった。全部入れられた景品はお菓子詰め合わせでシェアハウスの皆にあげようと喜んでいた。相変わらずの子供第一主義に私はこんな人がお母さんだったら幸せなのにと思ってしまった。


 お次は金魚すくい!屋台のおじさんに説明してくれるもゆいゆいはあんまり聞く耳を持たずに始めるから一瞬で網が破れてしまった。


「うふふ、ちゃんと話聞かないからだよ?」


 網は残り二つ、そしてまた一つ破らせると私は順調に金魚を掬うとゆいゆいからいちゃもんつけられた。


「ユカリちゃんズルしてない?」


 むっと子供のように不満がるゆいゆいに私は話を聞いたからある程度順調なだけと一蹴する。


「む〜〜!!」

  

 本当にお姉さんなのか疑わしいくらいにムキになってる気がする、これは勝ったなと慢心していると付近に子連れの親子が金魚すくいの屋台を通りかかる。


「お姉ちゃん下手っぴ〜」


 無邪気な子供に馬鹿にされるとゆいゆいは怒りはしないが悔しさの余りに涙目になってしまった。

 

 結局最後の網も破るとゆいゆいは泣き出してしまい勝負は中止して周囲から少し遠ざけることにした、色んな所で泣いてるのを見たけどこんなに大泣きするゆいゆいは初めてだ、ただの金魚すくいなのに。


「ユカリちゃんズルしたぁぁぁ〜!!」


 見に覚えのない罪を着せられた私は弁解の余地無くしてゆいゆいに怒られた、それなのに何でこんなに胸がざわつくんだろう?


 そんな疑問はさて置き泣き止んでくれたゆいゆいが狙ったのは射的だ。これなら負けないと奮闘するゆいゆいだったが何故か私の方が勝っていた。


 またズルだとかとやかく言われるのかと思い横をチラ見すると残り三発、コルク銃の持ち方が完全にあれだったので私は屋台のお姉さんから教わったこと囁きながら言うとゆいゆいはそれを無視した。


 これだとまた難癖付けられると思ったので仕方なく身体に触れて矯正するとゆいゆいの顔は赤面していた。


「ち、近くない!?」


 ゆいゆいの囁きに私はこうしないと変わらないよと返すと無言で頷いた。


「ひゃん!?はう………んん!」


「ちょ、変な声ださないでよ!?セクハラしてると思われちゃうよ!?」


「だ、だって……手付きが厭らしいだもん」


 じゃあどうすれば??腰を低くしようとしたら更に赤くなるし………腕を直そうとすると大きな胸が当たると頬が赤らむし女同士で何やってるんだろう…


「私とそういうことしたいならまたお家でやろう?まだ婚約も結んでないのに………」


「あぁんもう!煩いよ!!言う事聞いて早く撃つよ!!」


 ゆいゆいのもじもじとした態度に苛つき無理矢理姿勢を整えさせる、そうして放ったコルクは見事に商品に当ててみせた。


「わぁ〜凄い凄い当たった当たった!!えへへ♪」


 矯正するのに時間が掛かり文句を言おうとしたのに彼女の天使のような笑顔に胸が更に熱くなりどうでも良くなった。


「よ〜し!次はあの縫い包みだ!!」


 残りニ発なのにゆいゆいは一番上にあり、端にある大きなペンギンの縫い包みを目をつけた、私も最初見惚れて欲しくなったけどコルク銃だと無理があると思って小さい小物を当てたけどあれを狙うのは無謀のような気がする。私は勝ち星の為に全弾小物に当てて勝ったけどゆいゆいが熱中してて取り付く島も無かった。


 有言実行、ゆいゆいは一発を当ててみたが大きく揺らいだだけで落ちはしない。


「ユカリちゃん待っててね〜大好きなペンギンはお姉さんが勝ち取るから!!」


 だがゆいゆいの目的は最初から私だった多分あれを取ればもっと好きになると思っているんだろうな。そう考えているとゆいゆいは次の一撃に気を入れすぎたのかその隣にあるロボットの玩具に命中してしまった。


 もうおしまいとゆいゆいを宥めようとしたがなんとその当てたロボットが横に倒れて縫い包みを押し倒す形で下に落ちた。


 奇跡的に倒れた物に周囲から騒がれてしまった。

ゆいゆいはお姉さんに縫い包みを渡されると忽ち私にそれは嬉しそうにプレゼンしてくれた。


「やったよユカリちゃん!!お姉さんの愛が届いたのね!!」


 天真爛漫な笑顔は私にとって太陽よりも眩しく胸が更に締め付けられていく、張り裂けそうな胸の鼓動に私は息苦しくも思えてきた。


 ただ今は周囲の熱に晒されるのが恥ずかしいから足早にゆいゆいを引き連れて逃げるように遠ざけることにした。

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