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9. 弄ばれた善良令嬢

ブクマ&評価ありがとうございます。

皆様のお陰で順調に投稿出来ております。本当にありがとう。

「じゃあ、キスをしましょ。」


 一族の呪いでベッドに押し倒さないと約束させた所為か。リラ様は椅子から立ち上がるとこちらに身体を傾けてくる。


「む・・ふ・ん・ぅ・・。」


 やり慣れているからか、さすがにキスは上手い。だが、それだけだ。こちらに愛情が無ければ、快感には変わらない。親友アレクサンドラに手技を教えてもらった時にしてくれたキスはこちらに愛情があるぶんだけ、盛り上がってしまったけど、演技過剰だと思われているのだろう。


「あっ・・・ああっ・・・。」


 もちろん、親友に演技の仕方も教えてもらっている。肝心なのは自分が演技で発した声に反応しないことだという。親友相手だとついつい盛り上がってしまう演技もリラ様相手なら大丈夫そうだ。


 普段からモテモテで余りそんなことまで考えていないのだろう。


「待っ・・・。」


 軽いキスから、舌を絡めとろうとしたところで、胸の上においていた手を一気に押し出し身体を離す。この辺も初めから身体を離せるように腕ごと抱きしめられるような体勢でキスを受け入れたのだ。


「もう終わり? 可愛いな。ティナちゃんは。」


 やっぱり、演技に気付いていないらしい。一族の呪いもあるだろうが、清純だと思われているようだ。そのまま、照れているように装い、下を向く。さすがに頬を染める演技までは出来ない。


 リラ様は、フローラさんが恐いのか、娼婦のお姉さまたちが恐いのか、一族の呪いに縛られているのか、余裕を見せているのか。先に進まずに帰って行った。


     *


 翌日は、食堂がお休みの日だった。


「やっぱり、貴女がきたのね。ロッテ。」


 朝から市場の店舗で働く仲間がやってくる。本当は帝国で出店する予定だったのだが、エル王国で出店することになり、私に付けられている裏の情報屋に言ったところ、飲食店には私が知っている人間が派遣されてくる。と、言われたのだ。


 親友アレクサンドラのところの人間で私の知っている人間は複数居るのだが、裏稼業を主としており、こういった表稼業に派遣されてくるとしたら、1人しか思い浮かべられなかったのだ。


「相変わらず性格が捻じ曲がってますね。スザンナは・・・。エル王国に行くなら、行くと教えてくださいよ。」


 ロッテはロシアーニア国に生まれたにも関わらず、親友の一族の呪いも私の一族の呪いも効かない珍しい人間だ。その所為か、親友は彼女を重用しており私と同様、友達付き合いが出来る人間なのだ。


「仕方が無いでしょ。貴女たちに会う前にこちらに来てしまったんですもの。アレックス様には貴女から伝えておいてくださいね。」


「なんで私が・・・まあいいでしょ。相変わらず守銭奴ね。」


 私が親友に裏の情報屋を通して手紙を届けると手数料を払わされるのだ。彼女なら半分、裏稼業に足を突っ込んでいる所為もあってか親友に情報を伝えることができる。これを使わない手は無い。


 いつもなら、グチグチと文句を垂れる彼女が珍しく素直に頷く。彼女も着任したばかりなのだ。親友に伝えなければいけない情報も多いはずだ。だから、そんなに面倒じゃないと思い直したのかもしれない。


「放っておいてちょうだい。早速だけど、昨日の昼間に市場で屋台販売を行ってみたら、なかなか良い反応だったわ。出店も宣伝しておいたから、材料費を持ってね。」


「この業突く張りめ。どうせスザンナのことだから完売したんでしょ。十分に利益が出ているじゃない。」


「それはそれ。これはこれよ。持つの? 持たないの?」


「はぁー・・・それは想定を上回る来客があったら、ということにしましょう。まさか、帝国のような値段で販売しなかったでしょうね。それだったら、営業妨害もいいところよ。」


 私が帝国の帝都で屋台を曳いたときに値段を上げすぎて失敗したことで、親友が設定した以上の値段を付けないことを約束しているのだ。


「大丈夫よ。ちゃんと設定価格通りの値段で売ったわ。」


「このコンロの納入って・・・もう商談を成立させたの? 幾らなんでも早すぎない? 嫌よ。来た早々、官吏から呼び出し食らうの。ちゃんと、この国の常識と法律上問題無い取引なんでしょうね。」


「そんな押し売りのような真似はしないわよ。王宮食堂の料理長からの発注だから、大丈夫なはずよ。」


「はぁー・・・調べてないのね。そこは調べておくわよ。本当は営業が調べることなんだからね。捕まってからでは遅いんだから、あれだけ各国で捕まって罰金払わされたくせに懲りてないの!」


「どうしたの? いやに優しいわね。」


 彼女の場合、性格なのかキツイ言い方になってしまうけど、私のことを思って言ってくれているのだ。一族の呪いをかいくぐり忠告してくれる友達は貴重な存在だ。


 裏の情報屋のボスであるリオウ様でさえも、私の言葉を丸々信用してしまうのだ。


「本当に嫌な人ね。私がそう言われるの嫌いなのを知っているくせに・・・。仕方がないでしょ商売のパートナーなんだから。貴女の失敗は私の失敗でもあるの。今度ばかりは、絶対に失敗させない。新しいことを始めるときは、必ず相談してね。」


 本気で言っているのだが、上手く伝わらない。でも私の言葉を丸々信じてくれるよりはずっといい。


「そう・・・じゃあね。王宮食堂では、ウエイトレスとデザートを任されたのよ。ホットケーキとクレープを売ろうと・・・今日から売っているのだけど、問題無い?」


「スザンナにしては、随分薄利で我慢したのね。そうね食堂で売るなら、この値段でも構わないかな。でも、あんまりバラエティ豊かにしちゃダメよ。店舗の存在価値がなくなるからね。」


 口は悪いけど、こんな風にアドバイスもくれる。基本、店舗側は親友と私の共同出資なのだ。店の存在価値を失うようなことをすれば、自分の収入にも関わってくる。

女性って怖いですね(笑)


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