俺と御伽噺
いつもより短いです
今俺の目に映っているのはまるで夢の中のような光景。レオが指を動かすとそれに合わせたように目の前で本が動き出す。精霊たちが手伝っているのかと思って確認するが、そんなことは無いようだ。信じられずパチパチと瞬きを繰り返しても、見える光景は変わらない。
初めて見る魔法に胸が高鳴り、わくわくが止まらない。もっと、もっとしっかり見たい! 俺はぐっと体を近づけ食い入るように眺める。
「やや、こんな初級の魔法をまじまじ見られると恥ずかしいね~。魔法を見るのは初めてではあるまいに」
「ううん、たぶん初めて! ってあれ、何でレオの指光ってるんだ?」
困った様にレオに話しかけられたため本から視線を移すと、何故か指先が光っていることに気付く。それについて聞いてみるとレオも顔を下に向け自分の指を確認する。
「……光ってる、のか?」
「え??」
困惑したように自分の指を眺めながら、レオは確認するように聞いてくる。どうしたというのだろう? 確かに見えづらいがしっかりと光っているというのに。
「レオ兄さん、ぼんやりですが確かに光っています。とは言ってもジグロに言われて初めて気づきましたが」
レオはヨーゼの言葉で少し目を見張るが、それも一瞬でその後には何故か納得した顔をしていた。
「ふんふん、ほーん、なるほどねぇ。おいらには全く見えないけど二人には見えているのか。……これが愛された奴らとの差かなー」
「愛された奴ら? もしかしてヨーゼも精霊に愛されているのか!?」
レオの言葉に反応してヨーゼへ勢いよく顔を向ける。しかしヨーゼは笑いながら違うという風に手を左右へ動かす。
んー、でも確かに『愛された奴ら』って言ったよな? 他にも愛してくれる何かがいたりするのか?
「はいはいはーい、考え込まない。ほら、今日はそのことについても触れるからちゃんと一緒に勉強しよーな」
レオはそう言ってまた指をすっと動かし、俺の前に本を開いて置いた。本をぱらぱらと捲ってみると、全てのページに絵が描かれており華やかだ。
「これは? なんかいっぱい絵があるけど……」
「これは絵本だぞー? 中にはこの世界に伝わる御伽噺が書いてある。あっ、そだそだ、文字は読めそーか?」
「読める……と思う」
「お、上出来。でもまあ今日はおいらが読むからジークは絵を見ながら聞いてなー」
レオは俺の頭をクシャっと撫でると、目を閉じながら楽しそうに語り始めた。
* * * *
* * * *
むかしむかし、まだこの世界ができる前のこと。ある世界に全ての種族が暮らしていました。神から魔族、様々な種族が一つの世界に住んでいたのです。その世界はとても広く、魔力に溢れ、活気があり、とても綺麗で素敵な世界でした。
かつてその世界に人間も住んでいましたが、大変苦しみながら生きていました。なぜならその世界は力のあるものが上に立つ世界だったのです。
人間たちは非常に賢かったため生き残っていましたが、力に支配され生活の自由はほとんどありません。物を作ったら搾取され、土地があったら追い出されと、その世界で一番酷い扱いを受けていたのです。
『いつか人間は滅ぶだろう』
そこで暮らす誰もがそう考えたとき、その姿をみて行動するものが現れます。
それは心優しき神と人間を愛した精霊たち。力の世界でも上位の存在である彼らが、苦しむ人間に手を差し伸べてくれたのです。彼らは人間のために、力を持たぬ者たちのために力を使い、とある世界を生み出します。
それこそが今暮らすこの世界。何より平和で、豊かな世界_____。力を持つ者たちだからこそできる助け方でした。
お読みいただきありがとうございます。
ステータス開示に続き今回もジグロの暴走は止まらない! 早く彼に常識を教えてあげてあげなきゃと思いながら執筆しています~。では次話もよろしくお願いします!
ブクマ、評価ありがとうございます。ありがたいです!
【お知らせ】
・閑話『俺の休日』ですが、相手様の都合(改稿等)もあり、数日後に削除させて頂きます。気に入ってくれていた方々には申し訳ないですが、ご了承ください。
・私事ですが数日間入院する関係で、英雄は。の更新遅くなります。今話も短くなってしまい申し訳ないです。




