エクストラ 「Knights of shadow」その2
俺は読み終わった資料をくすねて探索しようとしたその時、背後からは足音が鳴る。それまでに音は一切聴こえていない静かな場所だと鼻息すら感じ取れるぐらいに敏感に見渡しても尚その足音がすぐ近くにいるのは分からなかった。
足音を立てずに息を殺して背後に立つのは知ってる範囲だと一人しか知らない、攻撃をしてこないと言うことは一人に絞られるか、厄介だ。
「なぁーんだローグちゃんか〜!!暗いから見えなかった♪」
嘘も方便とは言うがわざとらしいな。
「アンタ魔石光源付けてるだろ」
「胸元にしか明りないの〜暗いの嫌いだから誰かが侵入してきたから危うく殺しちゃう所だったよ♪」
そう言って姉さんはにっこり笑う、こいついつから監視してたんだ?どうせ言わないだろうがここまで来ると恐怖だな。
「はぁ、んで、アンタは何しに?」
俺は目的を聞くと姉さんも同じ理由だった。
「まさかローグちゃんが来るなんて思わなくて〜一緒に探索する?」
手を差し伸べる手を俺は払う、俺は仲良し小好しで仕事する柄じゃない。
「するなら一人でしろ、俺は他を当たる」
「えぇ〜冷たいな〜お姉さん悲しい」
好きなだけ悲しんでくれとその場を去ろうとしたがそうは行かない、すれ違う時一言囁かれた。
「面白そうなの無かった?」
言葉に重みを感じる、振り返ることはしないが奴は俺の資料に気付いている、話してもいいが姉さんに変な癇癪を起こされても困るので口を閉ざした。
「特にないな」
そう去ると姉さんはにっこり笑った。
「嘘が下手だね♪」
やはり姉さんには嘘は通じない、だがそれすらも無視して俺は単独行動を再開した。
「うふふ、優しいね♪お姉さんの事をそんなに想ってるなんてさ」
暗闇の中、背後から感じる氷のような冷たさと狂気の笑顔に心底嫌になる。こいつ知ってて逃したな。
☆★☆★ ユイ
正直知ってて後悔している笑私がいる、私がクローンのオリジンだと知りたくなかった。心の底で私はクローンじゃないと本気で信じていた、だが真実を知れば膝から抉れ泣いてしまうかもしれない。だから敢えてローグちゃんの背後に回って盗み見していた。結局私はクローンだった、研究員の玩具で改造された化物。本当ならユカリちゃん達と共に行動しるなんて烏滸がましいと感じるがもしユカリちゃんもクローンか誰かの子どもなら……私が死ぬまで傍に居てあげたい。
寿命は短いけど私は本体よりも感情的で本体よりも優れていて、皆に尊敬されているとマウントを取らないと頭が可笑しくなってしまう。
ハルカはこんな化物と一緒に居たんだと後悔していている、私なんか居なければ良かった、死ねば良かったと負の連鎖が入り混じって皆の前から消えたい、家族から暴言、罵倒、批判されて居場所を失くして野垂れ死にたいと思った。
そんなネガティブな思考もハルカの言葉を思い出すと全て吹き飛ぶ。
例えユイが“化物”だろうが“変異体”だろうが私はユイを一人の人間として好き、だって化物がこんなに優しくしてくれる筈無い、笑ってて可愛くて私の為に命を張ってくれる変異体なんか存在しない、そんな人を私は化物でも尊敬するし特別扱いなんかしない。
私を変えてくれた“運命の人”だと言うことには変わりないのだから。
今でも心に刻まれた彼女の死に際の笑顔、殺されてもハルカは私のせいにしなかった、彼奴等が悪い、ユイは道具にされたと激怒する程だった。
だから私は自分が何者であるかなんてどうでもいい、家族が私を必要としてくれる、家族が私を特別扱いをしない、でも怖くて言えない。この件は私の胸に押し殺して今を楽しく生きよう。
いつかバレてもきっと家族なら私をユイとして見てくれるから。




