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色付く心と桜色  作者: v私立桜咲学園文芸部
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第八話 出逢い。再び。

背中を押す優しさと期待に応える強さ

「今日は輝夜さん来ないの?」


「うん。ネットの生ライブがあるからって」


「そっかぁ……」


 見るからに落ち込む月奈ちゃんはスマホを取り出してお姉ちゃんのライブを見始めた。一瞬にして表情が変わるから見てて飽きないし面白い。


「あ、このモデルの人も好きなんだ!」


 って言って見せてくれたモデルの人は、中学校に通ってた頃の一番の親友だった。連絡は一応取ってるけど、モデル業が忙しくてなかなか連絡も帰って来ない。元気にしてるかどうかも心配だったし、こうして元気に笑ってる姿を見るとほっとする。


(あり)()……」


 中学の入学式で有彩が話しかけてくれたのを覚えている。ショートヘアの金髪と整った顔。凄く美人だって言うのが第一印象。そこから色々と話すようになって、いっぱい遊びに行ったりもした。有彩はモデルになりたいって教えてくれた。恥ずかしそうに、馬鹿にされるかも知れないから言えなかったんだって笑いながら言った。そんな有彩に大きな声で『何を言われても私は全力で応援してるから!』って全力で背中を叩いたのは今でも覚えている。痛いよって涙ながらに笑いながら言う有彩の手を引っ張って走った光景が頭によぎった。


赤羽(あかはね) (あり)()っていうモデルさんなんだけどね、すごく可愛いから好きなんだ!」


「………うん」


 お姉ちゃんと二人で話している姿を見るとなんか嬉しくなっちゃって、思わず笑っちゃった。そんな私を心配そうに眺める月奈ちゃんに一言謝って、二人の会話をスマホ越しに見ていた。


「さっき星月さんと話してたんですけどね、私たちが夢を叶えることが出来たきっかけの人が同じ人だったんですよ」


「そうなの! 有彩ちゃんからその話聞いた時は驚いたんだけどね、今この場を借りてその子にお礼が言いたいなって!」


「「せ~のっ! 桜ちゃん! ありがとっ!!」」


 月奈ちゃんが目を丸くして驚いているし、配信を見ていたクラスの他の子も私を見て目を丸くしている。そんなに見られると流石に恥ずかしい。お姉ちゃんと有彩には後で文句言ってやる。


「桜ちゃんって有彩さんとも知り合いなの?」


「うん、親友なんだ………」


 瞳をキラキラと輝かせてもっと話を聞かせて欲しいって懇願する月奈ちゃん。この調子だと放課後も話し続ける羽目になる。

 その時、扉が勢いよく開かれて私の名前を大きな声で呼ぶ人が居た。お姉ちゃんが教室に入って来た時みたいに。その声と姿を見たら懐かしさと嬉しさで体が勝手に動いてしまった。


「有彩!」


「久しぶりだね! 桜!」


 捨て身で抱きしめた私を軽々と受け止めて、あの頃みたいに笑って名前を呼んでくれる。海外に引っ越したって聞いてたし、仕事で日本に帰って来ても会えなかったからもう二度と会えないんだって思ってたけど、こうして再び出会えたことが嬉しくて、声を上げて泣いた。


「泣かないでよ、そんな泣かれたら私も……」


 つられて泣き出す有彩と私を見て、目を丸くしたままクラスのみんながこっちを見ている。その様子に気付いたお姉ちゃんが少し焦り気味に慰めてくれた。

 冷静に考えたらおかしな点がいくつかある。さっきまでネットで生配信してたのになんでここに来れたのか。


「ここの近くで収録してたからね」


 飛行機の時間とかは大丈夫なのかな? しばらく居てくれるなら嬉しいけど、お仕事も大事だし。


「日本に帰って来たんだ。海外はお仕事で行く程度だし」


 その報告を聞いたらまた泣いちゃいそうだったけど、歯を食いしばってなんとか泣かずに堪えた。


「ホームステイなんだけどね」


「どこにホームステイするの?」


「桜ちゃんの家」


「え?」


「お母さんには許可も取ってあるし大丈夫」


 お母さんはそう言うことを一切言ってなかった。家に帰ったら問い詰めないといけない。けど、親友と同じ家で暮らせるのも楽しそう。


「新しい家が見つかるまでの間だけどね」


「それまで一緒だね」


「私も桜ちゃんの家の近くに引っ越したんだ! 高校も近いし」


「お仕事のない日は一緒に登校できるね!」


 これからの生活に胸を弾ませていると、月奈ちゃんが口元を手で覆って号泣していた。この光景はどこかで見たことあったけど、その時と比じゃないほど泣いている。


「大丈夫? そんなに泣かな――」


「立花さん! 良いストーリーが書けそうだから来て!」


 腕を引っ張られて文芸部の部室へと無理やり連れていかれた。まるで入学式のあの時みたいに。慌てて追いかけて来た有彩やお姉ちゃんたちに目もくれず文芸部の部室へと真っ直ぐに向かう先輩。今日の先輩は活き活きしている。


「凄いストーリーが浮かんだんだ! 絶対に良いものが出来る!」


 二人きりで話していた青原先生たちに一礼してから部室へと入る。それほどまでの自信作なら私も楽しみだ。有彩たちの姿を見てもの凄く驚いている天野先生も気にならない程に先輩は集中していた。


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