1-05 都合で即完治できない③ 憤る
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しばらくしてから、蹲って震えている女の子に声をかける。
「(・・・私の言葉は聞こえるよね?緑色の生き物は追い払ったよ?)」
「・・・・・ぇ」
「・・・?」
女の子は恐る恐る私を見上げて来たので、にっこり微笑み返すと、
堰を切るように泣き出した。
・・・そうなるわなぁ。落ち着かせる為にも、抱き抱えて泣かせる。
「ごめんなさい」「ごめんなさい」「ごめんなさい」「ごめんなさい」「ごめ
女の子は理由なんて無い謝りを、震えながら何故か必死に私にし続ける。
・・・・・
混乱、錯乱している。
・・・あぁ、なんか悲しくなってきた。・・・もっと早く助けるべきだった。
罪悪感が生まれる。
私自身いろいろな感情が渦巻いて言葉にできない。
私が想像していた女の子の状態より、女の子の状態は更に酷かった。
「ごめ・「大丈夫、大丈夫だよ・・・」
「乱暴な事は決してしない。しないから・・・」
「私の方こそ済まない。もっともっと早く助けるべきだった・・・」
「グッ・・」私も思わず涙ぐんでしまう。(我慢だ)
・・・・・
・・・・
・・・。
暫くして、少し落ち着いきてた女の子から、
「・・・お姉ちゃんは???」と、シャクりながら聞いてきた。
「お姉ちゃんって?そこのお嬢さんの事?」「・・・うん。」女の子は
頷いたが、何となく状態を理解していたのだろうか。まだ怖がっていた。
「大けがをしているけど、助けたから大丈夫。
今はお薬で眠っているから起こしちゃ駄目だよ?いい?」
女の子は少しは明るくなった表情で再び頷いた。
「・・・今度は君の番だ。ケガを診るね。」
「・・・顔は?」「さっきアイテムと道具を使って殆ど治したんだ。」
「これを口の中に含んで、濯いだら一度ここに吐き出して。」
「残りは飲んでいいよ。」
瓶に入った透明の低回復ポーションと空の白い紙コップを渡す。
喋るのが辛いほど、口の中を切っていた筈。
濯いで吐き出されたポーションは真っ赤だった。
「飲み終わったら、もう一度顔を診るよ。」
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顔のケガを見ながら、聞かない方が変だ思われる事がある。
女の子の心の傷を確認するためにも聞いてみる。
「さっきの緑色の奴に殴られたの?」
・・・思い出したのか涙声に変わる。
「追っかけて来た人・・・」・・・本当ひでぇ事しやがる。
安心させる為にも、そいつが既にいない事を認識させる。
「その人なら、もういない。2度と現れない」「本当?」「あぁ。絶対にだ」
心配無用な心配事は確実に消しておかないといけない。
「暫くは顔が腫れちゃうかもしれないけど、ちゃんと治るから。」
頭部の部分も見る。緑色の化け物に押さえつけられていたが、
大丈夫なようだ。男が殴った所の方が酷かった。
「顔の薬は後で塗るね。」
「背中を診るよ?立てる?」・・・フルフルと首を振る・・・「う・・・」
・・・何やら気にしてる。「足?見せてくれる?」・・・恥ずかしさと恐怖?
少し間を置いて、裾をつまんで立膝を移動し、踏んでいたスカートの
位置をずらして隙間から膝から下の足を出してくれた。
失禁していた為、スカートの後ろは特に濡れてしまっていた。
恥ずかしかったのもあるのだろう。・・・言う事聞かないと、何されるか
分からないから、いう事を聞いたのか・・・(これは配慮が足らん。)
「ありがと、ちょっと診るね?」、そう言って後ろに回る。
スカートがまだ邪魔な所は少しめくり上げて、足先を見る。
おそらく逃げた時、靴が脱げて、それでも必死に森の中を
逃げたのだ。汚れて傷だらけだった。剣の切り傷もある。かなり酷い。
(あのヤロー・・・何度殺しても足りないわ・・)
健も切れてるじゃ?。これでは歩けない。
先程使用したレアアイテムの効能は派生していない。目的の部分、
頭部と顔は殆ど完治している。用量的には問題は無かったといえる。
要するにレアアイテムの用量は切れていて、他の部分に悪影響が
出ていないという事だ。異物が入った状態で治されては困る。
「酷いケガをしているから、今少し治すけど、痛いんだ。
我慢してくれる?でないと歩けなくなっちゃう。」
女の子は頷いたがオロオロしていた。 周りに座れる場所は無いか、
見ると丁度、寝かせている姉の隣に腰掛できるほどの木の根がある。
女の子が抵抗する間もなく抱え上げて、そこに女の子を置いた。
「少し我慢してね」と言った後、スカートを足が見える位置まで
上げて、クリップで止める。鞄から袋を取り出し、麻酔薬と消毒液を
混ぜた生理食塩水を袋の中に生成する。それを足に大量にかけて
汚れを洗い落としていく。女の子は痛みに耐えている。
土や小石やら、突き刺さった木片など、邪魔な異物を取り除く。
部分高位治癒術を掛ける。切っている部分は瞬間接着剤。
健の再生構築など、少しは回復させているが怪我の元が酷すぎて、
さすがに歩ける状態にまでは戻せなかった。
直ぐに歩けるのは異常である。
包帯を足に巻いてテーピングで固定し、足の応急処置を終える。
「背中を診るよ?」「うん」、座らせている木の根の後ろに行く。
少し背中にかかる髪の毛を前にしてもらう。
露出した背中は化物が服を引きちぎった際に傷がついたのだろう。
深くはないがそれでも傷だらけだった。
「汚れを取るから、目を閉じていて」そう促すと、消毒液と少し香を
付けた蒸しタオルを使い頭にかける。「髪の毛が汚れているとね、
背中に落ちてきちゃうから、簡単だけど綺麗にするよ。」
そう言って頭を拭く。
「次は背中だけど浸みると思う。」頭のタオルは頭に被せたまま。
消毒液と解毒剤・生理食塩水を生成し、体温以上に温める。
それを別のタオルに含ませ、軽く押し当ててから背中を拭いていく。
簡単に確認できない位置だから、治癒術を使い、ほぼほぼ治してしまう。
「・・・これで良しっと。」
ようやく大方の治療を終えたのだった。