⑪
「いよーし! 今度はエルフのお膝元へレッツゴー!」
「能天気な人ですね、そのままの姿ではナラ・ハの森には入れませんよ」
エルフの領域───ナラ・ハの森へ向かう道中、テスラはそう言ってスキップするラタを止めた。
「ガサツな地底国と違い、ナラ・ハの森はエルフ以外を拒絶します。
人間は当然中に入れませんし、ハーフエルフの私もそうです。加えて、私は顔が知られている」
「えーっ! そいじゃあどうすんだ? ヤドゥフ一人で行かせるのか?」
「私たちは化ける必要があります」
「ば、化ける???」
戸惑うラタの目の前で、テスラはとある魔術を唱えた。
すると、一瞬視界が歪んだ後、テスラの顔が歪み、耳の長い別人の容姿に変わった。
「これは幻惑術です。
全身ではなく、部位的に変化させるだけなので持続力があり、腕利きの魔術師でない限り気付かれないでしょう」
「へー」
「あなたの耳も長くしますね」
「おうおう」
ボフン、テスラの幻惑術により耳長になったラタ。その容姿を水溜まりの反射で確認し、ラタは感嘆する。
「これで俺もエルフの仲間入りだな!」
だが、当然、長い耳に触れようとした手は空を掻いた。バレないようにするには、身振り手振りも気を付けないといけないようだ。
ナラ・ハの森───七色に輝く鉱石の如き樹木、結晶樹が広がる竜の島最大の森林地帯であり、多くのブルーエルフたちの故郷。
森の中心には、山の如くそびえ立つ世界樹が寄生される結晶樹によって七色に輝き、その内側をくり抜くように作り出された宮殿レンス・タリーパがある。そこから北東にはエルフ界最上位の魔術学校バスティオン魔術学校がある。
「ウェーヘルが死んだ……!?」
「どうやら、魔王の仕業らしい」
そんなエルフの領域、南端の集落に入って早々、ウェーヘル死亡の情報がラタたちの目にまざまざと映った。森中が国葬(黒)一色に染められていたからだ。
「やはり何者かが魔王を操っているな……」
地竜山脈の奥深くに転移させたにもかかわらず、ラタたちよりも先回りしてウェーヘルに接触するなど、いくら何でも移動速度が速すぎる。誰かが魔王を“召喚した”と考える方が自然だった。
「これで三か国の首脳陣が魔王によって暗殺されたことになりますね」
オーバル大神教主、ガロウ皇帝、ウェーヘル族長。互いが互いの血の応酬の為、千年戦争を存続させていた重要人物たちが死んだ。
「神国の後釜にはユニバーシュ大神官、地底国はゲルニカ、此処、ナラ・ハはファウストが担当するそうだな」
情報屋の出す新聞を買い、戦争情勢を確認したところ早速
「ゲルニカが魔王を討伐の為に休戦を打診?
こりゃたまげた! アイツ約束を守る男だったのか!」
地底国の新たな皇帝となったゲルニカが二か国に向けて休戦を打診したと、新聞が報じていたのだ。
「ユニバーシュという人物がこれにどう応じるかだな……もし、あの人間共がゲルニカの一時休戦に応じたのなら、千年戦争の終結も夢じゃないかもしれん」
「ふむ……」
情報屋の言葉に、ヤドゥフは顎に手を当て唸った。
「強大な悪の存在によって寧ろ人類の一致団結が促されているとでもいうのか?」
「まさか」
それが偶然なのか、それとも必然なのか———もし恣意的なものだとしたら、魔王という存在は———。
「“悪役”、なのか……」
テスラはヤドゥフの言いたいことを理解しているようだったが
「ん? 何かを演じるのか?」
一方のラタはとぼけた顔をしていた。
「……俺たちが思う以上に、魔王は一筋縄でいかない存在かもしれないということだよ」
「倒すだけじゃダメってことか?」
噛み砕いてみても疑問符を浮かべたままのラタの顔を見て、だめだこりゃ、と、ヤドゥフはそれ以上の説明を諦めた。
ファウストに魔王の事を尋ねるべくナラ・ハを訪れたラタたちだったが、ウェーヘル死亡によりファウストはナラ・ハの森の長となってしまった。ウェーヘルの国葬に続き、国の引き継ぎなどで近寄れる隙がなかなかなく、ラタたちはナラ・ハの森で立ち往生をくらう羽目になった。
「……ん?」
立ち往生二日目の夜、レンス・タリーパの近くにある安宿の二階の窓からぼんやりと結晶樹の森を眺めていたラタの目に、コソコソと腰を低くして世界樹の太い根の影に隠れる人物が映った。
その人物は小柄の割に大きすぎるフード付きコートを着ていて、表情は影に被って窺えないが、靴の片一方の先端は壊れており、泥のついた白い足先が見えている。
そんな人物が物陰で待ち受ける前を、金目のものを身に着けている、顔を酔いで赤らめた小デブな男性エルフが護衛一人を連れて横切っていく。すると、小柄な人物がそれとなく物陰から現れ、男性エルフとすれ違い———直後、走り出した。逃げる小柄な人物の手には光る魔石のブローチが握られていた。
「!」
数瞬後、男性エルフは盗まれたことに気付いたのか「貴様よくもッ!」青ざめた顔になって振り返り、声を荒らげた。彼の護衛が慌てて小柄な人物に向かって魔術を放つが、小柄な人物はひょいひょいと身軽な動きで躱していく。
「盗みはいけないぞ!」
「わっ!?」
だが、逃亡先に先回りしていたラタによって、小柄な人物はあえなく捕まった。
「放せよぅ!」
小柄な人物はラタの腕の中でバタバタと抵抗するが、ラタの力は強く、彼の鍛え抜かれた腹を弱くポスポスと蹴るばかり。そんなうちに、はらり、と、フードが外れ、青の短い髪と幼い顔、短い耳が露わになった。ハーフエルフの女子だった。
「ハーフエルフだと?!
警備は一体何をしているんだ全く!」
のっそのっそと追いついてきたエルフの男性は、拘束されているハーフエルフの女子から「ああ!」魔石のブローチを取り返すと、何度もブローチについた垢を拭い取り、安堵の溜息をついた。
「助かった、旅の方。
このブローチは亡きウェーヘル様から授かった勲章でね、ありふれた魔石ではあるが、私にとっては大事なものなのだ」
「そうか、そいつはよかったよ」
「さて……このガキをどう殺してくれようか」
「殺す!?」
素っ頓狂な声を上げて目を丸めるラタに、エルフの男性は何かおかしいことでも言ったかね?と尋ねるように首を傾げた。
「ハーフエルフは穢れの象徴だ。見つけ次第殺すのは、ここでは常識なのだよ」
「だけどまだ子供じゃねぇか!」
「それは問題ではない。忌まわしい人間の血が混じっていることの方が重大なのだ」
エルフの男性の護衛がラタからハーフエルフの女子を受け取ろうとして、ラタは咄嗟に「あ!」女子を後ろに放り投げた。
「逃げろ!」
「!」
ハーフエルフの女子は一瞬躊躇してから逃げ出そうとしたが———バシュン! ラタたちの合間を高速で駆ける雷に左足を撃ち抜かれ、悲鳴を上げる間もなく倒れこんだ。
ハッと振り返ると
「テッちゃん!?」
「ラタ、少し黙ってて」
固く引き攣った表情をしたテスラがラタを押しやって現れ、エルフの男性の前に立ち、一礼した。
「連れが大変失礼いたしました、レヴェリー族長。
彼は北の外れで生まれた為、ここのしきたりを知らなかったのです。どうかご容赦を」
「うむ……彼には助けられたからな、知らなかったのなら致し方なかろう」
「ありがとうございます」
そしてテスラは、穴の開いた左足を抱えて蹲るハーフエルフの女子を指差して
「あの足ではもうろくに歩けません。そのお手を汚れた血で濡らすまでもなく、森の外に放置しておけば獣の生き餌にでもなりましょう。
もし宜しければ、私が転移魔術を唱えましょうか?」
レヴェリー族長が口を挟む余地を与えない程、淡々と早口に捲し立てた。
「そ、そうだな……死体の処理も面倒だしな」
「それでは」
泣きながらずるずると動かない足を引き摺るハーフエルフの女子の前にテスラが立ちはだかると
「呪ってやる! お前らみんな死んじゃえばいいんだ!」と、ハーフエルフの女子はテスラに向かって呪いを吐いた。
「地獄に生まれてきたお前が悪いのよ」
その呪いを吐き返し、テスラは転移魔術を唱え、ハーフエルフの女子を跡形もなく目の前から消し去った。
「ふぅ、すっかり酔いが冷めてしまったわ」
近くのベンチに腰掛けて一息つくレヴェリー族長に、テスラは丁重に話しかけた。
「レヴェリー族長、差し出がましいお願いが一つあるのですが、聞いていただけませんでしょうか?」
「何かね?」
「今度の族長会議の際、私たちをレンス・タリーパに招いては下さいませんでしょうか?
ファウスト様のお耳に魔王についての新しい情報をお伝えしたく」
「それは誠か!」
レヴェリー族長はテスラの提案に目の色を変えて飛びつき
「ファウスト様は、ウェーヘル様を目の前で殺されてしまった責任に圧し潰されそうになっておられる。魔王についての情報は直接お聴きになりたい筈だ」と、テスラの提案を呑んだ。
レヴェリー族長と族長会議での打ち合わせを終えた後、安宿に戻ってきたラタは不服そうな顔でテスラの無表情の訳を尋ねた。
「言いたいことは分かります。だけど、これが現実なのです。
ハーフエルフは存在自体が悪であり、見つけ次第殺すのが一般的です。それを匿ったり、庇ったりする者は同じ目に遭います」
「だからってよぅ……」
ハーフエルフの女子を逃がそうとしたことで、危うく殺される理由を作るところだった男の甘っちょろい優しさに、テスラは深く溜息を吐いた。
「……ちゃんと腱も骨も外しました。放っておいてもあれぐらい治ります。北の外れにあるセイレーンの農村に転移させたので、少なくとも害虫のように殺されたりはしない筈です」
「それでこそテッちゃん……!」
「なん、ですか、頭を、わちゃわちゃと、撫でないで……あーもうっ」
族長会議の日、レヴェリー族長の部下の誘導でナラ・ハの宮殿、レンス・タリーパに招かれたラタたちは、ナラ・ハに住まう全族長たちが一堂に集う、大会議室に通された。
「あらあら、“侵入者”ではありませんか」
だが、扉を開き、ラタたちが姿を見せた瞬間、放たれた黒の賢者ファウストの第一声で、彼らは兵士に囲まれることになってしまった。
「ば、ばれてる!? テッちゃん、これどうすんの!?」
「こうなることは織り込み済みです。元より賢者を騙せる術ではありませんから」
そう言って、テスラ自身とラタに掛けられた幻惑術を解呪すると
「に、人間だと!?」「テスラが戻ってきたぞ!」兵士たちや族長たちは仰天し、ラタたちを招き入れたレヴェリー族長の顔は青ざめ、その場に座り込んでしまった。
「お久しぶりね、テスラ・パタリウス。もしかして私の族長就任祝いでも持ってきてくれたのかしら?」
「魔王の事が聞きたいの」
会議室の奥、豪奢な椅子に座るファウストは妖艶に微笑んだ。
「ハーフエルフなんぞに言葉を吐かせるな!黙らせろ!」
「やめておきなさい、彼女に手を出すと火傷しますよ」
その言葉通り、兵士たちは全く隙を見せないテスラに手を出せないようでいた。
「なんでもどうぞ」
ファウストは愉し気に口角を上げたまま、テスラの問いに耳を傾けた。
「魔王は使役死霊なの?」
そんな馬鹿な!? 第一声は族長の一人からだった。
しかし
「魔王は使役死霊で間違いないわ」
ファウストはそう含みを持たせた笑みを浮かべ、会議室は騒然となった。
「使役死霊と考えなければ、魔王の行動に説明がつかないもの」
「構成は?」
「半死霊状態にして臨界点を超えさせたんでしょうね、死霊術にかなりの知識を持っている人物による犯行だわ」
「死霊術師に心当たりは?」
「ある訳ないじゃない。黒の賢者であるこの私を除いて、ね」
「仮にだけど」
「ええ」
「魔王は、人類にとっての敵“役”で
あれを人類が協力して止めることで、戦争の終結を図っている可能性は?」
ファウストの鋭く蒼い眼光がテスラに刺し向けられる。
「とても面白そうな発想ね。
ただ、残念だけど、世の中はそう簡単に動いたりしないのよ、“お嬢ちゃん”」
「ちっ」
不敬で盛大な舌打ちで話は強制終了となり、テスラたちはナラ・ハの森から速攻で追い出されることになった。
「あれは黒よ、絶対に黒だわ!」
ナラ・ハの外へ追い出されるまでの間、テスラはずっと憤慨していた。子供扱いされたのが気に食わないらしい。
「まあまあ答えを急ぐなよ、テスラ。
確かにファウストは候補の一人だが、決めつけるには証拠がまだない」
「あの確信的な笑みは間違いないわ! 私の勘がアイツだと言っている!」
「そう言えば、テッちゃんって何歳なんだ?」
「今それ関係あります?!」
「いや、なんとなく」
数瞬の間を置いて、テスラは嫌そうに呟いた。
「……15」
「はあ!?」
「そんな若かったのか!?」
「なんですかその反応は! なんですかその生温い目は!」
次に魔王が出現したのは、ナラ・ハの森だった。
今度は、骨の姿ではなく───山の如く巨大な竜の姿で出現した。
結晶樹の森を踏み潰し、多くのエルフたちを薙ぎ殺す魔王の下へ、ラタたちが駆けつけるよりも前に———。
一人の人間の男が、魔王に立ち向かった。
「我が名はハルバート・フォールガス!」
飛翔の風魔術を使って自在に宙を舞いながら、魔王の攻撃を躱し、手にした斧鎗と共に風魔術を駆使する。
ハルバートの苛烈な攻撃が魔王をよろめかせた隙、その眉間に召喚した数十本の鎗を突き立てると、魔王は悲鳴にも似た音を出した。
「召喚武具の威力が高い……血質がいいのね」
「身なりからして何処かの貴族か? いや、だが人間の貴族は皆、神国の生まれの筈だが」
神国生まれの者たちの多くは、その土地柄による影響か、魔術が使い難い“黒い波長”になる。その為、空を自在に浮遊したり、武具の召喚魔術を唱えたり出来ない筈だった。
テスラとヤドゥフがようやく戦場に追いついたときには、魔王は再び霧状になって消えてしまった後だった。
「随分強い人間がいたものだな」
「……お前たちは何者だ」
テスラとヤドゥフが自らを名乗ると、ハルバートも素直に名乗った。
その顔をまじまじと見て、テスラはぼそりとヤドゥフに耳打ちする。
(ねぇ、ヤドゥフ……どことなくラタに顔似てない?)
(そうか? 人間なんてみんな同じ顔に見えるが)
(あなた、魔術以外にはてんで興味ないのね)
「もういいかね」
「生まれは何処なのですか?」
そう尋ねたが、ハルバートは何も答えないまま、すーっと地上(ナラ・ハの森)へと降りて行った。
「人間がナラ・ハの森に降りて行って大丈夫なのか?」というヤドゥフの懸念も空しく、沸き立つエルフたちの歓声に掻き消された。
「…………。」
テスラは複雑な面持ちでその様を見下ろした。自分の時は畏怖の目に晒されたというのに、何故あの男の時は反応が違うのだろう、と。
「私が混血だから……?」
「そう気に病むな、テスラ。
地竜平原の戦場から魔王を退けたお前の功績があってこそ、あの男も勇気を出して魔王に挑んだのかもしれないじゃないか」
「どうだか」
「拗ねるなよ、可愛いな」
「拗ねていません」
ハルバートが魔王を退けた知らせは、瞬く間に世界に轟いた。
中でも、ゲルニカによる一時休戦の打診がなされている最中に、人間であるハルバートがエルフたちを助けたという形のウケが、狙いすましたかのように良かった。最も首を縦に振らないだろうナラ・ハの森の族長たちに恩を売ったことも後押しになり、千年戦争の一時休戦という夢物語は急激に現実味を帯び始めていた。
「地竜平原に初めて現れたときは予行演習で、各国の長を殺害した後、ナラ・ハの森で本番」
「全て仕組まれている、自作自演の可能性さえあるんじゃないかしら」
「確かに、こうも上手く行ってくると怪しさ満点だな」
「最も怪しくなってくるのは、この“勇者ハルバート”……」
「ファウストも怪しいが……一体どっちが本命なのやら」
神国領であるシェールの安宿に泊まり、ヤドゥフとテスラは討議を重ねていた。
その一方で、ラタは一人、魔術の鍛錬に勤しんでいた。
「我に翼を———」
飛翔の風魔術。竜の姿をとる魔王には必須と言っても過言ではない魔術だ。
だが、教科書通りに詠唱してみるが、ズドン、と、ラタは顔から地面に落ちてしまう。
「いてててて……うーん、なんでか上手くいかないなぁ」
「魔力の練り上げが甘いのだ」
「?」
そのとき、何者かの声がして、その方に顔を向けると
ラタの顔つきと似た男が立っていた。
「内に巡る魔力を声にして放つ前に魔術の組成を意識し、組み立てるのだ。
人間はエルフと違って魔術の詠唱の際にそれが無意識に出来ない。慣れるまで意識的にやるしかない」
「お、おう」
ラタは言われた通りに頭の中にある魔術の組成を組み立ててから「我に翼を———」詠唱し、跳んでみた。
すると、いつまで経っても地面に着地せず、足が宙を掻いたではないか。
「出来た!出来た出来たッ!」
その喜びの声に家の中にいた二人も外に出てきて「「!!」」ラタの飛翔よりも彼の横にいる男に驚愕した。
「教えてくれてサンキュー!
これで二人に置いてけぼりにされることもなくなるぜ!」
「そうか」
「何しに来たの、ハルバート!」
今まさに魔王の死霊術師ではないかと疑っている本人が突然現れたことにどよめき、テスラは声を荒らげた。
そんな彼女に対し、ハルバートは淡々と言い放った。
「魔王を倒すのは、他の誰でもない、私だ」
「……それがあなたの筋書きって訳?」
ハルバートはそれを否定せず
「キキ島を知っているか?」と、口を開いた。
「キキ島? 神国の南にある、白塔がある島のことか?」
「雲を貫き、黄金の竜が住まう塔の下で、住まうことが出来る民は50人だけだった」
「何が言いたいの?」
「51人目が生まれたとき、一人の人間が、新たな命を祝福するために身を投げ出した。
それは、私の弟だった」
テスラはハッとラタとハルバートの顔を見比べた。
やはり見間違いなどではなく、彼らの顔は酷似していて、その理由をハルバートは理解している。
「? 何のことだ?」
だが、肝心のラタ本人はよくわからないといった顔をしていた。
「警告だ。これ以上魔王に関わるな、命を落とすことになるぞ」
そう言うと、ハルバートは歩き去っていった。




