「夏の終わりと新たな挑戦」その1
☆★☆★ ユカリ
初めて私はゆいゆいが圧倒的な戦力差に負けてしまったのを目撃した、あの人はゆいゆいの知り合いだと思うけどあんな暑そうな格好の中で楽しそうにゆいゆいを殴った。あれは恐らくゆいゆいを殴るのが目的だったんだと思う、たった一撃で顔面陥没させたあの人は一体何者なんだろう?
ゆいゆいを担ぎ家に戻り、ボロボロの身体を包帯で応急処置をしたけど顔が酷く歪んでゆいゆいの魔法じゃないと治せないと思う。
私はゆいゆいの安否が不安でその夜は中々寝付けなかった。あの最強と言われるゆいゆいがあんなあっさり負けちゃうなんて多分ゆいゆいが負傷してからに違いない、そう思わないと私の中のゆいゆいが小さい存在になってしまうと思ったから。
☆★☆★ 二日後
「ゆいゆい、大丈夫?」
私の家で身体を休めると聞かなくて渋々泊めてるけど何故だかあの日以来ゆいゆいの機嫌が悪い、恐らく負けたからだと思うけどずっとむっとしている。
「まぁね、傷は大方治療出来たし殆ど治ってるけどその度にあいつの顔を思い出し腹立ってるの」
成程それで虫の居所が悪いと。
「そもそもゆいゆいはどうして怪我したの?」
その言葉にゆいゆいは下を向く、あまり言いたくないのかな。
「普段のゆいゆいなら全部避けてるのに戻ってみたらボロボロだったよね?」
ゆいゆいは何も言わない。
「それに前に研究員さんを倒して帰ってきた時も瀕死だったよね?ゆいゆいの能力だったらそれくらい―――― 」
「ごめんねユカリちゃん、今私に説教しないでくれる?」
私に言葉を塞ぐゆいゆいは普段から見せない鋭い目つきに私は何か触れてはいけないものに触れてしまった。
「ユカリちゃんの言いたいことは分かる、私だってあんなヘマしたからやられたのは認める。でもそれ以外に掘り起こされるのは嫌いかな」
苦笑はしているけど言葉の重みで分かる、ゆいゆいは怒っている。素人の毛が生えた程度の私にとやかく言われる筋合いは無いと言っているような気がした。
「でもゆいゆいは…」
「ユカリちゃん、少し黙ってくれない?」
ゆいゆいの冷たくて距離を置こうとする態度に私は苛立ってしまった。こんなの私の知ってるゆいゆいじゃない、私のお嫁さんは逃げや隠れもしない鬼畜で大人に対してクズでどうしょうもない人だけど
家族を重んじて子供為なら命すら投げ出す格好いい皆のお姉さんだ。
たった一回でへっぴり腰になって負けを認めない説教さえも嫌う人じゃない。どんなに服装がダサくて直されても仕事割間違えで私の給料最低賃金以下にして怒られても嫌な顔ひとつ見せずに謝って笑って誤魔化すのが私の知ってるゆいゆいなんだ。
私は苛立つゆいゆいに引くことせず言葉を交わした。
「ゆいゆいは自分勝手過ぎるよ……私達の事何も考えてくれなくて“自分”さえ傷つければいいって思ってさ」
「聞こえないの?」
「聞こえない、ゆいゆいだけ自分勝手に傷付いてまだ負けてないと思い込んで後先考えない人の話なんて聞かないよ」
と言った瞬間、ソファーで座っていたゆいゆいは私の胸倉を掴み怒号を響かせた。
「黙れって聴こえないの?」
でもそれば何故か辛そうで本気る怒りは到底及ばない。
「聴こえないよ、たった一回負けて説教されて逃げるお嫁さんの声なんか聞こえない」
私の哀れむ言葉にゆいゆいは激怒した、胸あるポケットナイフを取り出して私の頬を切った。
「なら切って分からせるね」
怒るゆいゆいに私は話し続けた、その度に頬を切りいつの間にか切り傷だらけになった。
「・・・・お願い聞いてよ、私は今一人になりたいの」
でもそれは全く痛くない、震える手で切られても私は痛くない。これなら普段のゆいゆいのお叱りの方がよっぽど痛い。
「なら認めてよ、自分は負けたって」
私の言葉にそれでも頷かない、ゆいゆいのプライドが許さなかった。
「ゆいゆい、それならこれを見ても認めないの?」
私は不甲斐ないお嫁さんを前にとある物を見せることにした。それはとある特撮ヒーローの主人公が敵に負けたとされる特撮ヒーローが大好きなゆいゆいが唯一見なかったDVDの話だった。




