表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/13

13

 これは、ある少年と少女の物語。

 孤独な少女はある日、一人の少年に出会った。少年は陽だまりのような笑顔で少女に言った。

「ぼくと友達になってくれないかな?」

 それからというもの、少女の日常は一変した。暗く孤独な日々を変えた少年は、少女にとってまさしく太陽のような存在だったのだ。

 過ぎていく幸福な日々。しかし、少しずつ終わりは近づいていた。

 少女の命はもう残りわずかとなっていた。日が落ち、少しずつ闇に染まる世界。月明かりの中、死期を悟った少女は死への恐怖に震え、涙した。

 胸の内に想うのは一人の少年。空っぽの少女に生きる意味を与えた大切な人。少女は無心に少年のことを想い続けた。

 不意に月明かりが途切れ、そこに影が生まれた。件の少年が窓際に立っていたのだ。

 少年はいつもより少し大人びた笑みで少女を見つめていた。労わるように、慈しむように、覚悟を決めた笑みで少女を見ていた。

「――ちゃん」

 少年が少女の名を呼ぶ。

「なぁ……に?」

 少女は声を出すのも辛いほどだったが、必死に涙を押しとどめ、笑みを形作る。それがもう、最後だとわかっていたから。最後は笑顔で別れたい、最後に会えた奇跡に感謝したい、そんな思いを込めた儚げな笑み。

 しかし、少年はかぶりを振る。続く言葉を少年は決意を込めて口にした。

「ぼくはまだ君と別れたくない。もし君もそう願ってくれるなら、ぼくはその願いを絶対に叶えてみせる」

 少女を安心させるように少年は笑顔を向けた。いつも通りの温かく、陽だまりのような笑顔。

「大丈夫。ぼくはこう見えても神様なんだ。だから誓うよ。君の願いを必ず叶えてみせるって」

 突然そんな突拍子もないことを言われれば大抵は困惑するか、正気を疑うかのどちらかだろう。しかし、少女は疑わなかった。少女にとって少年はもはや神のような存在だったのだ。

 少女もまた、溢れる想いを乗せて願った。内に秘めた唯一の願いを。

「わた、しは……生きたい、です……。もっとずっと、――くんと、一緒にいたい、です……」

 溢れた想いは涙となって結晶化し、純粋で無垢な願いは祈りとして少年へと奉げられた。

「うん。君の願い、確かに聞き届けたよ」

 涙を優しく拭い取り、少年は少女と誓いの口づけを交わした。


 かくて願いは成就した。

 両者の道はしばし分かれ、十年の時を経て再び交差する。

 結末は神でさえも知りえない。

 どうも黒コです。この度は当作品を読んでいただき、まことにありがとうございます。

 今回の作品はかなり王道な物語でした。多少、ネタバレを含みますが、当作品には神話を元ネタにしております。気になった方は検索してみてください。答え合わせは次回作でしようと思っております。

 まだまだ未熟ながら最後まで読んでいただき、改めて感謝です。どうもありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ