「覚悟の恋路」その1
☆★☆★ ユイ
ユカリちゃんからの言葉、私は戸惑っていた。やりたいことは沢山ある。でもそれはユカリちゃんに強制させることが多いモノ、それを無理強いさせることは私にはその資格は無い。彼女が私を思う気持ちはひしひしと伝わる、恐らくは私の為にやりたいことを全部やろうと言ってくるに違いない、でもそれは間違いだ。
「えっと、今はその………別に」
そう答えるとユカリちゃんは全く納得してくれない、それどころか呆れている。私、本当はヘタレなのかもね。
「ゆいゆいのやりたいこと、したいことだよ?無い訳ないよね?」
距離を縮められ、しまいには壁に追いやられ、私のパレオを脱がされその布で腕を拘束されてしまった。
「ゆいゆい、正直に素直に、本当の本気で答えて」
いつにもなく真剣な表情に気圧される、私らしくない立場に焦りと同時に迷いが生じる。ここで私が女としての意地を見せればユカリちゃんを正式にお嫁さんに出来る、でも私はお姉さんとしてのユカリちゃんに接したい。両方は欲張りだしユカリちゃんのことを考えると悩んでしまう、心の断捨離が出来ない私にユカリちゃんの眼差しが辛い。
私は悩みに悩んでいると何処からか聴き慣れた声が聴こえた。
「ユイ、逃げちゃ駄目!」
その言葉に私はとある一年前の記憶が蘇った。
「ごめんなさい」
私は大好きな人に告白し、想いを伝えた。愛情に溢れ、私は上手くいくと思っていた。だがそれは目の前で玉砕した。
「私はユイとは付き合えない、ううん。その資格が無い」
「どうして!?私は貴女がどんな人であっても嫌いにならない!妹の世話も私が頑張るし家事でも何でもするから!」
私は必死だった、その時の私は気づけなかった。彼女がどうして付き合ってくれなかった理由を。
「私なんかよりいい男とか女の子居ると思うし、それにユイは・・・」
そう言って彼女は俯いた、元々彼女は私に対して恋は抱いていない、親友の関係を壊したくない、私にはもっと素敵な人がいると何度も断られた。それなのに私は追いすがってでも付き合おうとした、それが私だ。
誰かの為に生を尽くすそれだけならばまだいい、だが私の心には本当の“愛”は存在しなかった。初めて出逢い、尊敬し、好きになった。最初は仕方なくやっていた家事も何を勘違いしたのか私は“私がいないと何も出来ない人”と思い込んでいた。
彼女はそれを強く否定し、きっぱり断られた、振られてしまった。私はそれが許せなくて怒り、泣き、逃げ去ってしまった。
その後かな、ハルカがいつの間にか呪血に飲まれて住民を全員殺し、最後に私が殺してしまった出来事は、あの頃の私はまだ諦めきれずまた告白しようとした、情けない女。精神面で参っていたのがあの出来事がきっかけで更に悪化して今でも精神病になっている。
愚か者の私は行いを恥じらい、痴れ者として私はもう二度と告白なんかしないと誓った。
傷つけたくないその一心で生きていたのに、その心を揺らがせたのがユカリちゃんだった。
また失敗すると思っても私は猛烈にアタックして玉砕する日々を送っていた、それほどユカリちゃんが好きで好きでたまらないんだ。それに何故だが振られてるのに心が辛くない、寧ろ好きになってもらおうと努力している、この差は一体??
「ユカリちゃんわ、私ね、私………その…………」
頑張れユイ!後少しでユイが“本気で”愛した人が手に入るよ!!逃げるな、臆するな、へっぴり腰になるな!好きなら意地でも伝えろ!!大好きだって!!
背中から誰かの声に押されるがまま私は正真正銘の本気でユカリちゃんのことが大好きだと伝えるつもりだった。
「ユカリちゃんだいしゅ――――― ッッ〜!!!!??」
一番最悪にも舌を噛んでしまった。ああ終わったと泣き叫ぶ準備をしていると思わぬ返答が帰ってきた。
「私も大好きだよ♪」
ユカリちゃんはとても快く真っ直ぐな瞳で私に言葉を返してきた。情けない私、締まらない私、ヘタレな私よ、相手がユカリちゃんで良かったね。
拘束を解き、私はもう一度告白するとユカリちゃんはもう一度返してくれた、私は飛び上がりそうな気持ちと出血する舌の痛みに耐えながら喜ぶと一番の問題を作ってしまった。
今の状態でキス出来ないよね?
口の中がとんでもない状況でキスだなんて失礼だ、更に言うならムードが足りない、それに岩陰から出ると冷やかしが待ってるに違いない。私は告白したもののそれ以外何もできないことに気付く。
「えへへ、キスはまた今度にしようか♪今はゆいゆいとの時間を過ごそ♪」
私の感情を汲み取ってくれたユカリちゃんはその後の出来事は【夏祭り】にでもしようと誘ってくれた。私は勿論オッケーを出して少しの間二人だけのお楽しみを楽しんだ、ユカリちゃん、ハルカ、ありがとう、これからもずっと大好きだよ。ハルカ、ごめんなさい。ユカリちゃんは私が責任を持って幸せにするから天国で待っててね。




