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新人潰し その2

 武家屋敷の中に、道場はあった。

 中に入ると、外見より広く感じた。

「ここを作るのに、結構な額を投入しているからね」

 本拠地を作るシステムを利用すると、外見よりも広い中身を作ることが可能らしい。ギルドに関しては、すぐに必要ないから、あまり調べていなかった。

 道場の広さは、剣道の試合場が4面作れるくらい広さだった。中は特に何かあるわけでもなく、意外と殺風景だった。

 神棚とかは無く、上座に当たる部分に、なぜか牛の置物がある。

「あれは?」

 実際の牛と同じくらいの大きさなので、凄く目立つ。良く見ると、牛の周りに透明の何かがあるような気がする。

「あれは、ダンジョンで見つけた遺物だよ」

「と言う事は、何か効果があるんですね?」

「訓練場に設置すると、スキル上昇率が若干上昇するという、ありがたい置物だよ」

 ダンジョンからは、色々と有益なアイテムが出ると言う。塔のダンジョンは特に設置型のアイテムが多いらしい。大手のギルドは、色々と有益な遺物を所持していて、様々な支援を得ていると、情報サイトに記載はあった。

 ただ、どんな効果のあるものがあるかは、秘匿されている。

「効果を試してみるかい?」

 オリオンさんが、何かを操作すると、道場に人形が出現する。

「これは、訓練用ゴーレムだよ」

 その人形は、俺と同じくらいの大きさで、体格も同じくらいだった。

「これも、遺物の一つかな。訓練する人と同じサイズに指定できるんだ」

 大きさは同じでも、武器は違う。俺は、初心者の刀を持っているけど、相手は西洋の長剣を持っている。

「武器は、選べないの?」

「あれは、この世界で一番使用者の多い武器を持っているんだ。訓練の相手だからね」

 確かに、経験を積むには良いのかも知れない。

「体力の設定は無いから、破壊不能の遺物なんだ。遠慮なく、斬りつけていいよ」

「そう?」

 俺は刀を抜いて構える。訓練場で相手にした人形よりも、臨場感を感じる。

 こちらが構えると、人形も反応してこちらに向き合う。

「・・・」

 人形が、何かを言っている気がする。ただ、音が小さくて聞こえない。何を言っていのか、気になるので集中してみる。

 集中する事で、五感が鋭くなるけど、結局何を言っているのか解らない。ただ、俺の立っている場所の前に、不思議な何かが存在している。

 だから、集中して見る事にする。

「遮音結界?」

 結界魔法を持っているからか、それが何か理解できた。音を遮断する結界がある。

 色々と、情報に関して秘匿されている世界だ、秘密を守るために必要な物だと思う。観察すると、道場の天井に、発生装置がある。これも遺物らしい。

 見ている間に、構造を解析いて、遮音結界L1を習得できた。結界魔法は、こうやって増やす物なのかもしれない。

「どうかしたかな?」

「何でもない」

 動かない俺を不審に思ったのか、オリオンさんが話しかけてくる。その顔には、どこと無く嫌な気配を感じる。ゲームの中なのに、変な部分でこだわっている気がする。

 もう一度、人形と向かい合う。何か言っていた感じがなくなり、遮音結界も消えている。

「面っ!」

 こちらの間合いだったので、一番ありふれた面を打ってみる。部活でやっていた頃みたいに、イメージどおりに動けた気がする。

 面を打たれた人形は、あっけなく倒れてしまう。破壊不可のはずなのに、倒れた後消えてしまった。


”ギルド施設が襲撃されました。ギルドメンバーは防衛をしてください。繰り返します、施設が現在襲撃を受けています”


 道場の中に、警告音が響きます。

「これは?」

 刀を構えたまま、オリオンさんに向き合います。その男は、嫌な笑顔で立っています。

「新人が、このシルバーファングを襲撃するんなんて、大した者です」

「俺は、騙されたのかな?」

「さて、何ことでしょう?」

 道場の中に、不思議な魔法陣が浮かび上がります。その中から、武装した人間が出てきます。

「他のメンバーは?」

「この事を知っているのは、俺達ぐらいだ。間抜けの始末ぐらい、これで充分」

 出てきたのは全部で4人。オリオンと合わせれば5人の敵がいると言うことでしょう。


”繰り返す、これは訓練ではない。これは、訓練ではない!”


 お約束の言葉が響いています。さて、訓練のつもりだったのに、それを否定されました。

 どうしましょう?


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