表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理解不能の世界 -アンノウン・ワールド-  作者: 鷹橋 鷹
【第一章】グッバイ日常生活
2/2

【一章】1:聖 ナイの日常

今日もなんてことない暇な「いつも通り」の日常だ。

 「平和ってのはありがてぇけど、こんなに平穏ってなると田舎から都会に来た、ワクワク感とかそういうのが無くなっちまうよな...。」


そんな感じにぼやいてみる、まぁ、誰も聞いていないのだけれど。

そして、事実「暇」の境地である。職として「修理屋 ひじり」を開いているが、その修理の依頼も秒で終わる、依頼の件数は多くはない。

 他にやることとか考えてみようかと思うが、考えるのは面倒だ。考えたくない、脳が悲鳴を上げる。


 「筋トレと修理以外にも趣味を持っておくべきだったよ、そのゲームとか写真とかね。」

はぁ。 溜息をついてみる、この深く息を吐いた時の虚脱感はなんとも心地がいい。病みつきになりそうだ。

 「ごめ~ん、ナイ~?いる~?」

 表の方から聞きなれた声がする、自分のことを「超絶美少女だぞ」とか言いそうなやつの声だ。偏見だが。


「超絶美少女幼馴染のユリアちゃんが、暇をしているであろうあんたの為に、仕事を増やしに来てやったわよー!」


「いらん、結構だ、帰れ」

えー。ケチー。バーカバーカ。などと、超絶美少女が言っていいのか微妙なラインの戯言が飛んでくる。


大体、この幼馴染は「仕事だ」とか言っときながら対価はまったく支払わない。どこぞのブラック企業様々と寸分も違わない、この畜生めが。


「今日はちゃんと対価持ってきたからさ~?頼むよ~!!ほら、この通り!!」

などと戯言に戯言を重ねて両手を合わせて拝んでくる、って

「い、今、お前の口から対価という言葉が出なかったか?」


「言ったよ!ほら対価のプロテイン!!筋肉痛にこれで困らない!!」

これで、偏差値70を超える大学に通っているんだからこの国の将来が危ういな。うん。


「なによ、今私のことを馬鹿だという目で見てたでしょう?」

「その通りだ。」

「馬鹿ならあなたも変わらないでしょう!?」

「それを言われちゃ元も子もねぇよ...。」


事実俺も馬鹿だ、いわゆるところの「脳筋」ってやつだ。戦争で戦略とか使わずに真っ向から殴り合いしてたと思い込んでたレベルには脳筋だ。

そして、この幼馴染は「漣 ユリア」顔立ちは確かに整っていて気品を感じさせないこともないが、いかんせん馬鹿だ。

記憶力がいいだけのバカだ。記憶力がいいのをバカと呼ぶのか怪しいが、それなら阿呆だ。マヌケとかそういった部類だ。きっと。


「何よ、ボーっと私の体見つめて。今さら見とれているの?」

「残念ながらお前に見とれるなら、そこらのおばさんに美辞麗句を並べる方がずっとマシだ」

見るからに「ムキーッ!!」って口に出しそうな顔してやがる、端正な顔が台無しだ。顔を見てこいつに惚れたやつはとんでもない後悔をするだろうな。


「で、仕事よ!仕事!ほら、この機材使おうとしたら壊れちゃって」

「どうやったらこんな単純機構の壊れそうになさそうな双眼鏡が壊れるんだよ」

「壊れちゃったのはしょうがないでしょ!!ほら、さっさとなおすなおす!!」


などといい、ユリアはなぜか少々照れくさそうな表情を作って顔をそらしている。


「なんで照れくさそうに壊れた双眼鏡差し出してんだよ。プレゼントのつもりか」


えっへへぇ...。などと言っている馬鹿を傍らに。

はぁ、大きなため息を一つ空中に放り出す。大体「アレ」は人前で使えないものだ。

すぐに修理はできるが、人がいないことが条件だ。もちろんこいつはこの条件のことは知らないが


「そこのカウンターに置いてけ、後で修理してポストにでも入れといてやる」

「オッケー!センキューね!ナイ!」

お菓子屋の前に建てられている少女像のように舌を出しながら、片目を閉じている。

「ウインク絶望的にできてないぞ」

えー、うそ!!!後で練習する!! などといい手を振りながら外に駆けていった彼女に手を振り返す。


ユリアの通う大学はここから徒歩で数分程度だ、休憩のタイミングにはよくここに壊れたものを持ってくる。

それらは主に学校の備品、彼女曰く

「大学の修理費浮かせたら、実験や研究にもっとお金つぎ込めるでしょう!!我ながら良案だと思ってるのよ!!」

などとドヤ顔をしていた彼女を全国の修理屋に一殴り100円で表に出したら、相当儲かりそうなものであった。


俺。聖 ナイと漣 ユリアは幼稚園からの幼馴染である。

兄弟のいないユリアにとっては、俺が兄妹?姉弟?のようなものだったのだろう。


ほぼ毎日のように遊び、どこかに出かけるのもほとんど一緒だった。小学校、中学校ではそれのせいで周りの男子からはどやされっぱなしだったものだ。

それもそうだろう。あいつは顔立ちも整っていれば、出るとこは出て、引っ込むべきところは引っ込んでいる超絶健康体だ。まぁ、出るとこは出るといっても

日本人平均ど真ん中といったところだろうが。

 そういう理由もあってユリアはモテていた、「お前漣と付き合ってんの?」という言葉はおそらく全校男子に言われただろう。

そのたびにNoと答えると、この世に存在してはいけない生物を見るような目で見られたのも辛い思い出だ。お前らは奴のバカさを知らないんだ。


反対に俺はまったくというほど色恋沙汰はなかった。バレンタインのチョコもユリアが大失敗したぐちゃぐちゃのチョコを毎年食わされた、

妹の「失敗しちゃったけど...」のトリュフが神に思えたレベルには、あぁ、その、「素晴らしい味」だった。

もともとパッとしない外見を俺はしているんだろう。世の「イケメン」とやらとは全く顔の雰囲気が違う。

常に眉間にしわが寄ってるような顔だ。目つきも悪いし。


ってな具合で懐かしいことを思い出していたら時計の短針が2の文字を指している。

「買い物しに行かねぇと...」

そういって立ち上がると急に眩暈が襲い掛かってきた、そして「頭の中に」知らない女性の声が響く

(・・・・・・・。)

何を言っているかは聞き取れない。だが、苦しそうだ。想像しづらいが、己の身が内から引き裂かれそうになるとこんな苦しさなんじゃないだろうか。

(助け、て。)

今度ははっきり聞こえた、

(助ける?あんたをか?)

声にはなぜかならない。

(世界を、たす、け・・・。)

その声を最後に俺は眩暈から解放された。

「一体何だったんだ...。」

今はちゃんと声も出る。体も問題ない、頭の中に急に何かが入ってきたような重さだった。霊的な何かだったのかもだ。

(その割にはなかなかヘビーな内容だぞ?)

「世界を助けて」 その言葉は規模が大きすぎてウソっぽい、誰かがいたずらに何かを開発したのかもしれない。

けど、さっきのその言葉にはずっしりとした重みがあった。軽はずみにはいえそうにない「全て自分の責任だ」とでもいうような声。

考えることに慣れない頭で考えてたせいで、今度は頭痛が襲ってきた。そろそろやめておこう。どうせユリアに聞けばわかるだろう。

「さぁ、買い物行くぞー!!」


そういい、頭痛が解消されるのとは相反し自身の中の平和の文字に亀裂が入ったような感覚がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ