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俺とあのとき

(ここが精霊の庭の中か。入ってみると案外大したことないな)


 足を踏み入れて最初に思ったことは『普通』。他に比べて木が多いような気がするが、特に変わった所がありそうに見えない。入るときにはあんなに不思議な気持ちになった俺の心は、今はただ静かに存在しているだけだった。


(そういえば、精霊の庭に入った後どうすれば良いか聞いてない)


 俺は記憶の中を探っても、欲しい情報は出てこない。暫く考えてもわからなかったため、俺は周りを飛んでいる精霊に話しかける。


「皆この後どうすれば良いか知ってる?」


「この後ハ神殿を見つけるノ」

「ソウ、神殿!」

「そこデ待ってるワ」


 精霊たちは楽しげに舞いながら俺の質問に答えてくれたが、所々わからない事を言っていた。


(精霊の庭に神殿があるなんて聞いたことないぞ。しかも待っている? 何が待っているんだ?)


 俺はとりあえず最初に言われた神殿について聞いてみる。


「神殿ってどこら辺にあるんだ?」


「んー、必要になれば見えるノ」

「思った分だけ近くなるノ」


 聞いてみたものの、また良くわからない返答が精霊達から返って来た。俺は混乱する頭で状況を整理しながら、神殿を目指して歩き出した。



****



「あぁ~、見つかんない! どこにあるんだよ!」


 俺はあの後精霊の庭を3時間以上歩き回ったが、それらしき物は見つからなかった。しかも奥に進んでいるはずなのに、いつの間にか入り口へ戻ってしまう特典つきだ。俺は一度座り込み、土のついた足を休ませる。


(いつになったら見つかるんだよ!いっそのこと神殿に行ってきたふりでもして帰ろうかな……)


 首を動かし村へ続く道を見ていると、よからぬ考えが脳をよぎる。周りには精霊しかおらず、俺を止める者は誰もいない。歩き回って疲れていた俺は、ふらふらと村の方へ歩き出していた。


「ジグロ、どこ行くノ?」


「村に帰る。こんなに歩いて無かったんだ。きっといつまで経っても見つからないに決まってる」


「待っテ、今は」


バシィィイイ!


 精霊が止める声を聞かずに村へ帰ろうとした罰だろう。精霊の庭から出ようとしたとき、急に目の前でスパークが起きた。回避しようと後退するも間に合わず、俺は直撃を受ける。


「痛ぁぁあ!」


「ジグロ大丈夫!?」

「だから止めてたノニ!」

「一度入るト精霊王の許可がないと出れないのヨ」


 精霊の声を聞きながら、俺はまだダメージの抜けない体であることを思いつく。

 それは精霊王への意趣返し。"神殿を見つけるのではなく、神殿にたどり着く"という方法を閃いたのだった。


(早く家に戻りたいのにこんな探索に付き合ってられるか!何で最初に思い付かなかったんだろう。)


「スキル:テレポート」


 心配をする精霊達をおいて、俺は1人神殿に向かった___


 はずだった。


 テレポートしたはずの俺の視界にはさっきと全く変わらない景色が映り、精霊達も心配そうにこっちを覗きこんだままの状態。

 俺は混乱を隠せないでいた。後から覚える魔法とは違い、スキルは生まれ持った能力のため失敗する事はあり得ない。

 動揺する俺に追い討ちをかけるように、突然声が聞こえてきた。


『私の領域に随分無粋な訪問の仕方じゃないか、新しい子よ。こんな呼び出し方されたのは初めてだぞ』


「精霊王様ー!」


 声のする方向を見ると、暖かな光が常に形を変え存在している。精霊達が駆け寄って行く事から、その光が精霊王だということがわかった。


『何を固まっておる?そなた名は何と言う?』


「ジーク=ロイゼ……です」


『ジークか。ジークはここへ何を望んで来た?』


「大人になりに来ました」


『ほう。では大人になった後はどうする?』


 精霊王のその言葉に、俺の口は開かなくなった。今まで焦って大人になると言っていたが、大人になった以降の事は考えてもいなかったからだ。

 

『……少し前に来た者は薬師になりたいと言っていたため、草木と相性の良いノームに()()()()()()()()()。ジークは本当に何もないのか?』


「はい……」


『そうか。ならば手を出せ』


 俺は言われた通り、光に向かって手を差し出す。何が起きるかわからないが、従った方が良い気がしたからだ。


コロンッ___


 手に何かが落ちてきて、俺は落とさない様に握り締める。それからそっと手の力を緩めて中を見てみると、そこには少し大きめの透明の宝石が装飾された指輪があった。


「これは……?」


『大事に持っていろ。欲しい力ができたらその指輪に願え。そうすればその時こそ私が力を与えよう』


「本当ですか!?」


 その言葉を聞いて俺は早速指輪をはめる。光にかざして眺めていると、嬉しくて思わず笑顔になった。

 俺は何より透明の宝石が気に入った。何色にも染まらず透明な姿は、まだ将来の事が決まっていない俺の様に思えたから。

 暫くキラキラと光る宝石を眺めていると、精霊王が口を開いた。


『ジーク、急いで戻った方が良いかもしれん。村に-』


「え、あぁ、そうだ!母様と父様が家で待っているんだった!

精霊王様ありがとうございました。この指輪大事にしますね」


 俺は精霊王の言葉で、家で待ってくれている両親の事を思いだし走り出した。

 精霊王の話を最後まで聞かずに。

本来神殿には夢を持った人しかたどり着けません。なので、ジグロがテレポートしたのは正解かもしれませんね。そうじゃなきゃ、後数時間歩き回るかスパークをもう少し浴びた頃に精霊王は出てきました。たぶん。


さて、この作品にもついにレビューが!そしてその効果で日間71位にもお邪魔しました!本当にありがとうございました(* ´ ▽ ` *)

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