惨劇への道 その7
「他のメンバーは、甘すぎます!」
カイは怒っていた。
とっさの出来事で、状況を理解できておらず、あとになっていろいろと説明を聞いたらしい。
「あの人、この拠点を奪われただけでなく、巨額の賠償金をギルドに払わせたのに、お咎めなしなんですよ」
「何も、処罰されていないのか?」
「むしろ、仕方ないとか、謎がひとつ解消できたとすれば、あれくらいの損失は仕方無いといわれていました」
「所で、カイはこのゲームは長いのか?」
「私です?ログインしたのは、2年前です。部活もありましたし、入試もあったので、接続時間は不定期で短いです」
「その間に、迷宮は行ったことある?」
「迷宮ですか?私は、壬生を育てる事と、剣道で敵を倒す戦略を練ることに夢中で、行った事ありません」
「塔のほうは?」
「塔は、レイドボスというやつの討伐に、ギルド全員で挑んだ時に行きました」
「なるほど・・・」
この状態だと、俺の知りたい情報は持っていないだろう。
「ギルドに入れて欲しいと言うのは?」
「剣道経験者と言うか、先輩と一緒なら、面白い事ができそうだから、やって来ました」
「シルバーファングは?」
「許可をいただければ、脱退します」
「そんなに簡単に、抜けられるの?」
「えっと・・・」
ここで、返事に戸惑う。
「黒姫に、何か言われた?」
「はい、黒先輩が、好きにしなさいと、脱退するなら、処理は私がやるから気にしないで良いと言われました」
「そういわれても、俺はギルド作る予定は今の所無いよ」
「えっ、新撰組結成しないのですか?」
「その予定は無い。確かに、新撰組は好きだけど、その名前を名乗るつもりは無い」
「何故です?」
「俺は、俺の道を見つけたい。色々と、迷走している自覚があるからね・・・」
「よく解りませんが、色々とあると思っていいのですか?」
「いいのですよ」
「なんですか、それは」
そう言って、カイは笑う。中々の笑顔だ。
「じゃぁ、私と一緒にギルド作りませんか?」
「2人で出来るのか?」
「拠点があれば、可能です」
「若い娘さんと2人っきりと言うのも・・・」
「大丈夫です。私に変な事をしようとすると、この子が許しません」
そう言うカイの影から、狼が出現する。
「影狼の、壬生です」
「がぅ」
カイに紹介され、返事をする狼。影狼と言う種類らしく、影にもぐる能力を持っているらしい。
「ギルドを作るのは良いけど、俺は今やるべき事があるんだ」
簡単に、こちらの事情を説明する。
「新しいスポンサーですか?」
「そのために、大会の出場権を掴まないと駄目なんだ」
「プロの世界は、大変ですか?」
「色々と、苦労は多いよ。まぁ、協力してくれる人もいるから、何とかやっていられるかな」
「黒先輩ですか?」
「流石に、昔の彼女の世話にはなっていないよ」
最初は、色々と協力してくれたけど、今はほぼ独り立ちできたと思う。
「それは、今はフリーと言うアピールですか?」
「そのつもりは、無いかな」
「私は、フリーですけど恋愛関係は期待しないでくださいね」
「片思いの相手でもいるのか?」
「学校の課題に追われて、それどころじゃないです。アルバイトもありますし、気分展開で、この新世界で暴れるのが今一番の楽しみなのです。気分良く、暴れたいです、魔物を、斬り、斬り、斬るのが楽しいです」
ちょっと、と言うかかなり怖い。物凄く、かわいい子なのに、色々と残念な所があるみたいだ。
「だから、お金に関して損害を出したのに何も処罰が無いなんて、可笑しいです」
オリオンの行動には、何か意味があったと思う。それで無ければ、協力する人はいない。と言うか、遮音結界に関して、黒姫が関わっている気がする。あいつが認めた作戦なら、何かあるに違いない。
でも、それを知らない側から見れば、不思議に思うのかもしれない。特にこの子、お金で苦労している気がする。
「それなら、先輩に私が協力します。今まで作り上げてきたものを、伝授します」
「それは、出来れば断る。俺は自分で色々と考えたい」
「積み重ねた時間は、貴重ですよ」
「それもそうだが・・・」
「伝授は無理でも、協力します。次の街に行く時、色々と知っている人が一緒だと効率いいです」
「それは、そうだが」
「あと、ギルドの鍛冶屋から、色々と素材と武器を調達してきました」
「本当か?」
「初心者装備しかありませんよね?」
「そのために、3つ目の街に行こうと計画中だったんだ」
「なら、シルバーファングを抜けるのを少し延期します。先輩が、スポンサーを得るのに協力します」
「それでいいのか?」
「あっちにいたほうが、素材などで便宜が図れますからね。一緒に練習するくらいはいいですよね?」
「そうだな、こっちも時間が惜しい」
この子、色々と粘りそうだから、速めに決断する。こちらとしても、悪い話ではない。
「それでは、よろしくお願いします」
こうして、カイと協力体制を確立した。
このことで、武器や防具の装備の確保が早くできた。
だがそのことが、逆にあの日の訪れを早めるとは、思っても見なかった。
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