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俺と昔話

 俺が急に向いたせいでお婆ちゃんが何事かと困っている。困らせてしまって申し訳ないが、こっちも信じてもらえるように真剣だ。顔を引き締めて真っ直ぐ前を向いて口を開く。


「お婆ちゃん、シャム、これから見る事起こることを全て内緒にして欲しいんだ。約束してくれますか?」


「いーよー」


「ああ、わかったよ」


 あっさりと承諾する二人に俺は驚く。急にこんなこと言われたら、疑うものじゃないのか? 俺がおかしいのか?

 二人に戸惑いつつも俺はアルクについて説明する。


「……信じてもらえないかも知れませんが、ここにいるアルクは竜です。お婆ちゃんには、竜血を飲んで欲しいと思います。どうしますか?」


 一昔前に、竜血と言いながら別の生物の血を渡すという犯罪が起きた。この世界の生物は同じ生物以外の血を受けつけない。そのためその事件では人を思ってやった行動が、その人に劇薬を渡す行為になってしまった。

 それ以降人々は竜血=偽物と思うようになったのだ。まあ、元々竜の強さから竜血が出回ることは滅多にないのだが。


 つまり何が言いたいかというと、二人が俺の言葉を信じなくても仕方がないのである。

 

「いえ、竜血は結構ですよ」


 ……まあ信じられなくても不思議はない。


「これ以上もらったら、もらいすぎになっちゃいますよ」


「え、信じられないじゃなくてですか?」


「救ってくれた貴方をなぜ信じられないのですか?」


 にっこり笑うお婆ちゃんに呆気にとられる。器がでかいとかそんな問題じゃない気がする。

 ……きっとこの人はこの世界を色々見てきたんだ。この世の良いところも、悪いところも。その上で、色んな物を取捨選択してきて今ここにいるんだろう。

 この人を見ていると、そんなことを漠然と思った。


「あの、俺じゃなくて、アルクがお礼したいと言ってます」


「まあ素敵、ジグロさんは竜と話せるのね。 どうしようかしら……。じゃあ私のお願いを聞いてくれるなら良いわよ」


「お願いとは……?」


 お婆ちゃんは少し考えていたが、直ぐにまた微笑んできた。


「私とシャムの話を聞いてくれるかしら?」


「お婆ちゃん!?」


「本当にそれで良いんですか?」


 きっとお婆ちゃんがそう言ったのは、俺が疑問に思った事が伝わったのだろう。


ーーーなぜ、猫耳族と人間が一緒にいる?


 家に来たとき最初に思った事だ。てっきり、シャムがお婆ちゃんと言っている事から、お婆ちゃんも猫耳族だと思っていた。

 それに気付き、尚且つお願いで教えてくれるとは。


「ええ、じゃあ話そうかね」


 お婆ちゃんは目を細めながら語り出した。






 今から20年前、私は家へ帰ろうとするときある夫婦と出会った。その夫婦はスカーフらしき物で隠された顔から目だけをだし、ひどく急いでいることが印象的だった。


「どうかなされましたか?」


 話しかけても、返事は返って来なかった。けれど、夫婦は私へ体を向けた。


「……」


 その夫婦の奥さんがが手を出してきたことで、私も思わず手を出すと手にはずっしりとした重み。何事かと思い驚いている間に夫婦はまた道を歩き出す。渡してきたものについて聞こうと思い追いかけても二人の歩みは速く離れていく一方だ。


 私はまた戻って来るだろうと思い、あきらめて夫婦が渡してきた物を見る。


「っ!」


 そこには小さな、小さな命があった。どうすべきか悩んだが、とりあえずこのまま突っ立っていてもと思い家に向かう事にする。


「すみませんちょっと良いですか?」


 その途中、ニコニコと笑う男に話しかけられる。その男は紳士な見た目のわりに、なぜか嫌な感じがする。


「あちらから来たようですがこっちへ来る途中不審な二人組を見ませんでしたか?」


 何故かその質問がさっきの夫婦の事だと悟り、私は嘘をつく。


「いえ、見ませんでした」


「本当ですか?」


「変な事言いますね。初対面でなぜ嘘をつかなきゃいけないんですか?」


「……それもそうですね。失礼しました」


 男はそう言うと恭しく礼をしてから、あの夫婦が行った方へ向かっていく。


 それから、夫婦は戻って来なかった____。

たぶんこれから更新遅くなります。


そろそろシャムの話も終わりです。

今日もお読み頂きありがとうございました。

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