天使さんの独り言
私よりも、もっと上の権限を持つ人から、ある人物の監視を頼まれました。
名前を聞いて、知っている人と同じだと思ったけど、見ていたら同じ人だと解った、
佐藤一先輩。中学の時の一つ上の同じ部活の先輩。
私は、こう見えても天才なので、高校と大学をスキップしてしまった。巨大なIT企業にスカウトされ、資格を得ながら、VRゲームの開発にも関わった。この新世界の基礎を、色々な人たちと協力して完成させたのは私の誇りでもある。
ただ、最近は行き詰っていて停滞気味だった。
先を行くプレイヤーが、流通を支配して、利益を独占している。
危険な攻略よりも、安全なイベント重視になっている。
新規の人たちへの、微妙は妨害が続出して、派閥に簡単に飲み込まれる人が多い。
色々と、問題が出てきたので、運営会議で一つの方針が決まった。
基本的な運営の方針で、内部への干渉は極力抑えると言うのがある。
それを今回は方針を変え、人材面で大幅導入すると言うことを決定した。
プロ、もしくはそれに順する腕を持つ人を複数勧誘して、ゲームに波風を立たせるという物だった。
全部で100人に声をかけ、集まったのは10人。それぞれが、担当を持ち、監視しながら導くと言う役目を授かった。
私の担当は、この人だった。
中学時代、先輩はそれほど強い選手ではなかった。今思えば、反射神経は良いと思うけど、体が出来ていなかった。
基本的に力負け、体力不足。
3年の時に、急に勝つ様になったのを覚えている。なぜかは、解らない。他の先輩と比べて、地味だけどなぜか勝っていると言う印象がある。
高校総体に出て、2回戦で負けたと、一度あった時に、話した事が記憶に残っている。
「悔しくないの?」
と思わず聞いてしまったが、先輩の返事は不思議だった。
「それ以前の問題かな。人殺しにならなくて良かったとは思うよ」
と、爽やかに言われたので記憶に残っていた。
そのあと、偶然その試合を見ることが出来た。気になったので、その状況をデータで再現して、もしもの可能性を続けてみた。
その結果は、誰にも言えない。
中学生と言えば、色々とはっちゃけるお年頃。
先輩の名前は佐藤一。剣道部男子に、新撰組ブームが起きたとき、他の子に言われていた事がある。
「いがあれば、斉藤一なのにな」
新撰組の有名人の1人、斉藤一。さとうはじめだと”い”が足りない。
それで、他の部員からからかわれていた。
負けていたときは、一文字足りないから、負けると言われ、勝ち始めると、一文字足りないのに勝つといわれていた。
そういわれた時の先輩の表情は、覚えていない。
そこまで、気になる人ではなかった。
実際、今回の計画で、私の担当になると決まった時、プロとしての実績を調べた。
シューティングゲームでは、かなりの好成績を残している、ただ、VRでのシューティングは、微妙に字流行ではない。銃で撃ち合うやつは、大流行しているけど、メカを操縦するタイプのゲームは、いまひとつなのが現状だった。
それでも、賞金ランキングの中盤にいるのは凄いと思う、海外の一部の国で行われた、賞金金額の高いゲームで優勝したのは大きい。
ただ体を動かすタイプの新世界で、どれだけ出来るかは、未知数だった。
なので、試練で動きを確認したけど、粉の先輩は一度は断った。
話を聞いて、納得したけど、こちらに都合はある、幸い、この計画での権限は大きく、特殊なイベントを発生させる事は出来る。
「ゲームだと、簡単に出来るんだ・・・」
その先輩が、ゴブリンに見せた突き。それを見て、私は色々と思い出した。
あの日、再現したIFの出来事。先輩の突きは相手選手の防具を弾き飛ばして、深刻なダメージを与えたと言う結果。正直、死亡という可能性も捨てきれないデータが出ていた。
「シュガーさんか、一文字足りない佐藤君でいいのかな?」
本来なら、こちらの素性は秘密にしなければならない。
だけど、戻ってきた先輩を前にして、思わず聞いてしまったのだった。
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