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第壱章ー肝試しー

「うわぁ……、雰囲気あるね」



 事前に織人に聞いていた通り、トンネルを抜けた先にある地蔵まで行き、そこをUターンして帰ってくると言う説明を受け、日向達は肝試しをスタートした。



「……」


「西牙くん、大丈夫?」


「……うん、大丈夫。ごめんね、こういったのあんまり得意じゃないんだ」


「へぇ、そうなんだ。意外かも?」



 本当に苦手という訳ではない。むしろ、日向の家業的には得意だと言える分野でもある。苦手ならば、言葉数が少なくなってもなんら不思議ではない。そうやって勘違いでもされていた方が今の状況だと助かるのだ、目の前の光景的には。



(魑魅魍魎の類か……?これは、……蜘蛛?)



 日向の目にしか映らない光景。加那には見えていないだろうが、蜘蛛に良く似た体長三十センチメートルくらいの魑魅魍魎がトンネルの端に犇めいていた。



(襲い掛かってくる気配はない。そもそもここは“うちの管轄”だ。父さんが気付いていないとは考え難いけど……)



 蜘蛛は多少蠢いているが、こちらに襲い掛かってくる気配はない。こういった魑魅魍魎の“群れ”というのは本能のままに襲い掛かってくるのが定石と教え込まれていた。過去にこういった魑魅魍魎の群れに遭遇した時は、例外なく認識した段階で襲い掛かられていた。



(とすると、群れの統率者がいる……?)



 頭がいて、それがこの群れを率いているのか。日向はそう考える。



(ならあまり刺激しない方がいいな。幸いにもそんな風に見えるやつはいない。とすると……)



 横目で刺激しないように辺りを注意深く観察してみるが、この蜘蛛達以外には見当たらない。



「ごめん、伊吹さん。ちょっと体調が悪くなってきたんだ。申し訳ないけれど戻ってもいいかな」


「え、大変。大丈夫なの?」



 もう既にトンネルの中腹辺りまできてしまったが、日向は帰ることを提言する。自身の体調が悪くなったということならば、加那に何か迷惑をかけることもないだろうし、上手くいけばこの肝試し自体も終わらせることができる。



(いや、終わらせないといけないな)



 この大量の魑魅魍魎に襲い掛かられたならば怪我人、最悪死者が出てもおかしくはない。どうにかしてこの肝試しを終わらせなければならなかった。



「ごめん、朝からあんまり体調良くなくて。明日から学校休みだし今日くらいは大丈夫と思っていたんだけど……」


「ううん、無理しちゃダメだよ。帰ろう?」



 ホッと内心で安心する日向。これでもどうにか先に進もうとするならどうやって止めようかと頭を悩まさなければならなかったが、織人をもってして性格まで特級と太鼓判を押された加那は日向を心配そうに見つめている。

 そうして帰ることにした日向と加那はトンネルを出ようと踵を返す。

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