その日
「今日は、調子がいいな」
こくこく
よると2人、迷宮を進む。
大絶海で好成績を出せたので、少し浮かれていた。迷宮の敵も、問題なく倒せるし、よるとの連携も順調だった。
今までは。安全を確保してから先に進むと言う方針だったけど、腕輪のおかげで、ダメージが防げるのなら、一緒に進んで、回避に徹底してもらった。
上手く伝わらず、とにかく避ける事をして欲しいと、何度か説明して、何となく理解してもらえた。
精霊は、言葉が若干違うのか、上手く伝わらないことが時々ある。
「孤児院で、勉強はしてるのかな?」
???
これに関しては、不思議そうな顔でこちらを見るだけ。仕方ないので、頭を撫でる。
♪~~~♪~~~
物凄く、嬉しそうだ。
「今日は、次の部屋を見てから帰るぞ」
こくこく
やる気は充分。それでも、焦らず確実に。
「ここも、ゴーレムか・・・」
中には、人型のモンスター。俺よりも、若干大きい魔物だ。その数は5匹。
「突きっ!!」
部屋に突入して、真っ先に一突き。
見るを使用することで、薄っすらとゴーレムの内部を見ることが出来る。ゴーレムの弱点、コアの位置がわかれば、そこを破壊する。定番の戦法だ。
「よる!」
こく
魔物は、弱い存在を優先的に狙うらしい。よるの存在に気づいた魔物は、彼女を狙う。
ゴーレムの攻撃は、ひらりと交わす。運動神経はいいみたいで、今まで彼女は攻撃を受けたことが無い。
「電光蹴り!!」
足に、雷を纏わせて、蹴り込む。電撃がゴーレムの中を暴れ、コアを破壊する。
突きと、蹴りで、ゴーレムを破壊していく。敵の動きはそれほどでもないので、焦ることなく倒しきることが出来た。よるを囮にしている気がして、心苦しいが、注意がよるに向いているので、こちらは攻撃しやすかった。
「ありがとな」
にこにこ
戦闘が終わり、近寄ってきたよるをなでる。
「何か、して欲しい事ある?」
たまには、何かお礼をしたい。この子がいるだけで、和むし、アイテムの量と質が上がっている。
???
ただ、残念な事に、こちらの言葉は伝わっていないみたいだった。
道場に来ることもあるので、言葉を教えるのもいいかもしれない。
>条件を達成しました。特殊イベント”精霊の生贄”を開始します<
「え?」
それは、突然の出来事だった。
システムメッセージが響いた瞬間、辺りが暗くなる。
「よるっ!!」
すぐ側にいた、よるの姿が無い。
「!!!!!!!」
声にならない声が聞こえる。
「待って!!」
気がつけば、少し離れた場所によるがいる。その周りを、黒い鎧をまとった騎士らしい存在がいる。
最悪な事に、槍を構え、それをよるに投げようとしている。
「っく」
何か荷物持ちに関して、イベントがあるとは思っていたけど、これは危険だ。
腕輪の防御力で、あの攻撃を守れるとは思えない。
「生贄って、殺したら、駄目だよね?」
頭を落ち着かせるために、少し考える。そう、これは生贄と言うイベントだ、大丈夫だと思いたい。
そう思いたけど、駄目だという思いのほうが強い。
「・・・」
焦る気持ちを落ち着かせる。今出来る、最善の方法を選ばないと、よるとはもう二度と会えない気がする。
「招雷っ!」
刀に、雷を集める。雷は、空から落ちる物。冗談の構えを理も高く、刀を掲げる。
黒い騎士は、動かない。こちらの様子を見ている。
「もう少し・・・」
ギリギリ限界まで、雷を集める。エネルギーを就職した刀が、悲鳴を上げる。
「いざ、参る!!!」
地面を、最大威力で蹴る。踏み込みのタイミングは、上手くできた。
「爆破!!
キィィィンーーー!と悲鳴をあげる刀を突き出し、踏み込んだタイミングで、爆発魔法を発動。
次の瞬間、背中で大爆発が起こる。その爆発で更に加速する。
一瞬、無音状態になる。
刀は、黒い騎士に突き刺さる。
その直後、爆発音と刀の悲鳴が聞こえた。一瞬だけ、音を越えたみたいだ。
確かな手ごたえ。
「見事なり・・・」
確実に、ダメージを与えたようだった。
「だが、おぬしは資格無し」
「ま、待てっ!」
黒い騎士は、消える直前に槍を投げる。槍を破壊すべきだったのだろうか?
俺は、何か間違えていたのか?
その槍は、よるの体に到達してしまった。
・・・
その表情は、見えなかった。目を逸らしたわけじゃない。
槍が触れた瞬間、よるの体が消えてしまったから。
次の瞬間、強烈な光が発生する。
眩しいけど、目を逸らすわけにはいかない。ただ、今の見るの力をしても、眩しくて目を閉じてしまった。
閉じたくは無かった。
既に理解している。
この目を開けた場所に、よるはいない。
だから、目を閉じてはいけなかった。
そうしたら、消えてしまうから。
どれだけの時間が過ぎたのか、解らない。一瞬だったのか、数時間そのままだったのか。
俺は、見てしまった。
よるのいた場所に残っている、大量の魔石。
その上には、持ち主を失った腕輪が転がっていた。
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