惨劇の前日
次世代型対戦シューティング”大絶海”
一世を風靡した人気ゲーム。今でも、根強い人気がある。
次世代型といっても、今となっては過去の話。フルダイブゲームの出現で、若干のかげりはある。
家庭用のコンテンツもあるが、基本は専用の筐体を使うゲームなので、若干素人には敷居が高い。
人気絶好調の頃は、ビル一つが全部筐体というゲームセンターもあったらしい。
俺が知っているのは、人気の落ち始めたころだった。
大絶海だけでなく、色々なゲームが、擬似コックピットを使っていた。
「よろしくお願いします」
「こっちこそ」
今日の試合は、国際試合。世界大会の、Cブロックの決勝だった。
各国の代表が5人一組のチームになり、団体戦を行う。先に3勝したほうが勝ち。
これを3セット行う。2セット目で勝敗が決まっていても、3セット目を行う。
このときのポイントが、決勝リーグの組み合わせに影響する。
俺は、日本代表の大将を勤めることが多い。一番強いからではなく、出番が回ってこないからと言う意味合いがある。
先鋒からの3人は、世界ランキングの上位3位の腕前。大将まで試合が来た事は、この予選リーグではなかった。
それでも、練習や調整もあるので、定期練習には参加しているし、この大会にも毎回会場まで足を運んでいる。
「一は、新世界の方ではどうだ?」
「まずますですかね?」
世界ランキング一位の、新藤さんが話しかけてくる。この人は、俺と同じプロチームに所属している。
「ちょっと、手合わせしてもらえるか?」
「勿論」
世間話をしながら、機体を調整する。
大絶海は、宇宙の海を乗り越えろと言うキャッチコピーで知られたゲームだ。
高速の小型宇宙船を操り、障害物を破壊しながらゴールまでの時間を競う。
途中、参加メンバーへの妨害行為は許可されている。直接攻撃も可能。
「調整は、それでいいのか?」
「俺は、このスタンダードな部分がすきなんです」
「もったいない」
俺が操縦するのは、毎回基本の宇宙船だった。予選で稼いだポイントで、色々と強化できる。
エンジンを強化して、速度を上げる。基本的に俺がする改造はこれくらいだった。あまりいじりすぎると、バランスが悪くなる。
「それでは、はじめます」
「了解」
コックピットハッチが閉まる。
無駄にこだわっている内装。実際、次世代戦闘機を参考に、現実の兵器のシステムをいくつか取り入れていると聞いている。
視線を感知して、ロックオンする技術とか、音声認識で作動する武器など、ありそうでないものも採用されている。
「エンジン、全開!!」
アクセルを踏み込んで、最大速度で出撃する。
「こちらも、出撃!」
進藤さんも、ほど同じタイミングで出撃する。
宇宙の墓場と言う一番の人気ステージ。過去に大規模な戦闘があった場所で、多くの残骸が漂う。
「流石だな・・・」
新藤さんは、最短距離で障害物をよけていく。あのレベルまで接近する事は、俺には出来ない。
「だから、よけずに道を作る!!」
進路を良く見て、邪魔になる障害物をレーザーで攻撃して排除する。
「そっちこそ、流石だよ」
直線を進む分、俺のほうが若干リードしている。今日は、障害を発見するタイミングはいつもより速い気がする。
その分、破壊できるので、スコアも伸びる。無駄が減って、速度も出ていた。
「彼女でも、出来たのかな?」
追いかける新藤さんが、そう言ってくる。
「れが振られたの、知っているでしょ!」
後ろからのプレッシャーを感じながら、先を急ぐ。
「腕前が上がる原因は、女が出来方らって、昔のえろい人が言ったんだよっと」
若干、聞き間違えがあった気がするけど、それに気をとられるわけには行かない。新藤さんの放ったレーザーが、目の前の障害物を打ち抜く。それは、古い宇宙船の残骸。
「っち」
コースの定番、爆発してコースを塞ぐ残骸だ。
「まだまだ、抜かれるわけには行かないんでね」
爆風を受けて、速度が落ちる。コースも若干わかってしまったので、その隙をついて抜かれてしまった。
「まだまだ!」
相手の動きを良く見る。新世界ではないので、スキルの補助は無い。
でも、何となく今までより良く見える気がする。景色が見えるのではなく、色々なものが見える。
新藤さんの動きも、何となく先が読めた。
活躍すれば、よるは喜ぶかな?
何となく、そんな事を考える。自然と、力が入る。やる気が、出てきた。
昔のえろい人の言う事は、間違っていないのかもしれない。
「見えた!」
新藤さんの小さなミス。最短距離ギリギリを通っている事が、逆にコースを教えていた。通る場所がわかるなら、ここしかないポイントがある。
「しまった!」
こちら尾攻撃が、見事に新藤さんの船のエンジンを打ち抜く。バーニアの一つが完全に破壊され、速度が落ちる。
これで勝負は決まった。
「こういう、可能性を、忘れていたよ・・・」
練習後、打ち合わせのときに、この事を伝えてみた。
「そんな場所を狙えるのは、一ぐらいかもな?」
「どこかに、同じ事のできる人がいると思った方がいいですよ」
「それも、そうか」
明日のチャンピオンは、どこにいるのかわからない。突然、凄い腕の人物が出現するのは、この世界でも当たり前の事だ。
「とにかく、助かった。本番前に、いい練習が出来たよ」
「こちらこそ」
といっても、俺の出番は無いだろう。
大会は、予想通りだった。大将だった俺は。出番の無いまま終わりそうだった。予選突破は確定した。これでまた文句を言う人が、増えるだろう。
試合をしていないのに、賞金泥棒だと言う声があるのを知っている。
取り分は若干少ないけど、結構な額になる。
監督も、それを知っているのか最後に一試合だけ先鋒にしてくれた。
「あれ?」
結果は、圧勝。あっけなく勝つことが出来た。
新世界での行動が何となく、影響している気がする。
そうとなれば、速く戻ろう。きっと、よるは待っている。
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