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第壱章ー朝の平穏ー

 初夏。

 梅雨が明け、まだ朝だというのにジメジメとした湿気と顔をしかめたくなるような気温の中、自身の通う高校へと向かう一人の少年。

 彼の名は西牙日向(せいがひなた)

 黒髪に黒の瞳に、決して高くもない身長に平均的な体型の、ただの16歳の男子高校生。一つ周りの登校する生徒と違う所と言えば、彼がまだ長袖を着ていることくらいか。

 衣替えを面倒くさがったのか、半袖を買うことが出来ないほど貧乏なのか。

 一瞬こそ不思議に思えど、一瞬でそんな事どうでもよくなるほど、彼に興味を抱く者はいなかった。



「あっつ……」



 汗こそそれほどかいていないが、その呟きから察するに彼はそれほど熱には強くないらしい。

 額から流れる汗を袖で拭った所で、彼の肩を叩く人物が一人。



「よっ」


「あぁ、おはよう」



 日向の肩を叩いたのは彼の数少ない友人である笠井織人(かさいおりと)

 見た目こそ金髪につんつんの髪型といった所謂ヤンキースタイルではあるが、その実彼の評価は高い所にある。

 その要素はコミュニケーションが堪能であったり、端正な顔立ちであったり、そこそこ勉強が出来る所であったりと。端的に言えば日向とは真逆の人間なのだが、この二人は自他共に認める親友である。



「お前、また一年中長袖着てんのか?」


「ん、ああ。前にも言ったろ?怪我して人には見せられないから包帯してるって」


「でも夏だぜ?右腕だけなんだろ、怪我してんの。包帯巻いてても誰も気にしないんじゃねえの?」


「まぁ……、気にされないのはそれはそれで少し悲しいものがあるけど……」


「お前が辛くないならそれでもいいけどよ」



 他愛のない会話をしながら学校へと向かう二人の前に数人の男に囲まれ、少し困った表情を浮かべる少女が目に留まる。



「あれは……」


「ん?あぁ。ありゃあ、我がクラス……。いいや学年のマドンナ、伊吹加那(いぶきかな)だな。

 顔もスタイルも性格も特級とくれば、そりゃ男どもも見逃さないよな」


「我がクラスっていうと、ウチの?」


「まぁ、俺と同じだしな。

 ってかお前知らなかったのか?もう3ヶ月はクラス替えがあってから経ってるけどよ……」


「いや、彼女は知っているよ。でも同じクラスだったっけ?」


「……まぁお前はそんなやつだわ」



 色恋沙汰にとんと興味がないのか、日向は首を傾げて怪訝な顔をする。

 それを見た織人は一笑した後に何でもないと彼なりのフォローを入れていた。

そんなこんなで彼らの朝の時は流れていく。

 今夜巻き起こる、奇妙奇天烈奇怪な物語の序章とも知らずに。

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