俺のペット
シルフの風にのって先程見えた飛竜の元へとたどり着く。
目の前の飛竜から目を離さない様にしながら、俺は今朝聞いたアナウンスを思い返す。
―――今日は火口に凶暴な飛竜が現れたので登山はお止めください。
(こいつのことだな。この覇気……、まともなモンスターはこの場にいないだろう。いや、いれないか)
今頃になって、ダンジョンのモンスターの少ない理由を理解する。
『―――――』
目の前の飛竜は俺に何か言っているが、あいにく言葉がわからない。……仕方ない。
「スキル:言語能力ON」
俺はスキルを使い、飛竜の言葉に耳を傾ける。
『人間よ何しに来た? また、場所を奪おうとでも言うのか?』
「いや、違う。俺はお前に棲みかに戻って欲しいだけだ」
『戯言を。そう言ってお前ら人間は嘘をつく』
「どうしたら信じてもらえる?」
『ふん、無理だな。これ以上の会話は無駄だ。早く立ち去らねば、その喉元噛み千切るぞ』
飛竜に何があったのかわからないが、全く聞く耳を持たない。むしろ話せば話すほど、目の前の飛竜は怒っていく。
「確かにこれ以上の押し問答は無駄そうだ」
『わかったならばさっさと去れ』
「力を使わせてもらう」
一応宣言をして俺は力を使う。
『ぐぬぅ、何を!? 頭に何か流れ込んでくる……!』
「スキル:シンクロだ。俺の思考をお前のもとへ、お前の思考を俺のもとにやった。言葉だけでは信じてもらえなそうだからな」
飛竜は俺の言葉を信じたのか静かに目を閉じ、思考に意識を向けてる。
その様子を確認して、俺も飛竜の膨大な記憶や思考がこぼれ落ちない様に集中する。
思わず流れ込んでくる飛竜からの情報に耐えられず、顔をしかめた時だった。
長く、長く続いたシンクロがぷっつりと途切れた。目をうっすらと開けると、飛竜が澄んだ目で俺を見ていた。
『……確かにお前に悪意は無さそうだ。
しかし、他の人間はそうとも限らんだろう?』
飛竜の言うことはもっともで、俺は否定ができなかった。俺がシャムを置いてきた原因もそこにあるからだ。
現在、ドラゴン=討伐対象 という考えが強い。ドラゴンを討伐するとドラゴンキラーという称号が付くだけでなく、一気にB級入りや、褒賞金が出るからだ。
シャムはどう考えるかわからないが、きっとこの飛竜は武器を持ったら一瞬で殺しに来ただろう。
「そうだな。ただ、人間の立場から言わせてもらえば怖いのさ。お前らモンスターの事を知らないからな。知っているのは噂だけ」
『怖い、か。ふむ、確かに我らも人間の事を武器を持ってくる野蛮な奴だと思っていたが、確かにお前のような奴がいた』
「きっと、他にも似たような奴が知らないだけで多くいるさ」
俺の言葉で飛竜がごろごろと喉を鳴らす。笑っているのだろうか?
『興味深い、実に興味深いな。我は暫くお前の元で人間を知ろうとしよう』
「ん?? 何だって? お前の元でってそんな大きい図体で何言ってんだよ!?」
『ふむ。つまり小さければ良いということだな?』
飛竜の発言とともに、ぼんっと音がした。すると目の前の飛竜が消えている。
正直、良くない予感がする……。
「あれ、飛竜!? どこ行った」
「キュイキュイ!」
可愛らしい声に反応すると、足元で俺の服を軽く摘まむ小さなドラゴン。
その体は七色に輝いている。
「も、もしかして……」
「キュイ!」
可愛らしく鳴く声は飛竜のものだった。
「駄目だ。ドラゴンを家に連れて帰れるわけないだろ!」
「キュイ~~」
俺が飛竜へ反対すると、目を潤ませて切なそうに鳴いてきた。悔しいがとても可愛い。
(人間を知らないって言ってたの、どこのどいつだよ! あざといわっ!うぅ、首を傾けるな。人間のツボ理解しすぎだろ~!)
脳は駄目だと言っているのに、体が勝手に飛竜を抱き締める。
「ぅ、家へ来るか?」
『その言葉忘れるでないぞ?』
「さ、詐欺だぁーーーー!!!」
俺の叫ぶ声が森に木霊した。
こうして俺は飛竜に騙されて家へ連れて帰ることになった。
* * * *
* * * *
肩に飛竜を乗せてシャム達の元を目指す。もうすでに飛竜に乗られている右肩が痛い。
……そういえば子供の時に会った異世界の勇者が言ってたな。
モンスターを仲間にして戦う奴がいたって。そいつを勇者は週一で見てたって。あのときはそんな奴いるはず無いし、週一とかどんな目立ちたがりだよって思ったけど、実際自分がなってみるとわかる。
その人は目立ちたがりだったんじゃない、人目についてしまっただけなんだ。俺はあなたのメンタルと肩を尊敬します。ええっと名前は確か、さ、サトゥシーさん。
そんな事をぼんやり考えていると、いつの間にかダンジョンの一層に戻っていた。
お読み頂きありがとうございます。さて、勇者の話ですが何の事かわかりましたか??ジグロはサ○シを実際にいる人物だと思って尊敬しています。魔法や精霊がある世界に住んでいるのでね。私たちの世界でやろうとすれば、せいぜい猫を肩にのせるぐらいでしょうか?
読者さんが飛竜好きになれば良いなーー。