初出撃と悲劇……
ーその頃栃木県
謎の巨大怪獣はタクシーよりものろい速度で北西、日光東照宮に肉薄しつつあった。
ドシーンドシーン
「和尚さん、遂に怪獣があそこまで東照宮に接近してやがるぜ! 本体は残念だが眠り猫とついでに三猿だけでも剥がして良かったよな。……れ、和尚さん? 和尚さん!?」
一心太助15世が辺りをみても、避難する人々の中に和尚さんの姿は無かった。
「宮司様大変です、眠り猫と三猿が無くなっています!」
「何だとこんな時に、人々の心はそこまで荒んでいるのかっ」
「宮司さま怪獣がギリギリ来るまで警備を厳重にしましょう!」
「君、眠り猫がどうなったか知らないかね?」
ドキーン!
「い、いえオレ全然知らないっス!」(や、やべっ泥棒の片棒を担いでしまった!?)
一心太助15世は怪獣の到来を願った……
F-35が長距離巡行ミサイルを撃って約三十分が経過した。
シュバッシュバッシュバッ
六本の火の玉が上空から真っすぐに怪獣目掛けて落ちて来る。
「あれを見ろ!」
「火の玉だっ」
「いやミサイルだっ」
ドドドドドドーーーーーンッ
遂に六発のミサイルが怪獣に命中し、真っ暗な夜空にまばゆい閃光が走った。日光東照宮までギリギリというタイミングであった。
『地上班、弾着確認!』
すぐさま自衛隊が飛行隊と知事室に連絡を送った。
「今弾着を確認したと!」
「閃光が見えておる。効果は!?」
「いまだ連絡は」
モアモアモア~~
爆発の煙が薄れて行くと……中から無傷の巨大怪獣が現れ、再び歩き出した。
ズシーーン!
『怪獣健在! いまだ日光東照宮に接近中!!』
ー飛行隊
『なんだと……野郎共、遂に我々F-35飛行隊にも機銃掃射で戦う日が来た様だっ!』
『ヒャッハーッ!』
『撃つぜ、撃ちまくるぜ!!』
『ミサイルが効かなかったのに機銃で?』
飛行隊はギリギリ怪獣に接近する為に飛び続けた。彼らには怪獣の巨大な手で撃ち落とされ、パラシュートで脱出したいという危険でスリリングな欲求があったのだ。
ー日光東照宮
ズシーンズシーン
もはや怪獣は境内に入り、巨大な脚で煌びやかな装飾をほこる社殿を踏み潰す直前であった。
(怪獣ファイトッ! あともう少し!!)
一心太助15世は怪獣を応援し続けた。
「宮司さま!?」
「心を平安に保つのです。この様な時、正しき者には天から助けがある物です」
「ええっ祈りましょう!」
言った直後であった、巨大怪獣はめちゃめちゃに日光東照宮の社殿を踏み潰した。
ガラガラグワッシャーーッ! メキョキョッバリッ
こうして栃木の至宝、日光東照宮はもはや再建修理が不能な程に崩壊した……
(セーフッ!)
一心太助15世だけが胸を撫で下ろしていた。
ーその頃主人公、野生薫
チャリチャリッ
「俺、こうやって自転車に女の子乗せるの初めてなんだっ」
「はぁそうですか? 急いでください」
まだ自転車をこいでいた。