文化祭
文化祭当日。
することもなければ、やりたいこともない。
九月の初週、この時期はまだ暑い。
故に僕はクーラーの効いた教室でのんびりしていた。
ふと、僕が編集した映像を見るととんでもない失敗に気づいた。
薄らとだが、僕の顔が映っている。不幸中の幸いか、気づいているのはいなさそうだったが、恥ずかしくて教室にはいられなかった。
こうなった原因は、パソコンから出ている光で映ってしまったのだろう。カメラもばっちり映っていた。
教室を出た僕は、中庭に作られた小ステージを眺めた。予め決めていた出し物をクラスからそれぞれ人を出してイベントを行っている。
早食い競争だとか叩いてかぶってジャンケンポンだとかつまらないなと思いながら眺めていた。ただ、このイベントの隙間時間に希望者にカラオケをさせてくれるようだった。
僕は暇つぶしにはいいかと参加した。
結果、スッキリした。本音を言えばもっと歌いたいがそれは無理だろう。というより、ヒトカラをすればいい話だ。
文化祭の終わり頃、教室に戻り、最後の上映をしていると学年主任の先生がいいねと言ってくれた。……こんな適当なものが褒められてしまってよかったのだろうか。
帰り際、だらだらとしていて、人が少なくなった頃、女子が「成澤くんはどうしてカラオケに参加したの? 緊張しないの?」と聞かれた。僕は「好きだからやっただけだ」と言ったら、女子は「かっこいいね」と言った。
嬉しい言葉だ。ただ、その言葉は本当にそれだけしかなく、僕に好意があるわけじゃない。僕にもその女子に何も思うところはない。それに、僕はその女子のことをよく知らない。……というかクラスメイトなのに名前すら覚えていなかった。さすがに、自分が人として最低なのではと思ったり思わなかったりする。