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宇宙人いないと思ってる? ――私立淑聖女学園オカルト相談部――  作者: 自己満足(みずみみちたり)
恐怖‼ 突然現れた謎の”痣”‼
2/6

”2” 脛に痣が出来れば自殺もしたくなる

読んで頂きありがとうございます。

ブクマ・ポイント・乾燥……(タイプミス)感想等々、よろしくお願いします!

「わ、私……三島帆波みしまほなみっていいます……」

 と、その少女は俯き加減に名乗った。

 肩までしかない髪型の割には、ひどく前髪だけが長かった。陰になって表情はよく判らないし、とっつきにくい雰囲気から、どことなく暗い印象を受けた。



 今僕と仲倉と三島さんがいるのは、学校の近くにある喫茶店、『DCJ珈琲』。淑聖女学園に通う生徒たちの隠れ家的なお店だ。

 店内は中高生でも入りやすいように工夫が凝らされており、照明もインテリアも程よく洒落たものだった。流されている音楽も今若者で流行りのK-POPらしかった。

 仲倉と三島さんは丁度店名の書かれた窓のすぐそばの二人席に座っている。当たり前だが店員に僕の存在は完全に無視され、仕方なくすぐ横で幽霊らしく(守護霊?)浮かんでいるというわけだ。



「一年生って事は私たちよりふたつ下ね」

 反射的に先輩風を吹かせる仲倉に、三島さん(今更だが後輩に“さん”付けというのも変だ)は首を傾げた。

「『私“たち”』って、誰の事ですか?」

「あ、いや……」

 あからさまに戸惑ったような仕草を見せる仲倉。

――演技下手だな。


《適当に誤魔化せ》

 と、僕は仲倉に呟いた。

 当然だがこの声は仲倉にしか聞こえない。幽霊というのも物悲しいものだ。


「た、たちっていうのは……その、私って超能力者だから……」

「だから?」

「ちょ……う能力者ってのは精神病んでる人多いから。――わ、私実は二重人格なの」

「へ、へぇ……なるほど」

 一応納得はしてくれたが、これは嘘を疑われるよりも避けたかった反応だった。

 周りの客や店員たちが訝しむような視線を向けてくる(平日の真昼間に喫茶店でSF話に花を咲かせる女子学生。――そりゃ目立つわけだ)。


「具体的には、どんな超能力が使えるんですか?」

「うん……試してみる?」

「い、今できるの⁉」

 三島ちゃん(こっちにしよう)は、まるで鉄道模型を前にした少年のように目を輝かせた。

「そうねぇ……具体的には……」



 あなたは今、急に体中に現れた“あざ”について悩んでいる



「――ってことが判る能力、とか」

「…………凄い」

 呆けたような顔で、三島ちゃんは固まってしまった。



 読心術。

 この能力は、文字通り相手の心を見透かすことの出来る技術のことを示す。

 一般人でも極めることは可能だが、仲倉の場合それが天性のもので、しかも精密さのレベルが桁違いなのだ。

 一言一句逃さず、相手の考えていることが瞬時に理解できるのだ。

 仲倉によれば、やろうと思えば世界中どの言語圏に属す人間とも会話ができるらしい。

 いわゆるこれはテレパシーの一種なのかもしれない。



 それにしても。

――痣?

 

痣、痣……。


 打撲などの負傷をした際に、一時的に皮膚が青黒く変色する、あれか?


 しかし、その怪我の記憶がないとは、――どういうことだろう。


 しかも一ヶ所ではなく、――全身。



《おい仲倉、どういうことだ。説明してくれ》

 すると仲倉は片目でウインクするように僕の方に一瞬だけ目配せした。



「痣が現れたのは何日くらい前から?」

「えっと……三日くらい前です」

 三島ちゃんの回答を聞き、仲倉は「でしょうね」という顔をした。――実際、彼女にははなからすべて理解できているはずなのだ。この問答は僕への気配りだろう。


「今、痣のある個所かしょは?」

「顔以外は、ほぼ全部……」

 すると三島ちゃんはちょこっとだけ左手の袖をめくり、仲倉にその素肌をあらわにした。

 仲倉は一瞬だけ顔をしかめると、「もう結構」というように右手で制した。


 何が見えたのかは、容易に想像が可能だった。


「痣は、痛い?」

「はい……でも、普通に打撲したのと変わらない痛みで、それほど強烈なわけではありません」

「痣は三日前より進行してる?」

「いえ……むしろ治ってきてるみたいなんです」

「……判ったわ。ありがとね、わざわざ」

「いいえ、こちらこそ。――助けていただいて」

 三島ちゃんは相変わらずの俯き加減で軽く頭を下げた。



「一応……なんだけど」

「え?」

 帰り支度を始めた三島ちゃんに、仲倉はいきなり声を掛けた。

三島ちゃんは少し驚いたような反応を見せた。

「自殺しようとしたのは……それが原因?」

「え……はい。――そんなことでって思われるかもしれませんが」

「…………」


 自分の身体にある日突然起こった、不可解な現象。

 ――それは、死のうと思うには、充分な理由だろう。

 ましてや彼女のようなもろい思春期の少女ならば、なおさら。


「病院で診てもらっても、何も判らなくて……」

 三島ちゃんは、不安そうに両手の指を絡ませた。



 しばらく三島ちゃんに雑談を交えながら詳しい事情を聴き、お茶と軽食を済ませ、その日は解散となった。

 三島ちゃんが消えた直後、僕は仲倉に訊ねた。

《なあ仲倉》

「うん?」

 周りに不審がられないよう(といっても手遅れかもしれないが)、仲倉はなるべく声のボリュームを控えめにして答えた。

《お前、今日はもう学校いいのか?》

「……………………」

 仲倉は少し思案するように顎に右手を添えたが、その返事は最初から決まっていたように思う。


「サボる」



         *



数日後、事前に住所を聞いていた仲倉(と僕)は、三島ちゃんの宅を訪ねることにした。

 

《来てどうするんだ?》

「痣をこの目で確かめるのよ……ほら、喫茶店だと全身は見られないじゃない」

《まぁ、そりゃそうだ》

「そのときは、あなたは他の部屋に行っててよ」

《はいはい》



 ポケットに手を突っ込みながら、地図を片手に、歩みを進める。

 集合住宅地に建つその家は、たしかに豪華とまではいえないかもしれないが、一般的な中流家庭の家宅というような感じだった。

 表札には、しっかりと、『三島』の文字が。

 白く塗られた玄関の壁に、茶色の直方体が浮き出ていた。その中心にあるボタンを押すと、ピンポーン、と音がし、三島帆波の母親らしき人物の声が聞こえた。


『はーい』

「あの、帆波ちゃんのお宅ですか?」

『はい、そうですが……』

「実は私た……私、帆波ちゃんの部活の者なのですが……」

 仲倉が機転を利かせる。

 すると案の定。

『ああ、先輩の方?』

「はい」

『わざわざすいませんね………………』

 随分と含みのある言葉だった。

 娘のことが気掛かりなのだろう。



しばらくして扉が開き、三島帆波の母親が現れた。実年齢の割に若々しく温厚そうだが、その目の下には谷が出来ており、疲労の程がうかがえた。

「どうぞ中へ」

「失礼します」

《失礼します》

 聞こえなくとも返事はする。


「今お茶を持っていきますから、先に娘の部屋へ行っていてください」

 と言い残し、母親は去っていった。

 帆波ちゃん(この呼び名でもう決定だ)の部屋はどうやら三階にあるらしい。

 質素で狭い螺旋階段を上がると、三階に着いた。左右に扉がひとつずつあり、片方に『ほなみ』と書かれた札が下がっていた。



 仲倉は僕をちらっと見ると、ノックをした。

「すいません、仲倉です」

『あ、はい。どうぞ』

 中から返事があったので、仲倉は躊躇ためらいなくドアノブを回す。


 そこには上下下着姿の三島帆波がベッドに腰掛けていた。


「な⁉」

《な⁉》

 ドアを閉める。


「ちょ、帆波ちゃん⁉」

『な、何ですか⁉』

 仲倉はドア越しの後輩に叫んだ。


「服着て服‼」

《そうだ服だ‼》

『何でですか。――仲倉先輩女子だからいいじゃないですか! ――それとも……』

「それともない‼ 仲倉先輩は女子よ‼」

《ああ僕が保証する。――仲倉は女子だ‼》

『ならいいじゃないですか』

「ダメなの!」

《ダメだ!》



 ふたり(正確には聞こえているのはひとりだが)の先輩に圧倒され、「判りました……」と、帆波ちゃんは渋々要求に応じてくれた。



         *



「というわけで……」

 と、仲倉は仕切り直すように手を叩いた。

「どうする?帆波ちゃん、これから。――気晴らしにゲームでもする?」

 仲倉は下着から部屋着に着がえた帆波ちゃんに訊ねる。



 帆波ちゃんは部屋に差し込む明るい日差しのせいなのか、心なしかこの前会った時よりも血行が良くなっているように見えた。

相変わらず前髪で表情は判らないが。



「あの、それより……」

「ん?」

《ん?》

「見なくていいんですか? 痣」

「え?――ああ、いいよいいよ。もう。――実はさっきちょっとだけ見えちゃったし」


 そう。さっき、下着と一緒に、実は全身の痣も見えてしまったのだ。とはいえ、治り始めているというのは本当のようで、あの様子だと、あと一週間もすれば痣は跡形もなく消え去るだろう。



「じゃあ、ゲームしよっか」

「そうですね」

《僕は何をすればいいんだ》


 ふたりがさっさとスマホを取り出し、僕が暇を持て余しているところに、ドアのノックが鳴った。

『入っていいかしら?』

 帆波ちゃんの母親の声だった。

僕と仲倉は、てっきり飲み物を運びに来てくれたのかと思った。


「入っていいよ、ママ」

 

 しかし、開いたドアから現れた母親の手に、盆は乗っておらず、代わりに電話が握られていた。

 先ほどと打って変わって真剣な表情に、その場にいる全員が身構えた。

 母親はただならぬ面持ちで、こう言った。


「陰陽師の方が来て下さるそうよ」

 


次回も宜しくお願いします!

ブクマお願いします!

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