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電話帳

作者: 葉崎あすか

 僕は電話帳を静かに閉じた。

 それは、近くにいたアリさえも気づかないような静かさ。

 閉じた後、わずかに覚えている番号を、頭の中で確かなものにするのも忘れなかった。

 僕は電話帳を閉じたような静けさで立ち上がると、なにか重いものを探した。

 大きければ大きいほどいい。石なんかがちょうどいいと思う。漬物石のような重さを僕は求めていた。

 そのとき、レンガを見つけた。

 花壇に使われているレンガだった。土に半分埋まっているそれを、僕は二つ手に取った。二刀流というわけだ。

 重さも強度も、角があるのも良かった。

 負けるわけにはいかないんだ。僕はレンガを強く握り締めた。

 「どうしたんだ」僕は斉藤を電話で呼び出していた。携帯電話を持っていないので一度家に帰るのが面倒だったが、こういうときは電話で呼び出すものだ。

 斉藤は黙っている僕に首を傾げた。そして、僕が持っている二つのレンガに目を丸くした。

 「お、お前、いったい何を……」

 「聞きたいのはこっちのほうだ」僕はレンガを強く握り締めながら、斉藤にゆっくりと近づいた。斉藤は目を丸くしたまま後ずさりする。

 そのとき、斉藤の左足が電話帳にかすかに当たった。

 「止まれ!」僕はそう叫ぶと、走り出した。こいつさえ、こいつさえいなければ!

 斉藤は驚いて逃げ出した。その左足が、電話帳を道路の石を蹴ったように一度はねて地面を滑った。

 もう我慢ならなかった。僕は電話帳の上にレンガを置いた。そして電話帳の角にレンガの角をキッチリと合わせた。

 「…………」50メートルほど走った斉藤が戻ってきた。

 「本当に何してんだよ」肩で息をしていた。普段走らないから辛そうだ。電話帳を蹴ったから罰を受けて当然だ。

 「お前は、何にするんだよ」僕は斉藤の質問には答えない。

 「え? 何のことだよ」

 「後藤の誕生日プレゼントだよ! 何にするんだ!」僕は理解力のない斉藤にさらに腹が立ってきた。

 「……は?」斉藤は目を丸くしたまま十秒ほど固まった。「あ、えっと、後藤が好きなアニメの絵を描いてやろうと思ってさ。俺美術部だし、金ないし」

 「負けた……」それを聞いた僕はがっくりと膝を地面につけた。完敗だ。完全に負ける。

 「お前は何にするんだ?」

 「これだよ」僕は、震える手で電話帳を指さした。慣れないレンガを強く握り締めたから、握力が尽きてしまったのだ。

 「ああ、押し花同好会……」と言った後、斉藤は笑い出した。そして携帯電話を取り出した。

 そう、僕もプレゼント資金がない。そう言っても斉藤のように絵もうまくない。どうしたら普段お世話になっている後藤を喜ばせることができるのか。考えた末の案だったが、どう考えても斉藤に負ける気がしていた。そして、今、負けようとしている。

 

 「すげえ」

 これは、後日出来上がった僕の押し花を見た後藤と斉藤の第一声。五時間もデザインを練りに練った力作。栞だ。後藤はいつも本を読んでいるから使ってくれるだろう。

 斉藤が描いたアニメの絵は、「ちょっと違うな」の一言で切り捨てられた。後藤が言うには、どんなに似せても元の絵にはかなわないらしい。それにルーズリーフに鉛筆書きだった。

 僕の勝ち。


 お久しぶりです。葉崎です。


 実は大学受験に大学生活、バイトでここ数年まったく小説を書いていませんでした。久しぶりに書いてみようと思ったのですが、小説の書き方を忘れてしまったのでこれは肩ならしだと思って下さい。


 本当に下らないと思います。

 こんな作品でも、感想を送って下さったらとてもうれしいです。


 それでは。

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