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消えたかった少女とモフモンたち  作者: りぢ
1章 少女はお礼をしたい
5/9

5 色々な変化にようやく気付いた

 腹が満たされて更に膨らんだ羽毛もといろーは、警戒心も無く、今現在腹を出して転がっていた。

 気持ち良さそうなところ悪いが、口付近に付いた汚れは取れていない。

 脂ぎった口部分は所々にカスがモフモフだったところに付着して、軽くテカっていた。

 汚い。


 満足したらしいろーを横目で見る。

 お腹は空いているのに殆ど食べきれていない私の皿には、大量のこんがりと焼かれた肉が乗っていた。

 既に冷めているが、そろそろまた青色の球体が焼いてくれるだろう。


 けれど限界だと心は訴えている。

 圧倒的な味のまずさ。

 いや、正確に言えば違う。

 油はぎっとりと付いているが、味がない。

 調味料がこんなにも必要になるとは思ってもみなかった。

 平民として、塩は最低限欲しいんだと味が訴えていた。


 どうやらそこまで飢えていた訳ではないらしい。

 奴隷だとしても想像程に酷い生活を強要されていた訳では無かったようだ。

 ならば食べなくてもいいか。

 そんなことを思いながらもう一口肉を引きちぎって食べる。

 野生の食べ方なのは仕方ない。


 誰かフォークとナイフを持ってきてくれ。











 あの後私は青い球体に一切合切丁寧に教えた。


 怒るには労力がもったない。

 というのは建前で、喜んでいるように思ったからであった。


 青い球体にさざ波が立ち、空中をぴょんぴょんと僅かに飛んでいる。

 何も考えなければただの風の揺れに思えたのだろうが、確かにそうだった。

 目の前の丸焦げになった肉塊を思えば、私を身体の芯まで焼くことは可能だろうと思う。


 なんせ大猿の一部とはいえ、軽く私の身長の二倍ある。

 人間でもそれくらいの大きさある者はいるけれど、だいぶ大きい方だ。

 そして更に体積は筋肉が剥き出しくらいに見え、人間では有り得ない体積の膨張をしている。


 だというのに私には火傷の一つだってない上に、丸焦げになったモノを触る時に感じるだろう熱さも感じていなかった。


 危害を加えようと思うのなら、今がチャンスだっただろう。






「そうだったのか、すまない」




 以外にも素直に頭を下げたその姿は、けれど意気消沈していた。

 さざ波は消え、ぷかぷかと浮かんでいるだけだというのに。










「よし、行こう。そろそろろーも疲れただろうし」


 ろーが身震いすること約十数回。

 眠ったままのところに睡眠を掛けることで睡眠増幅にでもなるのだろうか。


 まず魔物、という存在を現実で私は見たことがなかった。


 父が冒険者であったから、狩ってきた魔物を今日の鍋の具材にすることはよくあったから、死体を見たことはある。

 けれどどのような生物なのかは、教科書でしか知らなかった。

 しかも学校では、主に戦いではなく勉学を学ぶ。

 貴族科と普通科に別れてはいたが、普通科にも下級貴族はいた。

 その人達に合わせた教育を施しているのだから、モンスターについて語るとすれば伝説級くらいだ。


 そんな環境下だったから私はろーがどんなモンスターなのかを一切知らない。

 知らないものは仕方ないので諦めている。

 一先ずは周りにいるモンスターが私に危害を及ぼさないでくれれば良い。


 私が立ち上がればろーは私の頭へと乗ってきた。

 脂ぎった顔周辺が気になるが、仕方ない。

 尚口がどこにあるのかは分からないが、脂ぎった周辺がそうなのだろう。


 さて。

 食べることをしている内に、そろそろ暗くなってきた。


 焼いた余っている肉は剥いだ皮に包んである。

 私が切った切れ目よりも三本線のちょうど良く大きく切り裂かれていた切れ目から剥いだ。

 私とエンカウントする前にも戦っていたのだろうか。

 寄生虫についてはまた焼けばどうとでもなるだろう。


 ここでどこに逃げるかという話になってくるが、私には考えがある。

 木の上だ。


 地面よりは寝はしにくいが危険は少ないだろう。

 日中歩ける最低限の体力が回復すれば良い。


 問題は、真っ暗になるまでに登りきれるかどうかだ。

 前世の幼い頃は木登りが上手かったから行けると信じたい。


 歩いて一分以内の手短なそこそこ長い木を発見する。


 ふぅっ、と息を吐き出し、勢い良く足を乗せようとする。

 成功。

 幼い身体でもどうにか出来たらしい。


 ここで違和感を感じ、幹の分かれ目にて立ち止まる。


 さっきは本当に小さい身体に合わせて私は走ったのか、と。

 違和感すらなく軽々と登れた感じは、まるでほぼ前世と同じ体躯であるかのようだった。


 手を見比べる。

 そして立つ。

 足を見る。


 元々靴のない足は大きくなっているように見えるが、手と同じで勘違いの可能性もあった。

 どちらとも大きく見える。


 決定的な違いは、胴を見て発見した。

 ブカブカだった服がピッタリくらいのサイズになっているではないか。

 まるで元々そのサイズだったかのように。


 ぐーぱーぐーぱーと手を動かす。

 頬を抓る。

 ヒリヒリと痛む。


 どうやら夢ではないようだ。


 痛みが持続している。




──⋯⋯ん? どうしてだろうか。




 頬を抓っていない筈の皮膚から痛みがする。

 ヒリヒリしているのは変わらないが、おかしい。

 どこも傷などないのだから。


 けれどその内取れるだろう、と頭の隅に置いておくことにした。


 それよりも問題が身長だ。


 どうしてこうなった。


 身長が違くとも腰まで伸びる白髪は変わらない。


 前世の時は黒髪だったから、前世の姿という訳でもない。

 そもそもそれならば前世ではなく、誘拐されて時間が経過した後に魔法によって姿を変えさせられたという表現の方が正しくなって来そうだ。

 類いで言えば、数年間の記憶が一瞬にして無くなったことにより転生したと思い込んでおり、母親だと思っていた相手は私のことを子だと思い込むことによって精神を保っている人という可能性だって無くはない。


 けれどそんなことは考えてもキリがない。


 頭の中でハテナが大量に浮かぶも、答えが浮かぶ前に日が暮れそうだ。

 既に太陽は地平線へと姿を消している。


 まずい。

 とりあえず寝床とを確保しなければ。


 その一心で登れば、上の方へと辿り着く。


 座り込んでもどうやら大丈夫そうだ。

 ふうと安心して目を瞑る。


 頭の上にいたろーを引き剥がして抱き抱えた。

 脂ぎった毛は既にない。

 もう生え変わったのだろうか。


 青い球体は触ったらどうなるか分からない為、ずっと傍にいるままにしておいた。











「痛い痛い痛い痛い! 」




 ヒリつく、を通り越して、皮膚を焦がされているような痛みが襲う。


 まるで酷い日焼けをした時のような。

 痛みで飛び起きるのは初めての経験だ。


 昨日は目を瞑って直ぐに眠った為、何も変なことはしていない分、突然の痛みに声を上げることしか出来ない。

 

「そりゃあアルビノだというのに何も対策をしていなければそうなるだろう」


「ん⋯⋯アルビノ? って、あ」


 真っ白の髪。

 正しく特徴通りである。

 鏡がなくてなど言い訳にもならない。


「やっと気付いたのか⋯⋯」


 目の前の青い球体は呆れたかのように言う。


 なら青い球体が教えてくれたなら良いじゃんか。

 そう言おうとしたが、ここで青い球体は見た目のままであったことを思い出す。


 名前なんだったっけ、と考えるも、知らない結論に達する。

 言っていた気はするが、1回だけで、更にもっとインパクトのある行動をされればそりゃあ覚えられる筈もない。


 きっと。


「⋯⋯⋯⋯名前なんだっけ? 」


 は? と言いたげな様子で、たまにさざ波を起こす青い球体がピタリとさざ波を止める。


「2度は言わん。勝手に好きな名前を付けたら良かろう」


「えー⋯⋯じゃあ⋯⋯じゃあ⋯⋯」


 名前など付けられないとはよく言う話。

 苦手であった。

 なんでも燃やしてくれるのだから火の技名からなんかかっこいいを取れば良いのでは。

 そこではっ、と思い付く言葉があった。


「フレイム! 全部パクるのはアレだから、フレイにしとこう! 」


 呆れられるかと思ったが、案外さざ波が立っているからこれは喜んでいると思って良いのだろう、か。

梟は唯人間界で一番近い生物を異世界で当てはめておいた種族名と考えて下さい

その他の固有名詞もそのように捉えてください

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