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第三話 新たな1ページ【後編】

 トレードは外周を石の城壁に囲まれ、街にあるいくつかの門から中へ入れるようになっている。

 この世界では魔物も多いので、安全のために大きな街に壁が作られているのは珍しくない。

 馬車が門をくぐり抜けると、見えてきたのは多くの露店と人で賑わう大通り。

 中世ヨーロッパ風に近いレンガと赤い三角屋根の建物が立ち並ぶ街並みは、魔法のあるこの世界にふさわしい雰囲気を醸しだしていた。


 先程も言ったようにこの街の周辺は弱い魔物しかいない。

 そのため比較的安全に交易がしやすく、この街はそれが盛んで世界中のものが集まる。

 今回みたいに盗賊に襲われるケースは仕方がないが、タウンはそのことに関しても、冒険者ギルドに盗賊退治の依頼を出すらしい。

「あったあった!あれが冒険者ギルドだ」

 ゴトーが指をさした先にあった建物は、他の建物よりも一際大きく少し古いもので、一言で言うならば歴史を感じる建物だった。

 玄関の上には何やら大きな魔物の頭部の骨が飾られており、はえた大きなツノからは、なかなかの威圧感や威厳を感じる。

 今回は依頼達成と盗賊出没の報告として、ゴトーも同行してくれた。

「じゃあ…行くか!」

 俺がそう言って扉を開いて中へ入ると、中にはいかにもな、武器を背負った荒くれ者の冒険者たちが複数名確認できる。


 ギルドの中には酒場も併設しているらしく、置かれたテーブルに座って昼間から酒を飲んでいそれなりに賑わっている。

 荒くれ者たちの集まる酒場…こういう雰囲気は嫌いじゃない。

「ようテメエ…見かけない顔だな?」

 すると近くのテーブルに座っていた、リーゼントヘアの荒くれが鋭い目つきで話かけてきた。

「遠くからさ。俺たちもここへ冒険者を目指しにきたんだ」

「かっこつけてる…」

「お前はちょっと黙ってろ」

「なぁっはっは!そいつぁいい!ようこそ地獄の入り口へ!受付ならあっちだ!」

 荒くれはそう言って親指でギルドの奥のカウンターを指さし、高らかに笑った。

 ちなみに後で聞いた話だが、実はその荒くれは冒険者でもなんでもなく、ただの近所の子供服の服屋の店主で、こうやって新米冒険者たちをビビらせているらしい…

 じゃあ何やってんだ…?あのオッサン

 

「すいません、依頼完了の報告にきました。」

 ゴトーが受付カウンターに呼びかけると、奥の方から優しそうな金髪美人のいわゆる受付嬢と呼ばれる人が出てきた。

 胸元が開けた服で…

 なんというかその……デカい

「では冒険者カードをご提示ください」

 そう言われてゴトーが取り出したのは、トランプよりも少し大きく、名前の他に色々な欄があるカードだった。

 受付嬢のお姉さんはそれを確認すると、いくらかの金貨や銀貨とともに依頼達成金をカウンターのトレイに提示する。

「こちら成功報酬の七万五千アドミです」

 ちなみにこの世界の物価としては大体一ヶ月十五万アドミが平均月収。

 命懸けで一週間程護衛をして平均月収の半分とは…

 冒険者は決して甘くない職業だな…

「ありがとう。あと、俺の紹介で二名冒険者になりたいやつらがいるから」

「はい。そちらのおふたりですね。ではこちらまでお願いできますか?」

 俺たちはカウンター近くに歩み寄る。

「おふたりは冒険者をご希望なのですね。私はここのギルドの受付をしていますファイといいます。ではまず最初にギルドと冒険者についての説明から…」

 規約やらなんやらと割と長めの説明をされたので、ある程度割愛。

 内容を端的にいうとこんな感じだ。

・冒険者ギルドは世界共通の組織で、世界の情勢などに関係なく活動する。

・ギルドに登録している冒険者は、年会費を支払うことで、依頼やクエストの紹介、討伐した魔物の解体や買取などの各種サービスを受けられる。

・クエストや依頼などを失敗した場合は違約金が発生し、失敗が重なることで降級が検討される。

・クエスト中の死亡や怪我、建造物の損壊などで生じた被害について、ギルドは一切の責任を負わない。

 まあつまりは全て自己責任という訳だ。

 うん、まあそこまで甘くはないのだ。

 

「では早速登録の方を行っていきます。こちらへどうぞ」

 そう言われて案内されたのは、カウンター横の何やら大きな魔道具。

 鍾乳石のような尖った石がついたその魔道具に、ファイさんはさっきゴトーが持っていたカードをセットした。

「これは身体のステータスを測定する魔道具です。身体能力や魔力量、魔法や特別な才能などを測って最適な職業とレベルを決定するんです」

「そのカードはなんなの?」

「これは測定したステータスを記入することのできる冒険者カードです。これはギルドに所属している冒険者であるという証明にもなるんです!早速始めてみましょう。こちらの魔道具に手をかざして下さい。お一人ずつお願いします。」

「じゃああたしが最初!」

 そう言って我先にとカリエが魔道具に向かって手をかざす。

 すると魔道具は淡い水色の光を発して、それは鍾乳石の根本に集まってゆき、先端に流れてくると水滴のように一滴の光の雫が白紙の冒険者カードに滴り落ちた。

 やがてその光は字を刻み、光が消えると完成黒い字で色々なステータスの書かれたカリエの冒険者カードが完成した。

 そのカードをファイさんが取り出す。

「では拝見させていただきますね。カリエ様…ですね。…これはすごいです!魔法に関しては天武の才がおありです。潜在魔力はまさかの未知数…!魔法使い系の上級職魔導士(ウィザード)がおすすめの職業ですね!」

「本当に…!?じゃあそれ!それにする!」

 なるほどやっぱりこいつ何気に才能はある。

 神としての能力は殆ど失っているはずだが、それでもここまでの高ステータスを叩き出せるとは。

 まあ最も、その才能で建物をうっかり吹き飛ばすようなトラブルメーカーではあるが…

 こうしてカリエは無事に魔導士(ウィザード)の職業を獲得した訳だ。

 そして、次は俺の番となる。

 カリエと同じように魔道具に手をかざす。

 しかし今度はカリエとは違い、紅い光が発されて鍾乳石をつたってカードに文字を刻む。

 同じようにファイさんがカードを取り出してそれを見る。

「ゼーゲンさんですね…全体的なステータスがとても高いですね!剣や魔法に関してもそれなりの才能があります。このようなバランスの良いステータスを活かせる職業といえば……魔剣士と呼ばれる職業がおすすめです!剣と杖の両方の性能を持つ〝魔剣〟と呼ばれるものを使い、前後衛どちらもこなせる万能型の職業です!なかなか珍しい職業ですよ!」

「あ、じゃあそれでお願いします」

 神様にしては大したことないステータスだと思っただろうが、俺自身あまり目立ちたくないのでこの程度に抑えているのだ。

 もちろん俺なんかがこの魔道具に対して神パワー全開をすると、間違いなくぶっ壊れる。

 第一そんなことで騒がれるのも面倒なのである。

「あんたにしては大したことないステータスだけど……まいっか!」

「いやわざと抑えてるんだって……」

 こいつはそのことをわかっていないらしいが……

 

 登録の最終段階として、ファイさんが机に向かって俺たちのカードに、ギルドの紋章の韻をおす。

「では改めまして…」

 そして俺たちの方を振り返り、両手を広げて大きな言葉を発した。

「ようこそ!冒険者ギルドへ!ここは多くの者が一攫千金や名声を求めて挑み、伝説を書き記した場所!さあ!あなたたちの冒険の1ページを始めましょう!」


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