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容姿や魔法の才能のせいで周りから良く思われておらず、信じていた人たちにも裏切られましたが……その後幸せへの道が拓かれました!  作者: 四季


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9話「荒ぶる乙女」

 ラルフレットに相手にされず強制的に実家へ戻されたラピスは酷く荒れていた。


「お父さま! クッキーないじゃない! どうなってるんですの!」

「ああ、悪い、買い忘れ……」

「馬鹿男!!」

「すまん」

「謝って済むわけない! そうでしょう! ああ、やっぱり、そうなのですわね……きっと、お姉さまの無能はお父さまからの遺伝だったのですわ」


 軽くその気にさせられると思っていた王子から冷ややかな態度を取られたことでラピスのプライドは傷ついた。で、そのせいで溜まったストレスを、親に当たり散らすことで発散している。父親への当たり方は特に凄まじく。不機嫌なラピスは目の前にいる父親に対してであっても平然と侮辱の言葉を多数吐き出す。


「何を言うんだ! ガーネットほどは無能じゃない! ラピス、今の言葉だけは訂正してくれ。父は確かに天才ではない、が、そこまで無能ではない!」

「鼻だってお姉さまに似ているじゃありませんの」

「だが髪と瞳の色は似ていない!」

「あれは……ま、呪われのものですもの、遺伝うんぬんじゃないですわよ。……って、そんな話をしている場合じゃありませんのよ! クッキー! 早くクッキーを買ってきなさい!」


 父も、母も、自分に強くは出られない――そう理解しているからラピスは平気で棘のある物言いをする。


 毒を吐いても。刃を突き付けても。両親は自分を捨てられないのだと彼女は知っている。


「待ってくれ、ラピス、今はお店が開いていない」

「営業時間の問題くらいどうにか解決すればいいじゃない。もしかして頑張る気がないんですの? やる気の問題ですわ」

「そうはいっても、店の営業時間だけはどうしようも……」

「連絡して! 店主に! そして開けてもらって! 少しは努力すればいいじゃないですの。そんなままだと本当に馬鹿になりますわよ」

「できるわけがないだろう」

「やればできますわ!!」

「落ち着くんだラピス。物事にはできることとできないことがある。今言っているそれはできないことなんだ」


 何とか常識的な選択をさせようと頑張る父親だがラピスには届かない。


「ラピスのことが嫌いなんですの!?」


 逆に激怒させてしまっただけだった。


「お父さまはわたくしが嫌いなんですのね!? だからそんなこと言うのでしょう! そういうことですわよね!? ねえ!? ねえっ!?」

「ち、違う。そうじゃない。そんなつもりはない」

「慌てているじゃないですの!! ほら、やっぱり!! その顔、図星だったのでしょう!!」

「違うんだ」

「裏切り者!! お父さまはわたくしを愛してくれているものと信じていましたのに……酷い、酷すぎますわ……父親でありながらそんな風に嫌いを突き付けるだなんて……」


 今にも泣き出しそうに瞳を潤ませるラピスを見て焦った父親は。


「違う!! そうじゃない。本当に、本当に、本当に……大事に思っている!!」


 想いを強く伝えたのだが。


「ならクッキー買ってきなさいよ」


 冷徹な目をしてそう命令されてしまうだけだった。


 ラピスは金色の髪を片手で軽く整えながら視線をふっと横へ向けて「それができないなら、本当の意味では愛していないということですわ」と呟く。


「……わ、分かった、店主に一度相談してみるよ」

「買うだけなんだから簡単でしょう? そんな風に余計なこと言っていないで、さっさと連絡してきてちょうだい。わたくしはクッキーが食べたいんですの。早く!」

「あ、ああ、頑張ってみる」

「余計なこと言わなくていいからさっさとしてちょうだい!!」

「はい分かりました」


 父親は廊下へ出てからそこで待機していたラピスの母親――つまり自身の妻に「あいつ、どうしようもないな」とこぼした。


 夫から愚痴をこぼされた妻は「不気味なのよりはマシなのよ」と静かに返す。

 そして数秒の間の後に「黒髪、黒眼、魔法も使う、そんな姉よりはまだ良かったの。どんなに救いようのない性格でも、少なくとも近所の人からあれこれ言われることはないわ」と言葉を紡いだ。


 ――そんな会話を見逃すラピスではない。


「お父さま! お母さま! 聞こえていますわよ!」


 彼女はすぐに廊下へ向かい。


「娘の悪口を言うだなんて……親として最低の行いですわ!!」


 両親に抗議した。


 可憐な瞳は憎しみに燃えている。


「親としての自覚がないんですの!? もしかして、父母揃って無能!? ということはやはり、お姉さまの無能は完全なる遺伝だったので――」


 言い終わるのを待たず。


「やめろ」


 父親は低く発した。


「なあ、ラピス」

「何ですの」

「わがままを言うのはやめるんだ」


 眉間にしわを寄せるラピス。


「これまでずっと付き合ってきた。だがもう限界だ。いくら可愛い娘相手だとしても、我慢の限界というものがある」

「は、はあ!? お父さま程度の男が今さら何威張ってるんですの!?」

「そういう発言もやめた方がいい」


 そこへ母親が口を挟む。


「ラピス、近頃のわがままは……さすがにやり過ぎよ」


 母親は悲しげな目をしていた。


「何事にも限度というものがあるの、分かる?」

「お母さまは黙ってて!」

「あのね、ラピス、貴女は神様じゃないの。すべての物事が思い通りになるなんて思っちゃ駄目。何もかも思い通りにしようだなんて、そんなのは悪王と同じだわ」

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