みんなの希望 その2
「とりあえず、お茶をどうぞ」
「どぞ」
3人に、お茶を出すと、ほむらが真似をする。その様子を、3人はなんともいえない表情で見ている。
嬉しさと、悲しみの混ざったような複雑な表情。
「この子は、間違いなく荷物持ちなのか?」
「はい。先日、管理人から契約してきました」
「ここには、良く来るのか?」
「気がつくと、遊びに来ています」
「シュガーさんは、咎人ですか?」
那須さんも、会話に参加してくる。DPSさんは、無口なままだった。
「咎人です。レベル1の・・・。3人は?」
「俺たちは、全員咎人だよ。レベル3の・・・」
「そうでしたか」
「3回と言う制限を知っているのか?」
「はい」
「君は、何を知りたい?」
「今までの流れです。俺は最近新世界を始めました。初期のころの出来事等は、公式動画ぐらいしか見ていないので、解らないのです」
「知ってどうする?」
「今のままだと、何か見落としていると思うんです。それを、見つけたい」
「俺たちが情報屋をやっているのは、趣味が一番だけど、荷物持ちのイベントを何とかしたいと言う思いもある」
D-3の言葉に、他の二人もうなずく。
「シュガーさんは、正直俺たちの知らない事を知っていて、イベントを他の誰よりも進めている可能性がる」
「そうなのか?」
「荷物持ち・・・いや、精霊が迷宮の外にいると言う情報は無い」
「ここにいるよ?」
「それが不思議なんだ」
「精霊の名前の付いた家具、他の町で売っていないのですか?」
「そんな物が、売っていると言う情報すらない」
「おかしいですね、普通にこの町で売っていましたよ?」
「拠点用のアイテム、次の町から販売されていたはずだ」
「拠点が開放されたのは、次の町からですか?」
「そうだ。2の町攻略後に、拠点システムが開放。ただ、町が狭かったので、本格的に拠点を作ったのは第3の街になってからだ」
2人の話を簡単にまとめてみる。
第3の街で拠点作りが本格的になる。
迷宮と、塔が開放される。
荷物持ち事件が発生。多くの旅人が落ち込む。
強欲の商人の暗躍、
PK事件が発生。
PKによる、住人の殺害が発生。
PKのほとんどが、強欲の称号の持ち主を狙って大金を奪っていた事が判明。
賞品や資金を奪い合う、混沌の時代が発生。
竜の襲撃。
第3の街が消滅してしまう。
PKKが本格的に動き出す。
「ここまでの間に、迷宮に挑戦して、3回目の咎人になったプレイヤーがほとんどになってしまった」
「この時期は、みんな疑心暗鬼になっていて、情報の統一性が無く、お金のために、荷物持ちのイベントを失敗させて、強欲の称号を付けさせる事をしていた連中もいたんだ」
「そこまでして、資金が必要だったのですか?」
「オークションで、稀に住人から特殊な武器が出品されていたんだよ。それにつぎ込んだ人がほとんどだけど、竜の襲撃で全部失われてしまった」
「竜の素材を使ったアイテムで、その復讐の為に、竜の襲撃が起きたらしい」
「住人の被害も大きく、第3の街の復興義捐金などとして、かなりの資金が集められた」
「それでも、第3の街は無くなったまま。第4の街というか、王都”フラワーツリー”の防御強化に使われたらしい」
「この時期から、荷物持ちへの接触を減らすために、初心者を積極的に取り入れるギルドが増えた」
「出来るだけ、ソロを減らして、塔の攻略を優先する」
「最初の街に、拠点を作ったギルドは、監視が目的だった」
「俺たちも、新人の監視はしていたけど、新しい情報を探す事を失念していたよ」
「おそらく、最初の街に拠点を持っている人だけが、精霊のアイテムを買える可能性がある」
「禁則事項の事があるから、確認できないのがもどかしい」
「この禁則事項は、解除できないのか?」
「イベントを誰かがクリアすれば、ある程度解除される」
「竜の襲撃の時も、目的が竜素材の武器と判明するまで、禁則事項があって、苦労したんだよ」
「最前線で、活躍していた旅人が、実は犯人と言うか、原因の一端だったという」
「オークションで、落札するために、わざと精霊を生贄にして、Gを稼いだりしていたからな、許せない」
「PKKに、後で狩られて、改心したり、そのままだったりと、今でもこの辺の問題はある」
「生贄にされた精霊を思うと、あの対応は生ぬるい」
「プレイヤーは、殺しても死なないからな・・・」
「ゲームだから仕方ない」
「それは、ある程度理解していたつもりだったけど、ここまで入れ込むことになるとは、思わなかった」
「それは同感。リアルすぎるのも、問題ある」
「これ以上、精霊を死なせるわけには行かない」
それは、ほとんどのプレイヤーの想い。
「ほむらは、死なせないからな・・・」
あの悲劇を、繰り返すわけには行かない。
こっそりと、膝の上に座っていたほむらを撫でる。
「せいれいも、しなないよ?」
撫でられて、嬉しそうなほむらが言う。
「もとのせかいに、かえるだけ」
その言葉は、ある意味救いの言葉。
それを聞いた俺たちは、しばらく何も言えず、ただ涙した。
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