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勇者の死霊術  作者: 山本さん
第一部
26/212

第12.5話 ポート・トトリの戦いを終えて

 

 ポート、そして、トトリ……この2つの町で行われた戦闘は僅か、夜が明けるまでの数時間……嵐の如く巻き起こり、一夜にして終結した。


 大規模な戦闘ではあったが、ポートもトトリも驚くほど、人的被害の“数”は想定以下に抑えられていた。戦闘員がほとんどいなかったトトリでも、グランバニク侯爵ら、そして勇者の奮闘によって被害数は少なく済んだという。


 マルベリー男爵を筆頭に司法所から反対されていたトトリとの交易や移民政策は、筆頭の“行方不明”により正式決定が下された。


 その決定から数日後、トトリへ向かったトトリの膨大な備蓄食糧の一部がポートへと搬入され、飢えに苦しんでいた下民街の町民にまで食糧が行き渡るようになった。(仕事の報酬ではあるが)

 町の復興含め、人口に相当するほどの仕事もある。しばらくはこのまま、2つの町の復興と武装化を進めていくことが出来ることだろう。


 だが、家屋やインフラの多くは破壊され、トトリとの交易の最短距離であった道は巨大な大穴によって分断されていた。古い山道を馬車が通れる様に切り拓くには年単位の時間がかかるし、大穴に橋を渡すにしても荷馬車を通せるようにするのはかなり難しい状況だ。

 しばらくは人を使って地道に山道を往来する他にないが、その山中は継続的に魔物の襲撃に晒される可能性が高く、運送者の警備や道の整備など、安全の保証に向けた対応が急務とされた。

 それに加えて、多くの下級~中級の魔物の死体が町中に溢れかえり、魔物の大元、魔力の根源である“魔”が魔物の死体から大量発生し、魔中毒警報が鳴り止まないという二次被害まで起きている。

 単独であれば自然消退するものの、今回は数が多い。魔物の新たな発生を抑えつつ、魔物の死体を焼いて崩していくしかないが……魔の処理は特殊技術も必要な危険な作業になる。町の景観と安全を取り戻すには……長い道のりがあるようだ。


 そして……町議会では今回の戦いにおけるバーブラの狙い、その分析結果が提示された。

 バーブラ本人はこの戦いについて、勇者の予知夢の精度試験であると言っていたが、解析結果として挙がってきたのは、地理的なトトリとの交易遮断と、“ヘッドハンティング”だった。


 というのも、末端の兵士たちよりも現場指揮官を務めていた隊長クラスの人々、有力議員、王国貴族などが、兵士たちに目もくれずない魔物に誘拐されたり、戦闘中にいつの間にか行方不明になったりしていた……という事が生存者調査で判明したからだ。しかも、その八割近くが“勇者のいない間”にいなくなっている。


 急襲せず、私たちに戦闘準備を整える時間を与えれば、私たちは当然のように才能や地位を持つ者に指揮・監督を任せるから。

 きっと、私を連れて行こうとしていたホロンスの様に、あらかじめターゲットを定めておいた者を個別に連れ去った……“部下”にする為に。


 戦闘までの一ヶ月の猶予は、バーブラにとって私たちを品定めするための時間だったのだ……。


 解析結果として、そう指摘されたとき

 議会はただ黙りこくり……会議室には戦慄せんりつが走った。


 指導者なきこの時代、奴の軍門に下ろうとしたマルベリー男爵の考えを……私はちゃんと聴くべきだったのかもしれない。



2022/06/20改稿しました

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