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俺とそれぞれの思考

~そのときのインスワール王国~


 一般兵の俺は重たく動きづらい鎧を身に付けながら、王宮内の警備をする。王宮の警備と言ってもこの国に何かしようとするものはいないため、一般兵の俺はただ王宮を巡回するのみ。

 あくびを我慢しながら、ゆっくりとしか進まない太陽をにらみつける。俺の頭は早く帰ることでいっぱいだったため、太陽の動く速度にイライラしていた。


(鎧重いし熱ぃ……。あぁ、中が蒸れてて不愉快だ。どうせ今日も何もないんだから早く帰らせろよ。王宮は給料いいけど退屈なんだよなぁ)


 しかし、俺の退屈さを無くすほどの事態が警備中に起きた。


 何気なく顔を山の方に向けた時だった。何の前触れも無しに巨大な光の柱が現れ、空へとまっすぐ伸びるという現象が起きたのだ。

 俺は思考が止まるが、体は本来の業務を忘れる事はなかった。体は王のいる部屋に向かって素早くかけて行く。


「失礼します! 東の方角にて突如光の柱を確認いたしました!」


 急いで部屋に駆け込むと、中で王は席を離れ窓辺に立っていた。その様子だと王もあの不思議な光を見ていたようだ。王の顔がこっちへゆっくりと動く。


「ご苦労。して、地図のような物はあるか?」


 王に言われ持ち物を思い返すが、あいにく地図は持っていなかった。王の希望に応えられなかったことに焦りを覚えたとき、気の抜けた声が会話に入ってきた。


「地図ならおいらが持ってきたよ、おーさま」


 そう言ったのは王の側近と言われている左大臣。三十代という若さでその立場に就いている実力の持ち主だ。

 左大臣は軽い足取りで机まで行くと、地図を広げてにっこりと笑う。


「おーさま、準備できました」


「うむ、確か東の方だったな……」


 王はそう言って人差し指を地図の上で滑らせていたが、ある点で動きが止まる。俺は興味からそーっと地図を覗き込むと、そこには何も無い森。不思議に思って首を傾げていると、左大臣が納得したような顔をしているのが視界に入った。


「あ~、たぶんそこですね。おいらが行ってきましょうか?」


「いや、ヨーゼに行ってもらう。ヨーゼはおるか?」


「はい、ここに」


 俺は話の流れに全くついていけず、ただ立ち尽くすことしかできない。ヨーゼ様が現れたことも全く気づけなかった。


「ヨーゼ、兵を20人貸そう。それで何があったか確認してこい。必要があれば行動してくるように」


「兵を20では少なすぎるのでは!?」


 俺は思わず王に意見するも、王と目があったとたんに何も言えなくなる。俺が驚くのも無理はない。だってヨーゼ様は()()になったばかりで、まだ子供だ。


「私はヨーゼのことを信用してそう言ったんだがな」


「……何でもありません」


「そうか。ではヨーゼよ、兵は正門に待機させておく。準備が出来次第向かえ」


 王はそう言うと席に戻り、山積みの書類へ手をつけ始める。俺は左大臣に背中を押され、部屋を静かに出た。部屋の戸を閉じると左大臣が俺に話しかけてくる。


「あそこに何があるか聞きたいんでしょー?」


「……はい。私にはただの森に行けと言ってるようにしか思えませんでした」


「くく、知らない者からしたらそうかもね。そうだなぁ、あそこに()()()()があると言えばわかるかい?」


「け、賢者の森ですか!?」


 賢者の森とは、インスワール王国の都市伝説として良く語られているものだ。何でも王国内にありながらも決して干渉してこない、いや王国が干渉できない不思議な村。どこに存在するかすらわからないが、村人全員が愛し子という話は有名だ。その特異さから別名森の守護者などと呼ばれている。

 俺は賢者の森が存在する事実に驚いていたせいで、左大臣の口から溢れた言葉を聞いていなかった。 


~精霊の庭~


 指輪から、強く願う力が届いてくる。その願い主は先ほど無粋な方法で神殿に入って来ようとした小さな童。


『誰か助けて……! 誰か!』


 その子供は皆が助かるように願っているが精霊の王である自分はあまり他種族に干渉するわけにもいかず、静かに助けを求める(おもい)を聞いていた。

 そんなとき、微かにピシッという音が耳に入ってきた。何事かと思っていると、あの子供の声も聞こえてこない事に気づく。

 

(いや、まさか、でもあの指輪を人間によって壊されるわけない!)


 私は否定しながらも、指輪に何かあったことを思い精霊の庭を出て行く。

 指輪の反応がする場所に向かうと、あの子供は気を失っているようで今にも倒れそうなだった。私は素早く人の形へ変わり、頭を打たないように抱き止めると子供に異変が起きていること気づいた。子供の体からありえないほどの魔力があふれでているのだ。


(なんだこの魔力の量は……。なんだこの魔力の質は)


 倒れている子供の放出している魔力の量は徐々に増え、村を覆っていく。そんな光景は人間の持つ魔力の量からしてあり得ないが、そのとき精霊王はもっとあり得ない光景を見つめていた。

 村の草木の異常な再生、成長、そして___


ドクン!


 音と共に微かに動く人の指先。


「やってくれるわ……!」


 自分の腕の中で倒れる子供は、この世界の理を無意識ながら壊した。死んだものを生き返らせるというこの世の禁忌を。


 この瞬間、精霊王は決意する。


 子供が全ての精霊から愛される様にすると。もう決してこの子供が自分の力を暴走させないように、極力自分の使わないようにするために。


 気絶していたため、少年はまだ何も知らない___。

 

お読み頂きありがとうございます。

ブクマ100件頂きました(* ´ ▽ ` *)

次話はまたジグロに戻ります

今回は王宮は一般兵目線で、精霊の庭は精霊王目線で書かせて頂きました

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