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13/15

10.取り入られた善良令嬢

ブクマ&評価ありがとうございます。

励みにさせて頂いています。


少し長めになりました。

「ロッテは今日、これからどうするの?」


 親善大使の件は自分で動かなきゃね。どうしても、無理そうだったら裏の稼業人のたちの手を借りるつもりだけど、彼女の手だけは借りないつもりだ。自分の身は自分で守れる裏の稼業の人たちとは違う。絶対に巻き込んではいけない。


「市場調査に行かなきゃ。」


「へえ。市場調査ってどうやんの?」


「貴女、商売人だったくせに市場調査をしたことが無いの?」


「ほら私の場合、割のいい商売を掴むのが上手いからさ。そんなのは必要無いんだと思っていたんだ。でも、これからはちゃんとしたい。だから教えて!」


「まあいいけどね。今回はデザート店だから、他のデザート店の価格や行列が出来ている店の美味しさや流行を読み取るのよ。それで、どれくらいの値段かボリュームはどれくらいか。とか決めるんだよ。」


「へえ、でも1日でそんなに回れるの? 精々が5店舗くらいだよね。」


「おいおい。5店舗も回れるかい! 貴女はそうでも、私は2店舗が限界。勿体ないけど半分以上食べ残すとしても4店舗が限界だわ。もっと多くの人数がいればなんとかなるのだけど、他に付き合ってくれる女の子は知らない?」


「私もこの国に来たばかりよ。・・・あっ、随分年上のお姉さまなんだけどいい?」


 ホットケーキを1日に12枚も食べたリラ様なら、10店舗も楽勝よね。


「またお姉さまなの? 本当に年上の女性に取り入るの上手よね。」


 一族の呪いの所為で誰にでも好かれる私は、年上の女性の友達が多い。皆、気前が良いから甘えるのに丁度いいのだ。でも、リラ様は違うよね。


「そうでもないんだけどなぁ。それに今回は毛色が違うから・・・。」


 男の人を好きになったら、一族の呪いで振られてしまうから避けているだけなんだけど、彼女にはそう見えるらしい。


 リラ様とキスをしたことを喋る。


「えっ。相手はモノホンなの? それってヤバくない?」


    *


「やあ、良く来たね。その娘は友達?」


「そうです。友達で今回出す飲食店の店長を努めるロッテです。」


「ロッテさんって言うんだ。可愛いね。」


 さりげだが、良くみると視線がいやらしい。うんうん、ヤバイかもしれない。主にロッテの貞操が・・・。


「はい! 今日はよろしくお願いします。」


 予備知識を与えたせいだろう。ロッテは元気に答えるものの若干引きぎみだ。自分の貞操は自分で守るしかないものね。


「それで今日は何をするの?」


「市場調査なんですけど・・・市場調査ってわかります?」


「わかるよ。ライバル店の価格を調査したり、傾向から流行を把握したりするんでしょ。」


「ほらほら、皆知っているって。ティナったら知らなかったんですよ。商売人として有り得ないでしょ。それで、今回はデザート店なんで試食をしなければならないんですよ。」


「あ、わかった。2人が試食している間に私が次の店の行列に並んで席取りをするのね。」


 そんなことは考えていなかったんだけど・・・リラ様は過去にそんな経験があるらしい。きっと、娼婦のお姉さまに罰としてやらされたのね。


「いえいえ、そんなことをして頂くわけには・・・一緒に店を回って頂くだけで・・・。そのときに、それぞれ頼んだデザートを取替えっこして試食できればいいなぁって・・・。」


 お願いの部分だけは、私が言う。


「ぜんぜん。いいよ。残飯処理でも何でもするする。」


 残飯処理・・・何も言葉がみつからない。とても元侯爵令嬢とは思えないセリフだ。隣のロッテの顔色を窺がうとやはり引きつっている。やっぱり、一族の呪いが効きすぎているようだ。


     *


 1店舗目は、私たちのお店と同様にホットケーキを出すお店だ。行列は少なく、立食用のカウンターだけのせいか、客の回転もいい。本物の卵を使っているわりには値段も安い。


「凄い! バリエーションが豊富だね。へえ、上に乗せるクリームは生クリームとカスタードクリームを選択できるんだ。いいねえ。私はカスタードクリーム!」


 ロッテは真似する気満々だ。なるほど、市場調査は大切だ。


「私はシンプルに蜂蜜掛け、リラ様は生クリームでいいですか?」


 どうせなら3種類バラバラのものが食べたいものね。


「生クリーム大好き!」


 トッピングだがホットケーキ自体の味はあまり美味しくない。どうやら、長期間保温されたもののようで、水分を吸ってしまってふにゃふにゃになってしまっている。


 3種のホットケーキと3種の飲み物を買ってベンチに腰掛けると、それぞれが買ったホットケーキを食べだす。私は一口だけ食べ、ロッテは半分、リラ様は4分の1ほど残したところで、次の店へと走っていく。


「これイマイチだね。折角、卵が使われているのに台無しだよ。」


「こんなもん。こんなもん。1枚の値段が高いから、下手に廃棄できないんだと思うよ。」


 ロッテはライバル店に既に勝ったつもりでいる。だけど、ホットケーキはこういうふにゃふにゃなものと意識が植え付けられていたら、うちの店のようなのは違うと思われるかもしれない。


 3人のホットケーキをそれぞれ、試食後、今度はリラ様がロッテと入れ替わりで戻ってきた。残り全てをリラ様が平らげたあと、ロッテに合流する。


 2店舗目は、焼き菓子と紅茶のお店だ。ここは紅茶が有名で常に5種類程度の茶葉が選べるらしい。流石に紅茶が美味しい。ポットの中の紅茶は別のポットで抽出したもの、入れてあるようで時間が経過しても濃くなっていかない。


 焼き菓子は、焼いてからある程度寝かせてあったと思われ、しっとり度が抜群で何の不満も無かった。


「この店、高いね。」


「私の小遣いじゃあ、一ヶ月に一回が精一杯だわ。」


 かなり高い。周囲を見ても、上流階級と思しき人々が優雅に紅茶を楽しんでおり、一般人の私たちは、少し浮いていた。


「あら、リラ・・・珍しいわね。こういう格式ばった店、嫌いって言ってなかった?」


 上流階級と思しき人々の中でも、さらに気品が漂う老齢のご婦人が近付いてきて、声が掛かる。


「アスター子爵夫人。元気そうだね。よかった!」


「何? このわたくしが旦那が亡くなったくらいで落ち込むと思っていたの?」


「君の落ち込む姿なんて想像できないけど、あんなに仲が良かったじゃないか。そう思っても不思議じゃないだろ。」


「ま、失礼ね。可愛い方々を連れているのね。紹介してくださる。」


「ああ、ロッテさんとティナスザンナさんだ。こちらは、側室仲間のアスター子爵夫人だ。」


「側室?」


「うん。リラ様は前々代の国王の側室だったんだって。」


 ロッテは目を白黒させる。さらに指折り数えてリラ様の顔を見てびっくりしている。誰でも考えることは同じのようだ。でも、こういう女性なら、側室と言われてもしっくりくるよね。


「ティナスザンナさんって・・・例の? マムから聞いているわよ。」


 彼女も私の素性を知っているようだ。しかも、例の戦いの女神の名前まで出てくる。そうとう親しいらしい。


「頑張ってね。ティナちゃん、期待しているわよ。」


 友好条約に関して激励してくれているらしい。ということは、マム様も友好条約推進派なのだろうか。彼女はそう言って席に戻って行った。


 3店舗目には、リラ様の後に私が走る。以前、屋台を曳いて行ったお店だったこともあり、顔を覚えられていて並ばずに予約席に通される。身分の高い貴族用に取ってある場所らしい。


 流石に連日、行列ができる店として有名なだけはある。1枚1枚丁寧に巻かれたロールケーキは絶品だった。生地は甘くないが、巻いてある生クリームがしっかり甘い。私の好みのタイプだ。これが逆だと気持ち悪くなってしまうのだ。


 ここはお土産に1本ロールケーキを買い求める人が多いことから、どうして客の回転率が悪くなってしまうみたいだ。


 結局、10店舗を回れた。


 私は初めから10店舗を目安にしていたので出されたデザートを一口ずつしか食べなかったのだが、ロッテは最後のほうデザートを見るのも嫌だったようで明日から店舗で売っていかなきゃいけないってのに大丈夫かなと心配になったほどだ。


 もちろんリラ様はご機嫌で行列に並び、ご機嫌で残飯・・・いやいや、私たちの残したデザートをペロリと平らげていた。その上、本当は下心ありありなのだろが年上だからという理由で、全ての店の会計まで持ってくれたのだ。


「「ごちそうさまでした。」」


「どういたしまして。」


「本当に大丈夫ですか? お腹のほう・・・?」


 リラ様の身体の構造はどうなっているのだろう。腹筋で胃を押さえ込んでいるのだろうか。来たときと同様にスラリとしたお腹は健在だった。


「うん。大丈夫だよ。甘いものは得意なんだ。」


 得意ってレベルじゃないだろう。ゆうに25個のデザートはそのお腹に入っていった計算だ。


「へえ。どこで鍛えるのですか?」


「ああ。後宮のお茶会で。ひとりひとりの側室の方々とお茶とお菓子1個がノルマだったからな。あのときは、ゆうに50個は食べたな。キツかったのはお茶のほうだったね。なんといっても、ポット1つ分のお茶だったからなあ。」


 後宮では50人以上の女性に手を出していたらしい。リラ様は遠い目をしていたが口元がニヤついている。


「へえ。50人もの女性に手を出していたのですね。後宮ではいったい何人の方と関係を持ったんですか?」


「関係だなんて・・・。」


「持ってないとでも・・・。正直に仰って!」


「そういえばマクシミリアンに、父が女に手を出した数で負ける。とか言っていたなあ。」


 前国王のマクシミリアン様の父は、リラ様が側室をしていたときの国王だ。その国王が負けたと言っているというのだ。数えられないくらいの女性に手をだしていたのだろう。


 その当時の後宮は華やかだったようだ。その反動なのか、今は後宮に側室はいないらしい。それを残念そうに話す。居たら手を出していたのかもしれない。


「そんなにも・・・。」


「いやいやいや。半分は国王様に命令されて、情報収集のために関係を持っただけだから・・・。」


「お綺麗な方々ばかりだったんでしょうね・・・。」


「初めはそうだったろうね。でも、後宮でお手つきの無い女性は酷いものだったよ。」


「それで可哀想で全ての女性に手を出したと・・・。」


「うんそうなんだよ・・・そんなわけないじゃない。後宮には100人を越える側室が居たんだよ。その女性たち全てだなんて・・・。」


 そんなに一族の呪いがキツかっただろうか。リラ様はボロボロと白状したのだった。

すみません。ストック切れです。2・3日、時間をください。

できるだけ早く投稿しますのでブックマークをお願いします。


次回はグルメ?(調理シーン)が入る予定です。

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