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宇宙人いないと思ってる? ――私立淑聖女学園オカルト相談部――  作者: 自己満足(みずみみちたり)
戦慄‼ 驚異の予知能力‼
5/6

”5” 怖い話はまず雰囲気作りから

バウムクーヘンを食べました。

美味しかったです。




 時刻は夜の十時。

佐々木早霧ささきさぎりは今、友人ふたりと学校にいる。

 あらかじめ開けておいた教室の窓から、その矮躯わいくな身体を滑り込ませ、侵入したのだ。

 なぜそんなことをするのか?――というのは愚問だろう。少年少女は誰しも肝試しをする運命にあるのだ。



「早霧ちゃん……そろそろ帰らない?」

 早霧の友人のひとり――めぐみが、怯えるように早霧を盾にしながら、その袖を引っぱる。

「慈ちゃん暑いから離れて――もう、大丈夫だってば。“六個目までは”全部出鱈目デタラメだってわかったんだし」

 “六個目”というのは、この淑聖女学園の七不思議のことだ。

  彼女たちは今の今まで、『喋る肖像画』、『歩く二宮金次郎像』、『トイレの花子さんならぬ太郎君』などの七不思議を、その召喚法に則って実験していた。


「で、でもぉ……」

「そんな声出さないの」

 音を上げる慈に、千歳ちとせは厳しく当たった。



 三人は横一列に並んで廊下を歩いていた。

 皆懐中電灯を持ち、歩みを進める。

 どうやら見張りは職を全うしていないようで、彼女たちは思う存分校舎を徘徊することが出来た。



 冷たい空気。冷たい校舎。

 もう冬か、と千歳はポケットに手を突っ込みがてら思った。



 その後しばらくは無言で校舎を歩いた。

 校舎が暗いだけに、やけに外の景色が明るく見えた。

――早く帰りたいよ……。

 慈はそう思った。


 思ってみれば妙な光景だ。普段人の熱気で溢れ返っているはずの校舎が、まるっきり無人である。

――まるで世界に私たちしかいなくなっちゃったみたい……。

 と、慈が思い、

――少し感傷的な雰囲気ね……。

 と、千歳が感じ、

――まるで貸し切りのディズニーみたい。

 と、早霧がはしゃいだ。



 渡り廊下を過ぎ、角を曲がった所に、階段はあった。こちらは旧校舎なので、手摺もついておらず、年季の入った印象を受けた。

「きゃっ!」

 と、慈の声。

千歳と早霧が驚いて横を見ると、


「じ、G!Gが出たぁ!」

「爺? 仙人でも出た?」

「そんな七不思議あったかしら……」

「何ふたりともふざけてるの⁉ Gが出たんだよ!」

「G? ……やだー、慈ったらエッチな事考えてるの?」

「自慰じゃないよ!」

「もっと部分的な名称で」

「Gスポットでもねぇよ!」


 あまりのパニック状態に、珍しく口調が崩れてしまった慈。彼女は、尻餅をつきながら、すぐ近くの床を指し示しながら怯えていた。

 かささささっと、黒い小さな物体が廊下を駆け巡った。

「きゃーー!」

 失神しそうな勢いで、慈は悲鳴を上げた。


「なんだゴキブリか……」

 早霧が呆れたように言う。

 ゴキブリはしばらくすると去っていった。



「もうだめ……私もうここにいられない……」

「しっかりしてよ慈ちゃん……どのみちさっき来た道を戻るんだからさ……」

 慈に背中を掴まれながら、早霧は言った。それに冷たい視線を送る千歳。

 軋む階段を下り、踊り場。


「さ、着いたよ」

 と、早霧が鏡の前に立った。

「な……何もいない?」

 と、不安げに慈は肩から鏡を覗いた。

 そこには、彼女たちの姿が反転して映っているだけだ。

 窓からの月明かりに、自分たちの顔が怪しげに光る。


「な、何もいないんだったら帰ろうよぅ……」

「待って」

 千歳が言った。

「今から儀式を始めるから、慈は黙ってて」

「ぎ、儀式って……」

「いいから」

 厳しい口調で言われ、こくこくと頷く慈。



 七つ目の七不思議。

 ――それは、深夜十時に鏡の前で呪文を唱えると、“鏡の向こう側”の自分に、引きずり込まれてしまう、というもの。

 これ以上慈に怖がられても困るので(というか何でついて来た)彼女に入っていないが、早霧の頭の中にはしっかりと情報がインプットされていた。



「それじゃあ、いくよ」

 と、早霧は深呼吸をした。

 右手の人差し指を鏡に付ける。鏡の中の自分と指を合わせているわけだ。


「鏡よ鏡……そこにいるのは誰?」

 その瞬間、鏡が光った。

 


 



次回もまた見てくださいね。

じゃん、けん、ぽん。

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