8話「暮らしの中のいろんな出来事」
あのティータイム以来、ラルフレットとの距離は少し縮んだような気がする。
彼はこれからもここにいてほしいと言ってくれて。
私は今がとても幸せだと話した。
互いの胸の内を明かし合ったことで絆がより深まったように感じている。
ラルフレットは相変わらず仕事が忙しい。
けれど文句は言わない。
王子として生きている以上避けられないことだから受け入れている、ということなのだろうか? その辺りは分からないが……ラルフレットは凛とした姿で王子として生きている。
ただ、偉いからと威張り散らしているわけではなく、どんな時でも己を律していて――私は彼のそういうところに尊敬の念を抱いている。
「魔法の限界について教えてください」
「限界?」
「その不思議な力でどこまでいけるものなのか、色々、確かめてみたいことがあって」
私たちは今も隙をみて顔を合わせている。
具体的な内容は様々だけれど。
大雑把に言えばのんびりするパターンと魔法について話すパターンに別れている。
「協力してくださいますか?」
「はい、できることでしたら」
「感謝します」
ちなみに今日は魔法についての話の日。
「何をすればいいですか?」
「これに水をやってみてほしいのです」
「植木鉢!」
「これから一週間、一日二回ずつ魔法で水をやってみていただきたいのですが」
「分かりました」
「あくまで実験ですから魔法で水やりしていただければそれだけで結構です」
こちらのパターンの時、ラルフレットの表情は真剣そのものだ。
彼は魔法が凄く好き。そして魔法というものへの興味がかなり大きい。なのでこれまでもかなり色々質問された。当然、私にできる範囲で、すべての問いに真面目に答えてきたつもりだ。こちらとしては、私が持つ情報の中に彼が求める情報があるのならその情報を少しでも多く提供したいと考えているから。
魔法についてのやり取りをしている時の彼は、知性を感じる面持ちで、どことなく学者のような雰囲気をまとっていたりする。
「それと、こちらの書類なのですが」
「この前仰っていたものですね」
「そうです。前回までの聞き取りを踏まえつつデータをまとめてみました。誤っていると感じる点があれば指摘をいただきたいと思っているのですが、一度読んでみていただいても?」
「いつまでですか」
「期限は特にありませんが、できれば、今週いっぱいでお願いしたいです」
「分かりました、では受け取ります。でき次第お返しします」
一日のほとんどを王城内で過ごす生活だが悪いものではない。
「新しいパフェが開発されたそうです!」
「そうなんですか」
「ガーネットさん! 一緒に食べましょうよ!」
「何だかすごく張りきってますね」
「それは! もう! すっごく綺麗なんですよ! まだ食べてみてはないんですが……でも見た目だけでも既に美味しそうで!」
城内で移動するだけでも運動になる。
「午後から試食会するらしいです!」
「それに行く感じですか?」
「ガーネットさんがお嫌でなければ」
「私は嫌とかはないですけど、ラルフレットさんはお忙しいのでは」
「午後は時間があります!」
「そうなんですね。では一緒に行きましょう、パフェの試食会ってなんだかとても楽しそうですね」
この日は二人で新作パフェの試食会に参加。
城内の食堂にて開催されるイベントだった。
「試食会って……感想レポートの提出が必須なんですね」
「わたしの場合はいつもさくっと書いてます」
「ではびっしり書かなくても大丈夫そうですね」
「大体五行以内くらいです」
宇宙を連想させるような独特の色合いが個性的な新作パフェだった。
「このゼリー、綺麗なうえ味もいいですね!」
「確かに。おしゃれな感じがします。わたしはこの甘い球体が特に好きです」
「それまだ食べてみてないんです、美味しかったです?」
「はい。ふわっとしていて、でも、味わいには芯があって……ああ、もう、言葉で表現できそうにない、宇宙レベルの美味しさです」
試食会の参加者は女性が多かった。
城内で働く人も一部含まれている。
だがやはりメインはそれなりに高い位の人だ。
皆が着用しているドレスを眺めるのも楽しかった。
鮮やかな色のもの、落ち着いた色のもの、丈の長いもの、歩きやすそうな丈にしてあるもの、などなど……かなりたくさんの種類のドレスを目にすることができた。
今日は内容の確認を頼まれていた書類を返却。
「ラルフレットさん、書類、持ってきました」
いざ目を通し始めると量が多いことに気づいた。
こんなにたくさんあったのか……、と若干驚いたけれど、読みやすい文章で構成されていたため確認作業は苦労なく進められた。
確認作業そのものより、むしろ、大量の書類を山にしてここへ運んでくることの方が大変だった。
「ああ、ありがとう。そこに置いておいてください。問題点はありましたか」
「大きなものはありませんでした」
「指摘する点は?」
「いくつか書かせていただきました」
「助かります」
「失礼がありましたら申し訳ありません」
「謝らないでください、こちらがお願いしたことですから」
仕事机に向かっていたラルフレットはそこまで言うとこちらへ視線を向けて。
「運ぶのも重かったでしょう? 使用人に頼むべきでした、気遣いが足りず申し訳なかったです」
謝った後、袋に入った砂糖菓子を手渡してくれる。
「これ、わたしの好きなお菓子です」
レースに似た模様の袋の中に入っているのは小さな粒のようなお菓子たち。様々な色をした小さな砂糖菓子は、まるで、あの広大な夜空に広がる星々のよう。淡い色みが主だが、どれも、手のひらで包み込みたくなるような愛らしさを放っている。
「ラルフレットさんが?」
「はい。よければ食べてみてください」
「いただいて問題ないのでしょうか」
「もちろん。だから渡しているのです。遠慮は要りませんので、どうぞ」




