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色付く心と桜色  作者: v私立桜咲学園文芸部
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第四話 幸せの形

恋人同士じゃなきゃ幸せなんてことは絶対にないんだよ。

 まぁ、もう一度出逢えたとしてもあの時みたいに仲良く出来る気がしないし、顔を覚えてなかったって知られたらその人もきっと傷付いてしまうだろうし。遠い昔の思い出みたいな感じで今は充分だ。なんかこのセリフは小説で使えそうだからメモして置こう。

「今日も一日頑張ろっ!」

 教室へと駆け足で向かう。今日も何か良いことが起こりますようになんて願いながら廊下から窓の外の景色を眺めながら教室へと向かった。確証がある訳じゃないけど、今日は本当に良い一日になりそうだ。

 なんて期待を裏切られた放課後の部活の時間。今日も先生たちと楽しくお話ししながら小説(仮)を書くんだって楽しみにしてたのに……


「……」


 座る私を無言で見下ろす二人の先生。事の発端は私にある。あるけど、あるんだけど……何もそこまで怒る事じゃないって反論したかったけど、先生に口答えなんて出来ないし。先輩たちはまだ来てないから誰も助けてくれないし。

 最初から説明すると、私は放課後のチャイムが鳴って部活へ向かおうとしたけど途中で寄り道して桜を見ていた。ここまでは特におかしな様子も無かったんだけど、部室へと走って向かった私はそのままの勢いで部室の扉を開けてしまった。と同時に先生たちの怒りの扉も開いちゃった。全然上手くない。たまたま、本当に偶然で狙った訳じゃないのに先生たちがいつも以上にイチャイチャしつつなんかポエムみたいなこと言ってったから気まずくて、その場を離れようとしたところで捕まった。さっきのポエムみたいなところは聞いてないって弁解したら逆に怒られてポエムって言うなって注意された。で今に至る訳でして、


「あのな、立花。俺たちは別に立花が嫌いで言ってる訳じゃないんだ。もう少し気を付けてくれって話な

んだ」


「先生たちが部室でイチャイチャしつつポエムみたいな恥ずかしいことを言い合ってるのがおかしいんで

すよ。ここ部室ですよ?」


「立花」


「はい」


「正論を言うな。俺たちが反論出来なくなるだろう」


 なんかそれっぽく注意されたけど、私は悪くないし。天野先生だって私が困ってたら助けてあげるって言ってたくせに、今こうして私を追い詰めようとしてる。これは私が言わないと今後同じことが起きた時に他の子が同じ目に遭ってしまう。


「天野先生」


「はい」


「今困ってるんですけど、助けてもらって良いですか?」


「ダメです」


 考える間もなく即答された。一秒も経たないくらい早く、被せ気味に拒否された。顔を真っ赤にして見下ろす天野先生もかなり怒ってるに違いない。


「私はさっき海くんから言われた言葉にトキメキ過ぎて困っちゃってるので天野さんを助けることは出来ないです」


 肩をバシバシ叩きながらハイテンションでそんな事を言われると思わずニンマリして青原先生の方を見つめてしまった。無意識だから仕方ないなんて青原先生は許してくれないだろうな。


「天野先生、さっき青原先生に言われたセリフの中で一番心に響いた言葉教えてください」


「あっ! おいっ! 絶対に言うなよ!」


「俺が告白するなら、満天の夜空と満開の桜の下が良いな。今度星空見に行かねえか?」


 青原先生の真似をしつつそう言った天野先生は顔を押さえて一人で喜んでいる。そんなセリフを言ってたのか。しかも告白する気満々だし。こんなこと聞いたら口角がさっきよりも上がってしまうのも仕方ない。


「あ、立花さん来てたんだ」


「助けてください! 青原先生が私をイジメてくるし天野先生が惚気てくるんです!」


「兄さん、結愛姉。ちょっとそこ座って」


 静かな声でそう指示する先輩を見て、やけに焦る先生たち。先生たちは何か弱みでも握られてるのだろうか。


「違うんだ夏海。話をしないか?」


「あれほど忠告したのに聞かないし、挙句の果てには立花さんを困らせるし」


「夏くん、違うの!」


「結愛姉」


「はい……」


「出禁にするぞ」


 言い終わる直前に天野先生が目にも止まらぬ速さで頭を床に擦り付けた。これは教師としてあるべき姿ではないのは確かだ。


「っ……夏海、成績がどうなっても良いのか」


 うわっ、最低だなこの先生。自分で何言ってるのか分かってるのかな? そんな切羽詰まった犯人みたいな顔されても言ってることがあれだからなぁ。


「校長先生に言うよ?」


「っ……揺るがねえぞ!」


「教育委員会に「俺が悪かった」


 言い終わる直前に天野先生と同じ速さで土下座する先生。こうして見ると第一印象が大きく崩れ去ってしまった、いや、本当に良い先生だと思ってたのにな。


「立花さん、二人を許してあげて欲しい。冗談でこういう事をしてしまう奴らなんだ」


 今までのは冗談だったのかな。いや、冗談であって欲しいし冗談でなきゃいけない案件だった気がする。


「まぁ、なんだ。俺たちは照れ隠しのためにあーやってただけで本気じゃないんだ。すまん」


「ずっとこんな感じなんですか?」


「兄さんたちは昔からこうだよ」


 そこは一番の改善点ではないんでしょうかって疑問は心の中の奥底にしまっておくことにする。そもそも、こんなに二人きりの時間が長くて家族みたいな関係なら付き合ってしまえば良いのに。この関係がずっと続く方がモヤモヤするし辛いと思うけど。

 違う、それは私が望んでるだけなんだ。会って間もないのに、大切にしてくれる先生たちに、ずっと笑顔で居て欲しいんだ。今の先生たちがそれでいいなら私はそれ以上何も言うことは無い。それも含めて先生たちのストーリーなんだもん。


「本当にごめんね、兄さんも冗談だって言ってるから許してあげてね」


「……分かりました」


 天野先生だけ冗談に見えないのは言っても良いのかな? 誰かが止めない限り永遠に喜び続ける気がしてならない。


「えへへ~///」


 今もこうして何とも言えないような照れ笑いを続けてる訳だし、先輩もそれを見て見ぬふりして青原先生にお説教をしてるし。天野先生は次第に勢いを増してなんかもじもじしたり顔を手で覆って恥ずかしそうになんか呟いてるし。本当に大丈夫なのかな? この先生が私の担任で。


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