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目を覚ますと白い天井が見えた。周囲を見回したところ、薬品や包帯などが見えた。どうやら学校の保健室のようだ。
「気分はどうですか?」
カーテンを開きながら白銀が顔を覗かせた。
「ああ、大丈夫だ」
一通り俺の様子を確認するとペットボトルのスポーツドリンクを手渡してくれた。
「どうぞ」
「ありがとう」
さっそく一口飲む。よく冷えていて体の隅々まで行き渡るようだった。
「あんまり驚いてないところを見るにやっぱり知ってたか」
「はい。少し調べさせてもらいました」
俺は小さい頃から発作を抱えていた。時々、心臓が締め付けられるように痛むのだ。原因は不明。幸いにも命に別状はなく、今日まで大した問題もなく過ごせている。
練習に戻ろうとするが白銀に止められた。
「念のため、もう少し安静にしていてください」
その瞳があまりにも真剣で、軽々しく大丈夫だ、なんて言えなかった。
「じゃあ、一時間ぐらい寝るから、時間になったら起こしてくれ」
「分かりました」
普通は寝ようと思ってもすぐには眠れない。だが、このときはやけに寝付きが良かった。なんというか……妙に安心するのだ。あるべきものがそこにある、というような感じ。
なんとなく、いい夢が見れるような気がした。
●
調べるまでもなく知っていた。なにせ原因は私なのだから。だというのに苦しむ《彼》に対して何もできない己の無力さにただただ歯噛みする。
この命は《彼》に救われたのに。苦しみを取り除くことも、分け合うことすらできない。
泣いて許しを乞いたかった。でも、そんなことをしたところで《彼》を困らせるだけだ。
全てを話せば、きっと《彼》は信じてくれるだろう。そして全てを許してくれる。《彼》はそういう人だ。
そして、弱い私はその優しさに甘えてしまう。甘えて、受け入れられたら、戻ってしまう。あの頃の弱い自分に。
これは私が背負うべきもの。それだけが《彼》に対してできる唯一のことだから。