精霊の生贄 その3
「ちょっと、やりすぎです、そこまで、私望んでない!」
大慌てで、よるが叫んでいる。
玩具の脇差は、見事にお腹に突き刺さっている。
「かいしゃくは?」
さりげなく、地面に突き刺した刀を拾い、ほむらが背後に立っている。
「かいしゃくじゃなくて、かいふく、回復だよ」
「だって、あんな撫で方、私はしてもらってない」
「私だって、だっこされたことないもん」
激痛で、体が動かない。その両脇で、ほむらとよるが、言い合っている。
「あはははは、ここまでするとは予想外であった」
突如、精霊王が笑い出す。
「見事だ、旅人よ」
次の瞬間、痛みが消える。
手にしていた、脇差は壊れて消えた。
「「大丈夫?」」
2人が、同時に聞いてくる。その体が、薄っすらと光っている。
「この世界の精霊は、3つの欠片で構成されておる。お主は、それを手に入れる資格のあるものじゃ」
よると、ほむらが、光の塊となる。
「お主の、武器をささげよ。精霊は武器に宿る」
ここまで使っていた、無名を掲げる。俺は、刀を武器として選んでいる。精霊が宿るなら、これしかない。
「お主は、炎と夜から、何を想う?」
「想う?」
「想像しろ。二つの属性から、産まれる可能性を!」
どうやら精霊は、2つの属性から新しく生まれる存在らしい。
選ばれるのは、完全にランダム。火と火という組み合わせもある。この場合は単純に炎になりそうだ。
後で知ったけど、組み合わせはそれほど多くない。それでも、産まれた精霊は豊富で個性的だった。
同じ組み合わせでも、イメージで変わる。
俺の場合は、炎と夜の組み合わせ。火の玉や鬼火が浮かび上がった。
闇の中にゆれる炎。
イメージしても、何となく違うと想う。
あの2人のイメージではない。炎は、もっと強く輝き、夜はもっと暗い。
君は僕の太陽だと、言いたい気分にもなるけど、それも違う。
ここは、自分の直感に従おう。
夜と、炎で太陽。イメージとしては、これに近い。でも、何か違う。
俺の中の太陽は、何となく身近すぎて当たり前の存在。そう考えたら、近いと言う気分が消えた。
太陽ではない。では、何か?
星かな?
遠くにあって輝き、愛しき存在。
そう考えると、納得できた。そして、自分にこんな洒落た感情があったと思うと少し恥ずかしくなる。
「星です」
「ならば、それを強く思い浮かべよ」
頭の中に、星をイメージする。
イメージといっても、天体観測は趣味ではなく、何となく日常に見上げる程度。
強く印象に残っていると言えば、プラネタリウムで見た星空だ。
見上げれば満天の星。
フルダイブ型のプラネタリウムで見た景色は、宇宙空間のある場所で撮影された映像と聞く。
いつか行ってみたい場所のひとつ。
地球からとは違う、宇宙の見え方だった。
その場面をイメージする。
「名を付けよ」
これが一番難しい。そこまで、星に詳しいわけではない。イメージとして浮かべただけ。
星の名前から名付けたいと思ったが、それは断念。
ここで思い出す。称号関係で、昔のアニメを色々と見てみた。
その時見た作品の、終わりの歌で、星よ、星達よといたっていた歌があった。
凄く、いい歌だった。イメージされている女神は、正直好きになれなかった。
アテネ、アテナ、何となく、この辺の語感は使いたい。
「ティア」
これなら、いいと思った。
「よろしい」
精霊王がうなずく。
二つの光が一つになり、無名へと吸い込まれていく。
「む?」
吸い込まれた瞬間。別の光がそこに飛び込む。
「まぁ、これも良いか」
精霊王は、それを受け入れる。予想外の事が起きたのかと、俺は内心焦る。
「大丈夫ですか? 」
「お主に縁のある物が、願っただけの事。良いことだ」
そう言って、笑う。
「ここに、新たなる精霊が生まれた。この世界で、精霊が生きていくのに必要な物、二つの属性、宿る器。そして、信頼の置ける主」
真剣な表情で、精霊王が言う。
「そのために、旅人には試練を与えた。何時は見事その試練を乗り越えた。新しく生まれる精霊、ティアの主となり、その命を奉げよ!」
何か、物騒な言葉が聞こえた気がする。
「命を奉げよとは?」
「精霊は、この世界では弱い生き物だ。主がいて、初めて生活できる。難しい事は考えなくてもいい。簡単に言えば、面倒を見てあげてくれ。一緒に冒険をして、楽しんでくれればいい」
「冒険の途中に、命を落とす危険は?」
「契約された精霊は、主が死ぬまで死ぬ事は無い」
それは、嬉しい情報だ。そこで、気づく。
「この場合、生贄になったのは俺ですか?」
「その通り、一生懸命、面倒を見るのだぞ!」
光り輝き、中から少女が姿を出す。
「ちょっと、お父様これは何かの間違いでは?」
光が消えると、少女の影は、幼女になっていた。猫ミミと尻尾の生えた、よるとほのおの特徴を残した少女。
猫ミミを、指差し、後ろを向いて尻尾に驚く。
「新しき精霊、ティアよ、まずは主に挨拶を」
「そ、そうでした。ただいま!」
そう言って、その子は抱きついてくる。
「おかえり」
そう言って、受け止める。正直、色々と混乱しているけど、とても、嬉しかった。
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