4 さて、夏秋くん。どうする?
さて、夏秋くん。どうする?
夏秋はいつものように机で勉強をしていた。いつもと変わっているところはないように思えた。(話してみても、普段となにも変わらなかった)
「あの夏秋くん。なにか悩んでることがあるの?」とやっぱり気になったので、千鶴は自分から聞いてみることにした。
すると珍しく夏秋はとてもわかりやすく驚いた顔をした。
「秋冬ちゃんに聞いたの。夏秋くんがなにかですごく悩んでるって。だけど、なにで悩んでるかは秘密だって」と夏秋が急須に入れて用意してくれたほかほかと湯気の出ている美味しいお茶を湯呑みで飲みながら千鶴は言った。
すると夏秋は悩んではいるけど、なにで悩んでいるかはやっぱり千鶴には教えてくれなかった。
もしかしたら本当になにか(恥ずかしくて人に言えないような)大変な悩みかもしれないので、千鶴はとりあえず夏秋が教えてくれるまで、無理に聞いたりはしないことにした。(とっても気になったけど)
それから少しお話をして、千鶴は「じゃあ、またね。夏秋くん」と言って、すぐ隣にある自分の家に帰って行った。
夜の時間になると、秋夏の部屋に五つ子の子犬がやってきた。
夏秋がずっと悩んでいることは、実は千鶴のことだった。
そろそろ三月で、三月は千鶴のお誕生日のある月だった。
今までそんなことしたことなかったのだけど、今年は千鶴に『ある理由があって』お誕生日に贈りものをしようと夏秋は思っていた。
だけど、いざそう思うとなにをあげたら千鶴が喜んでくれるのか、全然わからなくなってしまったのだ。
「夏秋くん。今日も悩んでるね」
「どうするつもりなのかな?」
「なにをもらっても、千鶴ちゃんは喜ぶんじゃないの?」
「そうなの?」
と五つ子の子犬たちは楽しそうに(他人事なので)輪になって、お話をしている。