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夏秋は千鶴と一緒にいた早苗を見て、とても驚いているみたいだった。
それから、なんとなくだけど、早苗と夏秋の二人には、早苗がこうして珍しく秋夏のお家にやってきた理由が、ちゃんと二人ともわかっているみたいに千鶴には見えた。
見慣れた、本当ならとっても過ごしやすい夏秋の部屋の中で、……、私はお邪魔なのではないか、と思いながら、千鶴はなんだかとっても自分の居心地の悪さを感じていた。
早苗を見ると、明らかにどこかおかしかった。
いつもの早苗らしくなくて、なんだかとても緊張しているように思えた。(それでも、きょろきょろと夏秋の部屋の中を好奇心のある顔をして、見ていたけど)
三人がずっと黙っている時間が少し過ぎたところで、「千鶴。ごめん。少しだけ早苗と二人だけにしてくれないかな?」と夏秋が真剣な顔で千鶴に言った。
早苗を見ると早苗も真剣な顔で千鶴を見ていた。
「うん。わかった」と言って千鶴は小さく笑って、夏秋の部屋を一人で出て行った。
引き戸を閉めるのと同時に、千鶴は泣いてしまった。
そのまま引き戸のところにしゃがみ込んでしまった。
そのときになって千鶴はようやく、ああ、私はとても無理をしていたんだとわかった。
そんな千鶴のところに元気な五つ子の子犬たちがやってきた。
いつも元気な五つ子の子犬たちに元気をもらうようにして、千鶴は笑うと、涙を制服の袖でぬぐって、そのままお庭まで五つ子の子犬と一緒に歩いて行った。