第一話 出撃! レンタルロボ
時は——20XX年。
地球は未曾有の危機を迎えていた。
宇宙の彼方より、惑星侵略軍団ノットルが襲来。
彼らは巨大機動兵器を地球の周回軌道上に展開し、全人類へ無条件降伏を要求したのだ。
しかし、そのときすでに一人の天才科学者が動いていた。
宇宙科学研究所の宇狩博士。
彼は、いつか来る侵略の日を予見し——ひとりの若者をスーパーロボットのパイロットとして鍛えていた!
「博士! いよいよこの時が来たんですね!」
スーパーロボット・カリテンダーのパイロット、亜月千獅雄は拳を握った。
千獅雄は、ノットル襲来の一ヶ月前から、血の滲むような特訓を積んできた。
筋肉痛で立てなくなっても立ち上がる、青春と根性の申し子である。
「うむ……そうじゃな」
博士は白い髭を撫でながら、どこか浮かない顔をしていた。
「どうかしましたか、博士?」
「千獅雄よ……実は話しておかねばならんことがある」
博士の真剣な表情に、千獅雄はごくりと息を呑む。
この緊張感——なにかとんでもないトラブルでもあったのか?
「……カリテンダーなんじゃがな……今日が返却期限なんじゃ」
「……はい?」
「いや、だから。あれ、レンタル品なんだわ」
博士の声は、かすれていた。気まずさと羞恥のブレンドである。
(レンタル……? え、ちょっと待って。俺、スカウトされた時“ワシが造った”って自慢してたよな?)
千獅雄の心の声が震える。
「博士、お一人で開発されたのでは……?」
「無理に決まっとるじゃろ! こんなデカいの! 三十メートルあるんじゃぞ!? それにワシ、仲間おらんし!」
偉そうな性格が祟り、あらゆる学会・共同研究をクビになった孤独な科学者、宇狩博士。
彼が取れる唯一の方法が——“レンタル”だったのだ。
「だからな、千獅雄。あと三十五分以内に奴らを全滅させてこい!」
「三十五分!? 延長とかできないんですか!?」
「コスモレンタルカンパニーの料金、高いんじゃ。払えん!」
「そんな会社、聞いたこともありませんけど!?」
「ごめんな……」
もう突っ込むだけ無駄だ。千獅雄は無言で操縦席に乗り込んだ。
返却まで——残り三〇分。
その頃、ノットル軍旗艦・『トリトン』司令室。
「司令! 地上から機動兵器らしき物体が接近中!」
「ふん、地球人め。無駄な足掻きを……」
冷静に指示を出す司令官モラウデ。
「ゲットー将軍に伝えろ。五分で片付けろとな」
「すでに出撃していますが……五秒で撃墜されました!」
「はあ!? 何ィィィ!!」
司令官の叫びが響く。
その瞬間、艦全体が激しく揺れた。
「どけどけぇー! 返却時間が迫ってんだよおおお!」
地球の空を切り裂く声と共に、カリテンダーが突入。
ビームキャノンとマイクロミサイルが乱舞し、旗艦を蜂の巣にする!
「ぐわああっ! 総員、脱出ポッドへ急げ! この危険な惑星から離脱するんだああ!」
モラウデは泣きそうな顔で部下に指示を出した。
『トリトン』は火を吹き大爆発。モラウデ達はかろうじて、ポッドの簡易ワープ航法で本拠地に逃げ延びた。
——その戦いは、たった二十五分で終わった。
カリテンダーは無事に返却された。
地球は救われ、博士の財布も守られた。
……だが、戦いがあまりにも早すぎたため、
その活躍は地球の記録に一切残らなかった。
称賛されることもなく、誰からも知られず、
亜月千獅雄は静かに笑った。
「いいじゃないか。みんな無事なら、それでさ」
そして——その裏で。
撃墜された“ゲットー将軍”と呼ばれる少女、ゲッカ・ルナライトが
地球のどこかに不時着していた。
彼女はまだ知らない。
ここから始まる、自分だけの物語を。




