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これは、ある少年と少女の物語。
孤独な少女はある日、一人の少年に出会った。少年は陽だまりのような笑顔で少女に言った。
「ぼくと友達になってくれないかな?」
それからというもの、少女の日常は一変した。暗く孤独な日々を変えた少年は、少女にとってまさしく太陽のような存在だったのだ。
過ぎていく幸福な日々。しかし、少しずつ終わりは近づいていた。
少女の命はもう残りわずかとなっていた。日が落ち、少しずつ闇に染まる世界。月明かりの中、死期を悟った少女は死への恐怖に震え、涙した。
胸の内に想うのは一人の少年。空っぽの少女に生きる意味を与えた大切な人。少女は無心に少年のことを想い続けた。
不意に月明かりが途切れ、そこに影が生まれた。件の少年が窓際に立っていたのだ。
少年はいつもより少し大人びた笑みで少女を見つめていた。労わるように、慈しむように、覚悟を決めた笑みで少女を見ていた。
「――ちゃん」
少年が少女の名を呼ぶ。
「なぁ……に?」
少女は声を出すのも辛いほどだったが、必死に涙を押しとどめ、笑みを形作る。それがもう、最後だとわかっていたから。最後は笑顔で別れたい、最後に会えた奇跡に感謝したい、そんな思いを込めた儚げな笑み。
しかし、少年はかぶりを振る。続く言葉を少年は決意を込めて口にした。
「ぼくはまだ君と別れたくない。もし君もそう願ってくれるなら、ぼくはその願いを絶対に叶えてみせる」
少女を安心させるように少年は笑顔を向けた。いつも通りの温かく、陽だまりのような笑顔。
「大丈夫。ぼくはこう見えても神様なんだ。だから誓うよ。君の願いを必ず叶えてみせるって」
突然そんな突拍子もないことを言われれば大抵は困惑するか、正気を疑うかのどちらかだろう。しかし、少女は疑わなかった。少女にとって少年はもはや神のような存在だったのだ。
少女もまた、溢れる想いを乗せて願った。内に秘めた唯一の願いを。
「わた、しは……生きたい、です……。もっとずっと、――くんと、一緒にいたい、です……」
溢れた想いは涙となって結晶化し、純粋で無垢な願いは祈りとして少年へと奉げられた。
「うん。君の願い、確かに聞き届けたよ」
涙を優しく拭い取り、少年は少女と誓いの口づけを交わした。
かくて願いは成就した。
両者の道はしばし分かれ、十年の時を経て再び交差する。
結末は神でさえも知りえない。
どうも黒コです。この度は当作品を読んでいただき、まことにありがとうございます。
今回の作品はかなり王道な物語でした。多少、ネタバレを含みますが、当作品には神話を元ネタにしております。気になった方は検索してみてください。答え合わせは次回作でしようと思っております。
まだまだ未熟ながら最後まで読んでいただき、改めて感謝です。どうもありがとうございました。




