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俺と王様

 連れていかれた部屋は無数の装飾によって煌びやかに輝いている。その目が眩むような華やかさに居心地の悪さを感じつつ、俺は用意された椅子に少し体を沈ませて伺うようにそっと周りを見渡す。


 まず俺の横あたりには、一緒にここまで戻ってきた兵士たち。列を乱すことなく、1列に並んでいる。

 前を見ると、2人の白髪の男と黒髪の女が黒い皮の椅子を囲むように立っていた。


 そして、その椅子に深々と腰をかけこっちをみる金髪の男。

 聞かなくても雰囲気でわかる。この金髪の男がこの場の絶対的支配者。


 この国の王だということが。


 俺はふと王の隣に立つ白髪男と目が合う。すると男はひらひらとこっちに手を振り、歩みよって来た。そして俺の頭をポンポンと触り、八重歯を見せて笑った。


「そんな緊張しなくていーよー。

ねえねえおーさま、この子へ質問するのおいらがしてもいい?」


「ああ、構わん」


「へへー、ありがとうですー。さぁて、じゃあ最初の質問! 君の名前は?」


「……ジーク、ジーク=ロイゼです」


 上手く声が出ない。緊張のせいか喉が渇く。俺の声は上手く出ているだろうか?


 俺の心配とは裏腹に部屋が少しざわつく。


「ロイゼ姓!」

「やはり森の賢者か」

「あんなところにいたなんてな……」



 パンパンッ!



 ざわつきに対して黒髪の女の人がたしなめる様に手を叩く。兵士たちは口をつぐみ、また静かに並んだ。


「勝手な発言は許しません。今は王がいるのですよ」


「アンは相変わらず堅いなぁー。そんなんだから嫁に行きお」


 白髪の男が言葉の続きを言おうとした時、部屋の気温が一気に下がった。けれど部屋に何かあった訳では無い。ただ女の人が真っ直ぐ男の人を見て、綺麗に口角を上げているだけ……。


「レオ、今王がいてよかったわね。じゃなきゃ、ね?」


「はい、すみませんでした……」


「はぁ〜、全く。ごめんなさいね。これからはあのアホに変わって私が進めるわ。ジーク君の歳はいくつ?」


 アンと呼ばれた女の人はさっきの男の人とは違い、俺を観察するように見てきた。それもあからさまに。口調が優しいだけに余計怖い。


「き、昨日で七歳になりました」


「あら、じゃあステータスはどのくらいなのかしら?」


 俺は女の人の言葉に首を傾げる。すてーたすという言葉は初めて聞いた。この国の常識なのだろうか?

 何気ない質問でさえ俺は文化の差を、違いを感じる。

 俺が黙ったまま首を傾げていると、兵士たちと横で並んでいたヨーゼが口を開いた。


「……勝手な推測にはなりますが、賢者の森にはステータスという概念は存在しないのではないでしょうか?」


「なるほど、あの村は古くから外部との関わりを絶っているからねー。こっちの常識が通用しなくてもしょうがない」


 そう言って白髪の男は納得し、軽い足どりで部屋を出て行ってしまう。俺が出て行った扉を眺めていると、後ろから声がかかった。


「気にしなくてもまた戻ってくわ。きっと判別の書を取りに行ったんだわ」


「判別の書?」


「ええ、ステータス確認の時に使う物よ。この国では6歳になると自分のステータスを確認する決まりがあるのよ。

さて、そんな事よりそろそろ本題に入りましょうか。賢者の森で何があったのかをね」


 黒髪の女の人は、そう言ってまた綺麗に口角を上げた。けれど俺を写す目は全く笑ってなかった。

 俺の目はその後ろで静かに話を聞いている王を視界に写しつつ、ヨーゼに話した事を女の人にも語るのだった。







「それで話を聞く限り、あなたがその精霊の庭だかに行っている間に村で何かあったのね。そこまではまあいいけど、あの光の柱は何かしら?」


 まただ、また光の柱の話。俺が知らない、俺だけが知らない話。

 俺は精霊王に言われた通り、女の人に言う。


「あれは精霊王がやりました」


「そう……。私たちはこれから君からできるだけ多くの事、本当の事を知っておきたいって思ってるの。

そのために君の脳内をスキルを使って見たいんだけどいいかしら? もちろん見てる時に村を襲った犯人の事がわかれば協力するわ」


 俺は最後の一言に心を惹かれる。

 正直俺一人では見つけられないかもしてない。そう思っていたからだ。

 けれどそれは俺が光の柱を知らないという事も伝わる。


 けど、それでも


「よろしく、お願いします」


「協力ありがとう。それじゃあスキル:シンクロ」


 女の人がそう呟いて俺の頭に触れる。いや、触れようとした。

 しかしあと数センチというところで、バチッという音とともに火花に似た何かがはじけた。


「……ッ、ウソ、でしょ。スキルは生まれた時から持ってる固有のものよ。魔法と違って失敗する訳が!」


 女の人の指先は赤く腫れ、少し血が滲んでる。それ程までの反撥が手を伸ばしただけでなる、そんな異常な状態。

 あたりは混乱し、俺はどうすることもできずにその場で固まる。


 そんな場を元に戻したのは重そうな扉から入ってきたあの白髪の男。


「んー、なんかあった感じー?」


 その言葉で今までただ動向を眺めていた王が言葉を発する。


「兵士たちの中で誰か一人アンを医務室に連れて行け。ヨーゼを残し後の兵士たちも訓練に戻って良い。この後はレオによってジーク=ロイゼのステータス開示。以上だ。」


「「「はっ!!」」」


 王の言葉で兵士たちは敬礼をして部屋の外へ出ていった。

 王は部屋の扉がギィィと音をたてて閉じていくのを横目で見ながら、俺に向かって初めて声をかけてきた。


「さて、ロイゼ姓を持つ者よ。私は森の賢者である其方に興味がある。其方のことは追追知っていくとして、先ずは手始めにステータスを調べてみようか」


 王は目を細めて()()()を見た。


 その目から孕んでいる感情はわからない。


 けれど()を見ていないことは確かにわかった。


 俺を通して見ていたものはなんだろうか。

お読み頂きありがとうございます。

新キャラも登場しましたね。

レオとアン2人の存在はどういうものか……?


意見感想等お待ちしております。

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