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音を立てないよう、静かにドアを開ける。ベッドで《彼》が健やかな寝息をたてていた。
それを聞いているだけで、不思議と心が安らいだ。
本当はもっと早くに駆けつけたかった。でも、必勝を期すためには少しでも敵の情報を集める必要があった。
真実を話したとき、受け入れてくれるか不安だった。でも、《彼》は受け入れ、信頼してくれた。心が溶けてしまいそうなぐらい嬉しかった。
《彼》の頬にそっと触れる。途端、胸の奥底に押し込めた筈の想いが溢れ出す。
諦めた筈だった。自分では《彼》に相応しくないと。《彼》が幸せなら隣にいるのは自分でなくてもいい。もらった命を《彼》のために捧げよう、そう決めた筈なのに。
少しでもチャンスがあれば縋り付かずにはいられない。望みがあるなら願わずにはいられない。私は多分、とてもズルくて、とても弱い女だ。
「少しだけ……。少しだけ、だから……」
起こさないようにそっと《彼》を抱き締め、その温もりを感じる。
「カズくん……」