「サマーキラキララブラブサンシャイン」その5
少し海から離れて岩陰の裏にゆいゆいの影が見えて私はすぐさま走り出した、汗を大量に流しながらその人の元へ向かうとゆいゆいは身体を畳んで蹲っていた。
「ゆいゆい!!」
身体少しクラクラする、それでも私はゆいゆいを抱きしめると顔を上げたゆいゆいは涙を溢しながら俯いてしまった。
「ごめんねゆいゆい」
私は心の中にある物を吐き出した、ゆいゆいがここ最近元気が無くて落ち込んでいたことを話し、元気付けようとしたが全部空回りして落ち込ませてしまったことを謝る。ゆいゆいの溢した涙に私は心臓を握り潰されているような痛みに耐えながらも必死になって謝る。
私は何も出来ない、私は大好きな人のことすら幸せに出来ない女だ。自己卑下に陥っても足りないぐらい自分が大嫌いだ、でもゆいゆいの事だけは幸せにしてあげたい、どんなに自分が傷ついても私は辛い思いをしたゆいゆいを“守る”って決めたんだ。
私はかっとなり、泣きたくなるけど泣けない。子供の頃からそうだ、喚いても泣くことはない。泣いたのはお姉ちゃんと離れ離れになった時だけ、それ以降一滴も流したことは無い。泣けないのが悔しい、泣きたいのに!!
悔しい思いを込めて謝り続けているといつの間にかゆいゆいの方から抱きしめられていた。
優しく後頭部を撫で、優しい母性に包まれ、また私は慰められていた。
「ごめんなさい、私………ユカリちゃんの事になるとすぐ感情が高まっちゃって、勝つ気だったのに、それが見事に逆手に取られて挙げ句泣くなんてそれどころか大好きな妹兼嫁に迎えるられて慰められるなんてね」
「ううん!私―――― 」
言葉を振り絞ろうとしてもゆいゆいから口を止められる、優しく抱えられた私は何も言えず優しい言葉で励まされてしまった。
「もう大丈夫だから♪お姉さんの心の弱さが招いたきっかけでだもん、勝ちは勝ちだね」
そう言ってゆいゆいは皆の、所に戻ろうとしたのを腕を引っ張る壁に押し付けた。
「ゆ、ユカリちゃん!?」
訳が分からず困惑するゆいゆいに私は言葉を発する。
「今は二人がいい、ゆいゆいのしたかったことやろ?」
その言葉にゆいゆいは頬を真っ赤に染めた、私が手を伸ばすと赤面したゆいゆいの手は優しく繋ぎ二人の時間を作ることにした。勿論皆には内緖でね♪
☆★☆★
手を握る私達は浜辺で軽く散歩する、特に話すことなくただただ徐ろに歩く。少し歩いた所でゆいゆいの口が開いた。
「私、クローンなの」
驚くべきカミングアウトに私は言葉を失った。そこからはゆいゆいとローグ君だけが勘付いていたあの洞窟の内部についての結果報告だった。だがそこには沢山のゆいゆいのクローンが存在し、計画書ではゆいゆいの本名は【ユイ・オリジン】というクローンの中でも特異個体らしい。最初は納得出来なかったがこれまでの戦いや覚えている魔法が全て物語っていた。
そして一番重要な単語が私の脳に焼き付いた。
“クローンは極めて短命であり三十路までは身体が保たない”という結果だ。そしてゆいゆいの年齢は確か今年で二十二歳、後少しで帰らぬ人となってしまうのだ。子供が大好きなゆいゆいが知りたくなかった情報の真実を目の当たりにしたゆいゆいは脳が収拾付かずにここ最近暗くなっていたのが原因らしい。
ゆいゆいは私にだけは本音で話してくれた、大好きな子供が大人になるまで生きられない、お店を楽しく続けることが出来るのか、もっと長生きして店を継ぐ人をこの目で見たいと期待、夢、目標、描いていた世界が全て狂ってしまった彼女は私の胸を借りて号泣する。私は胸が張り裂けそうになるのを押さえて私は息苦しい中漸く口を開けられた。
「ありがとう、話してくれて。ごめんね、傍にいるのに気付けなくて」
「ううん、いいの。みっともない姉でごめんなさい」
弱々しく下げる頭に私は頬に唇を押し当てた。
「ゆ、ユカリちゃん!?」
毎度毎度困ってる時にキスされるからお返し、ゆいゆいは案の定困惑しあわあわと目をグルグルする。
「ねぇ、ゆいゆい」
「な、なに!?」
脳の処理が終わらないまま私は一番思ってることを吐き出した。
「ゆいゆいの“したい”ことって何かな?」
今にも噴火しそうなゆいゆいに追い打ちをかえるように涙を拭っていた腕を掴んだ。私は決めた、時間が限られているのならばその命が尽きる前にゆいゆいのやりたいことを実現しようと、だからこれから話すことは私の人生にも関わる話だから。
ゆいゆいのやりたいことは大体想像がつく、私はそれを知ってて覚悟を決めるんだ。
・・・大好きな人の為に。




