決着?
奥の手は、常に用意しておくもの。
ただの眼くらましだけではない。それくらいの予想はしてある。
「これは、流石に想定外・・・」
眼くらましのあとは、槍の攻撃だと思ったけど、違った。
勿論矢でもない。
「まさか、盾を投げてくるとは・・・」
正確には、盾が変形して巨大な鉄球になった。鎖のついた、恐ろしい武器だ。たしか、そう言う話もあったはずなので、その可能性を頭に入れておくべきだった。
「それでも、かわすお前も凄いよ」
刀で弾くのは無理なので、回避に専念する。
「って、それをそう使うのか!」
ルームが、接近戦を挑んでくる。その手には、矢がある。弓使いの効果で、矢の威力には補正がかかる。当たれば、ただではすまない。
しかし、これだと最後の狙いがわかってしまう。それぞれの持ち味を変える攻撃。そうなると、次はあれだろう。
「これでも、くらいやがれぇ!」
オルトが叫ぶ。ここは、目立っては駄目だと思う。こっそりと、勝負をつけるべきだ。
場所が道場なので、天井がある。ジャンプしての投擲は無理だったのだろう。それでも、背後ではなく、ガイとルームの攻撃を避けた瞬間の死角から、槍が飛んでくる。
「残念でした・・・」
ただ、一連の攻撃は、心眼の効果で解っていた。最初から、死角の位置が違うのだ。まだ上手く使いこなせていないので、微妙に死角がある。でも、今回の動きは筒抜け。
「これも、駄目とはさすがは、お姉さまのもと彼・・・」
槍を避けた場所に、ガイが回り込んでいた。その手には、ナイフがあった。
それも見ていたので、回避しながら、強引に向きを変えて刀を突き刺した。
「って、女の子だったのか?」
ガイは外見も、声も男だった。
「性別ぐらい、ゲームの中では変えますよ。ちくせう、一回ぐらい殴りたかったのに・・・」
そう言って、ガイは消えた。
「もしかして?」
「僕達はちゃんと男ですよ。ガイさんの中の人の性別は、今知ったぐらいですし・・・」
「まぁ、男と言うなら、そう扱うだけのことです。この世界の中では、そう言うものです」
残りの2人は、あまり動揺していないたいだった。
「それにしても、今の回避は面白いですね」
「その発想は、ありませんでした」
「そう?やりそうな人いるけど?」
とっさに、新しく覚えた爆発魔法を自分に発動した。自傷行為を厳しくしているこのゲーム、自分に爆発系の魔法を使った場合どうなるのか?
その結果は、多少のダメージはあるけど、ブースターのように、爆発的な加速を得る事に成功した。一か八かの勝負だったので、上手くいってよかったと思う。
「貴方は、剣士なのでは?」
「俺は、この世界で、剣道と魔法をあわせたものを作りたい。面白そうだろ?」
「変な事を考える人が、他にもいるのですね・・・・」
「俺みたいなのが、いるのか?」
「そう言えば、いたな。と言うか、あいつログアウトしていない?」
「ギルドメンバーなのか?」
「えぇ、他の人はログアウトしたと思ったのですが、残っているみたいです」
「仕方ないです。ガイがいないなら、私達では荷が重い」
「俺達がログアウトすれば、あいつがここに来るでしょう」
「良いのか?」
「貴方なら、悪いようにはしませんよね?」
「善処しよう」
元々、今回の事は想定外の出来事。経験を大量に得られたことの方が大きい。レアアイテムも色々とあるけど、無理に奪うつもりは無い。
「この道場は欲しいかな」
「それくらいは、許されると思います。では、御武運を」
そういい残して、2人は消えていく。今回も、アイテムも経験値も得られない。
「どうして?」
「不正行為は、最初から確認していませんよ」
道場に、懲罰天使さんが現れる。
「この事態は、正直GMのほうでも想定外で、混乱しているのです。バランスを壊す可能性もあるので、色々と凍結しています」
「まぁ。仕方ないと思うよ」
「怒ってます?」
「少しだけ。落とし処は、そっちに任せる」
「了解しました」
「折角だから、最後の1人を相手にしよう」
「勝てますか?」
「やってみないと解らない」
「そうですか」
道場の中に、1人の人物が出現する。
「刀使いですか・・・」
可愛らしい少女の声。
「侍ですよ」
剣を、中段に構えて向き合う。相手も、同じように構える。その動作を見て、同類と確信する。剣道の経験者。
「新撰組ですか?」
相手の服装は、時代劇でおなじみ新撰組の衣装だった。
「そうだ」
可愛らしい声とは裏腹に、返事は潔い。小柄で、素早い動きをしそうなのに、違和感を感じる。
「時代劇がすきなのか?」
「違うわ。私は、どちらかと言えば古武術とかは嫌い」
「なら、何故?」
「名前が、私の名前に似た人物が、新鮮組いたの。気になって調べたら、気にいっただけ」
「なるほど・・・」
見た感じ女の子で、同じような名前の人物がいただろうか?
「きっかけは単純だけど、結構気に入っているの」
そう言いながら、こちらにつこっこんで来る。大降りで、鋭い一撃。速さ重視と言うよりも、一撃の重さを考慮した動き。
「危ない、危ない・・・」
竹刀のつもりで受け止めていたら、刀は折れていただろう。何とか、鎬を合わせて、受け止める事ができた。
「っち・・・」
軽くぶつかって、素早く後方へと下がる。素早い動きも出来るようだった。
「面白い魔法を使うのですね」
「それを見抜くとは、面白い」
そう言って、彼女は飛び上がる。
「加重!!」
そして、急降下。自分の周りの重力を操り、攻撃力としている。軽くして飛び上がり、重くして斬りつける。
「動きを封じるのに、使わないのですか?」
「あははは、爆発魔法で加速するなんて、面白い!」
こちらの問いかけには、答えてくれません。何とか一撃をかわしましたが、手ごわいです。この手の動きに熟練しています。鍛錬の時間だけ、こちらが不利です、負けそうです。
「仕方ありません・・・」
用意していた魔法を、準備する。
「あははは、面白かった」
勝負は一瞬で終りました。
今回は俺の勝ちです。
これで、この騒動は一応終わり。
あとは、懲罰天使さんの話を聞きましょう。
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