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其の六 人生の虎の巻 第二幕

 ※この章は非常に長丁場ですので、途中にコーヒーブレイクを挟んで下さいね!


 二年生に上がり、同学年の中途半端なヤツらもようやく学校を辞めて行き、クラスも落ち着き始めた頃、サッカー部に一学年下の新入部員が六人も入部して来た。その内三人はサッカー経験者だったので、これまでの弱小サッカー部としては豊作とも呼べるべき年だった。

 この頃テレビを賑わせていたオウム真理教の事件が連日報道で取り上げられ、中でもサティアンという言葉や、オウムのヘッドギアは一般市民にとって印象的なものだった。

 そんな中オレとてっちゃんは、現場のヘルメットの中に付いているプラスチックの保護具を改造して、電気コードやボルトなどを付け、それっぽく似せたオウムのヘッドギアを頭に被り、教室も然る事ながら職員室に入って行っては先生達を笑わせた。


 七月に入り、これまで鉄工所や現場仕事など数々の職場経験をこなしてきたオレは、十七歳にして浄水器の取り付け工事を請け負い自営業を立ち上げた。まだ車の免許は持っていなかったので、原付の荷台に工具を積んで関西一円を回っていた。一方、オトンも会社勤めから一転し、新たな事業を立ち上げる準備を整え始めた。そんな中、仕事の合間をみては読書に勤しむオトンだったが、主に自己啓発書を愛読し、中でも自身が為になった事は惜しみなくオレに教えてくれた。そんなある日の事だ。


「武、ポール J マイヤーって知っとるか?」

「ポール J マイヤー? 知らん。ポール牧の親戚か何かけ?」

「ポール牧は関係ない」

「ほならサンポールかなんか売ってる人け?」

「いやサンポールも関係ない」


 クソ真面目なオトンは、見事にオレのボケを軽く流して話を進めた。


「ポール J マイヤーはな、二十七歳にして億万長者になった人なんやけど、成功する為のプロセスやノウハウを、具体的にどうやって行くべきか紐解いた人なんや」


 この時オトンから聞いたポール J マイヤーのそれまでの経歴は、サラリーマンとしてどの会社に勤めても、すぐにクビになり、次に勤めた会社でクビになれば、もうどの会社も彼を採用してくれないほど崖っぷちに立たされていたのだそうだ。そんな崖っぷちの彼が一夜にして営業の契約で、莫大な利益を得たという。そのノウハウなのだそうだ。


「ふ~ん。凄い人も居るもんやなぁ~。でっ、そのポール J マイヤーがどないしたんよ?」

「うん。そのポール J マイヤーの成功哲学を、ある大手企業の研修会で講師として招かれた人が、解りやすく説明してるテープを手に入れたからお前に聞かせてやろ思てな」

「えっ、そんなテープあるんけ?」

「そや、それがこれや! これ貸したるから聴いてみ」


 そう言ってオトンはカセットテープを手渡してくれた。オレにとっては小学校以来の『人生の虎の巻 第二幕』である。即座にオレは部屋に(こも)り、カセットデッキにテープをセットして再生ボタンを押した。スピーカーからは、これから講演する人物の紹介と共に、英語に同時通訳する声も聞こえ、その後オープニングを飾る音楽が流れ終わるとようやく講演が始まった。

 オトンが勧めて来た教材だけあって、冒頭から聴く者を引き込ませる人間の真理をついた講授に、聞き逃すまいかと真剣に聴き入った。A面からB面に切り替わり、約四十分に渡る講演を聴き終えると、もう一度A面に戻して何度も何度もテープを聴いた。正直な話し、小学校時分にオトンから教えてもらった『人生の虎の巻』のお陰で、日常から積極思考だったオレは意識も高く、テープの内容はすんなりと入って来ると同時に、聴きながら自身の確認作業も出来た。更にオレの第六感が、この成功哲学を自身の物にする為には、この内容を暗記するくらい聴いた方が良いと判断し、明くる日からウォークマンで暇さえあれば聴いていた。その内容を集約すると、ポール J マイヤーの言葉に、


『やればできる能力があるのに、望み通り進歩しない原因は、目標が明確ではなく、鮮明ではないからだ!』

『思い切って自分の生きたい人生をデザインし、そしてそれに向かって己自身の力を信じ、本当に行動すれば、それは必ず我が物となる!』


 とある。そしてそう代弁してくれている講師の方の言葉に、


『鮮やかに想像し、熱烈に望み、心から信じ、魂を込めた熱意を持ち、勇気を持って行動するならば、何事も必ず現実のものとなる!』


 とあるが、それでは具体的にどうすれば自身の成功を手にする事が出来るのかという事だが、人は自己実現に向かって己の中に眠っている潜在能力を掘り起こし、決意を持って行動を起こさなければならない。そうする事によって自然の力が好転的に働くものだとテープを聴いてオレは理解している。

 では前文にある潜在能力とは何か? 成功とは何かを説明していく前に、世界中で成功を収めた人の統計を述べると、


 大成功した 3パーセントの人々

 成功した 10パーセントの人々

 なんとかまぁやっている 60パーセントの人々

 援助してもらってなんとか生活している 27パーセントの人々


 と、この構成で成り立っているのだそうだ。

 その内の大成功している 3パーセントの人々は、


『目標を持ち、その目標を具体的に紙に書いていた』


 という結果が共通項で出て来たらしく、10パーセントの人々は、


『目標をハッキリと頭の中に描いていた』


 という結果が出ていた。そして3パーセントと10パーセントの人々の差は紙に書いているか書いていなかったかの差ではあったが、その所得をとってみても十倍のひらきがあったという。したがって10パーセントの人々が三千万円の預金を持っている時、なんと紙に書いていた人々は三億円の預金を持っていたのだ!

 余談になるが、60パーセントの人々は持っているとしても短期目標で、例に挙げると、この夏にどこか旅行しようかと仮に思っていても、その旅行の予定も立っていない、民宿の予約もしていない。ホテルの予約もしていない。このパターンが60パーセントだという。

 最後の27パーセントの人々はまったく無目標で、恐るべき事に親子三代に渡って、この27パーセントの最下位に入っていたという結果が報告されている。


挿絵(By みてみん)


 さて、講師の方の話しに戻ると、


『人は敗北の為に生をうけたのではなく、成功する為にこの世に生まれて来た』

『現実には成功の道を歩んでいる人は少ない』

『成功の道を歩んでいる人は、肌の色艶も良く、目も輝き、未来を信じ歩んでいる』

『現実には不平、不満、愚痴、恐怖、疑い、心配というものにモチベートされている人が多い』

『成功を求めながらも、成功する人が少ないのは、成功とは何かを知らない人が多すぎるから』


 と説いている。

 あなたがもしも成功とはと尋ねられたら、あなたはどう答えますか? お金ですか? それともお金で買える物よりもっと大事なものがあると答えますか?

 最新の情報によると、成功とは六つの分野からなっていると言われている。


◎経済面での成功!

◎健康面での成功!

◎家庭生活面での成功!

◎社会生活面での成功!

◎教養面での成功!

◎精神面での成功!


 したがって心臓が悪い。腎臓が悪い。ちょっと痔が痛い。と不平、不満、愚痴、恐怖、疑い、心配、嫉妬、怒り、憎しみ、敵意、偏見、内気、臆病、妬み、嫉み、優柔不断と色々な反モチベターな事を言って、今おかれている境遇を人のせいにするのは、過去その人がやってこられた結果であり、誰の責任でもない訳なのである。くどいようだが、それぞれの過去の選択の結果が現れているのである。ディフェンド オン ユアセルフDefend on yourself あなた自身の問題であるという事を頭に入れておこう。


挿絵(By みてみん)


 そんな訳で、現在の考え方、心構えが、次の結果を生んで行くのである。したがって今どういう考え方をしている、今どういう心構えを持っているかという事が、将来花が咲くか、しぼんでしまうかの鍵になるのだ!


 話を進めて行こう。六分野の成功の内、経済面ではお金があって、健康面では身体が漲るパワーがあって、そして家庭生活が上手く行っている事が理想だが、会社では偉い偉いと言われているお父さんが「ただいま」と家に帰った途端、お母さんと子供達が茶の間で和やかにやっていたのが、子供は自分の部屋に逃げて上がり、奥さんはさっさと新聞を読むというような、家庭生活で粗大ゴミ扱い又は無能者扱いされていないだろうか? 奥さんに愛され、子供たちに尊敬されているだろうか? これは父親の例を引用に出しているが、自身に当てはめてみよう。もし家庭生活がもう無茶苦茶で、


「俺はいいんだ……」

「俺は会社でガツガツやれればいいんだ……」

「一生懸命やれば家庭は別にいざこざがあっても、これはやむをえないんだ……」


 と言っているあなた! これは逃げ口上であって、これが出来たからこれが出来ないではなく、ポール J マイヤーはこう説いている。


『相反する二つの事、三つの事を同時に並行する時代、インテグレーションの時代、統合の時代』


 と……。


「これをやったらこれが出来ない……」

「何々がいるから何々が悪い……」


 全部他の責任にすると同時に、一つの事、


「これをやったらこれが出来るんだ……」


 ではなく、


「仕事もやるよ、自分の健康もバリバリやるよ!」

「健康もちゃんとした自分の体をキープするためのプログラムを持っていますよ!」


 と、70歳まで自身をキープ出来るような自身の為のプログラムを持ち、経済面、健康面、家庭生活面すべてにおいて成功して行かなければならないと言っている。


 四つ目の社会生活面を言い変えれば対人面である。これは人との繋がりが重要となってくる。その繋がりの中に、あなたはノーマンNo Manを何人友達として持っているだろうか? 自分が間違った事をした時にノーを言ってくれる人である。

 解りやすい例を挙げよう。晩年のエルビスプレスリーが過食症になり、ジャンクフードや丼ぶり鉢一杯のビタミン剤を食べまくって体重が激増した時、マネージャーやそれまでプレスリーに関わって来た人達が、


「プレスリーさん、そんな食生活をしていたら身体がますます悪くなるばかりですよ!」


 と注意したところ、


「誰のおかげで飯が食えているのだッ!」


 と、プレスリーはそのノーマン達を切って行ったのだそうだ。

 その後プレスリーの周りに残った人達は、


「プレスリーさん。今日も恰幅が良く貫禄がおありになってよろしいですね」


 などと身近にイエスマン達を残し、プレスリーは四二歳の若さで亡くなったのだという。


挿絵(By みてみん)


 更に男が一生使ってはいけない言葉が、


「誰のおかげで君達は飯が食えているんだッ!」

「誰のおかげで給料がもらえているんだッ!」

「誰のおかげで学校が行けているんだッ!」

「誰のおかげでおまえら毎日仕事があるんだッ!」


 女の人が母親になった時に口に出してはいけない言葉は、


「誰のおかげであなたはこの世に生まれてこれたのッ!」


 すると子供からは、


「私は、産んで欲しくなかった……。お父さんとお母さんが(たわむ)れた結果私が生まれて来たんじゃないのッ!」


 と言葉が返って来るだろう。


 五つ目の教養面での成功は、『教養の無い方は成功の人生を歩む事が出来ない』と講師は解いている。そして最も大切な成功要素六分野の一つ、精神面の成功では、心、ハート、人柄、人格、思いやり、温かさ、人間としてのハート。これをどの程度持っているかによって、その人の精神面が、お礼として品位品格というのをその人の顔に与えてくれるらしく、したがって四十にして品位品格の無い方は非常に問題があるのだそうだ。


挿絵(By みてみん)


 人生の六分野、経済面、健康面、家庭生活面、社会生活面、教養面、精神面の中で、あなた自身が悔いの残るような人生を送っていたならば、自身が臨終の時に次のような羽目になる。


「こんなはずやなかった……」

「もっとやりたかった……」

「家庭生活ももっと上手くいくと思った……」

「仕事面でもっと良いポストがもらえると思った……」

「もっとみんなから尊敬されると思った……」


 その時にあなたはノーマンNo Manにこう言われる筈である。


「なぜあなた生きている内にやらなかったのッ!」

「最後にどうしてそういう情けないことを言うのッ!」


 私達は今生きている。皆エネルギーを持っている。バイタリティーも持っている。今これを使わない手はないのである。あなた自身が今健康な内に、やろうと思う事はすべてやっておくのだ。それには一つ条件があり、やはりここでもやりたい事を目標として書く事を解いている。


 統計によると、人は持っている力の十パーセントを使っている人は少ないと言われている。残念な事に残りの九十パーセントの力が懇々と眠っている訳である。ポールJマイヤーはそれを、


『スリーピングジャイアンツ』


 と訳している。このスリーピングジャイアンツが永遠の眠りにつくのが、四十を境にした厄年といわれている。

 例えると、三段式ロケットの一番下の部分が三十五・六・七歳とした場合、その一番エネルギーを持っているロケットが打ち上げられ、やがてそこは切り離されて二段式に入るのだが、この時には一番下とはまったく違う質の高いものが二段式になる。したがってここで完全に切り替えなければいけないのに、もしここで心構えや考え方を替えなければ厄と共にこの人には、


「人生とはこんなもんや……」

「一生懸命やってもみんながみんな成功出来る訳じゃなし……」

「俺は俺なりにやっとる。俺の一体どこが悪い! 悪いとこあったら言ってくれ!」


 と自分の過ちにも気付かず、(わび)しい人生の終盤が待ち受けている。

 これを読まれる読者一人一人の何万人という方々が、本当に己自身の能力に目覚め、


「よぉ~し、やるぞぉ~ッ!」


 と本当に始動し始めたら、その人それぞれに自ずと望む幸せの道が開けるのは勿論の事、各個人がライオンとなるのである。そしてこれがもし企業や団体であるならば、この集団がライオンの集団にならなければならない。したがって本当に伸びる企業や、ある目的の為に邁進(まいしん)して行動を起こす団体というのは、ライオンの集団なのである。

 しかし集団にも二つの集団がある。一つはライオンの集団。もう一つは羊の集団である。ライオンは各々(おのおの)悠々(ゆうゆう)と夫婦単位で生活し、獲物を狙う時だけ群れを組み、一斉に計画を練って風下から追うライオン、更にアタックするライオンと、各自が阿吽(あうん)の呼吸で意思の疎通(そつう)を図り役割を持っている。そして力を合わせて一つの獲物を倒し、互いに食べ物を腹一杯食べ終えたら、また悠々ともとの夫婦単位に戻って行くのである。

 少し話が逸れるが、オレはこの岸和田物語シリーズ1の文頭に述べている、ある目的の為に故郷に帰郷した訳なのだが、岸和田物語シリーズ4の巻末に明らかになるその目的を実行する為には、ここで述べているライオンの集団となるべく、一人一人が目的を遂行する為に、意識の高い思いやりある人々を待ち望んでいる。その続きは岸和田物語シリーズ4の巻末で具体的に述べる事にしよう。


    挿絵(By みてみん) 


 さて話を戻すと、このライオンの集団という組織が会社であった場合、出勤して仕事の時間が始まると、皆がライオンとなって一斉に集まり一つになる。そして仕事が終わったら悠々と自身の巣へと引き上げて行く。これがライオン集団。

 もう一つは羊の集団。この集団はお互いに慰め合い傷を舐め合っている。お互いが不平不満を言いながら、


「そうか今、円高で何々……」

「あっちも悪いらしいで!」

「よかった、俺とこも悪いけどみんなも悪いやないか!」

「しょうがないやん。次またがんばろ!」


 などと言って、この集団の行き着く先は、皮を剥がれて肉を食われて終わりである。

 本書を購読する素晴らしい読者の方々は、ライオンと羊で例えるならライオンであって頂きたいが、しかしそうなる為にはライオンの道がある。それは実行するという事である。動くという事である。これまでの話を頭に入れるのではなく、自身が思い描く目標の為に実行に移す事があなた自身の成功への第一歩なのである。

 頭では解っている。しかし実行しているものが勝ちではないだろうか? スリッパを並べなきゃいけないという事はみんな知っている。しかし腰をかがめてスリッパを並べた人が勝ちではないだろうか?


「知っている。俺は知っていたんだッ!」


 やらなきゃいけない事は知っていた。と、仮にそのように言ったとしても、


「じゃあお前どうしてやらなかったんだッ!」


 と人は言うだろう。やらないという事は知らない事と同じ事なのである。同時に、どんなに自身の素晴らしい哲学を持っていたとしても、それを実践しなければ何の意味も持たない単なる理論になってしまうのだ。

 これまでの話に自身が気付き、


「よぉーし、そういえば俺はやってない!」

「実践までは行ってない!」


 と思われる人は、どういったメカニズムで何故それまでに至ってしまったのであろうか? その答えは、人間がその一つの考え方を自分の行動に取り入れる為には、最低六回の繰り返しが必要だとされているからである。

 これは、


『間を置く反復』


 と呼ばれるもので、一つの物を自分の体の中に本当に定着させようとする場合は、六回繰り返されて初めてその六十二パーセントが理解され記憶されると統計に出ているのだ。

 その方法を具体的に述べると、もし本当に素晴らしい自身の考え方があるのなら、声を出して毎日一回、同じ時間に、少なくとも六日間連続して同じ内容を同じトーンでその考え方を繰り返し読みあげる。そしてそれを即行動に移してみる。その時に、初めてその六十二パーセントが体に定着し始め理解され記憶される。しかし私達は解っていながらなぜ実践や行動に移さないのかと問うと、それは、私達は未知のものに向かっては行動しないからである。しかし頭の中に本当に描けたならば、私達はそれに向かって猛烈に行動するという本性があるので、今行動しているすべての行動は、頭の中に何を描いているかによって決まるのだそうだ。言うなれば、朝起きて会社に出る時に、会社でダラ~っとしている自分の姿、更には社長に怒られている自分の姿を想像した時、果たしてそれに向かう意欲ある行動が湧いて来るだろうか? はいとは言えない筈である。私達が本当に自身というものを高め、そして行動的な真の自分になるように、行動を駆り立てるその唯一の突破口は、頭の中に己自身がなりたい像を鮮明に描く事なのである。

 唐突だが、あなたは一年後の自分のなりたい姿を描けているだろうか? 


「俺はこういう人間になりたいんだ!」


 端的に例えれば上記のようなものであるが、それは鮮明であればある程よい。自身のすべての神経をそこに集中し、そして自分のなりたい姿を出来る限り詳細に思い浮かべてみる。しかしほとんどの方々は自身の一年後、二年後、五年後の姿は思い浮かべられないのではないだろうか? そしてまた会社関係に携わる方々も、会社の一年後の姿、二年後の姿はビジュアライズ出来きても、自身の一年後の姿、こうなりたいという姿を本当に思い浮かべられますか? もしそれが鮮明であればあるほど人という生き物は、


(どうしてもそうなりたい!)


 と次に欲望というものが体の中に湧いて来るのだ。その際に、


「ご主人様やっと気付きましたね!」

「ご主人様やっと目を覚ましましたね!」

「あなたそこに向かって動きたいのですか?」

「よろしい、お手伝いいたしましょう!」


 と助っ人として現れて来るのが潜在能力なのである。したがって潜在能力を呼び起こす鍵は自身が持っているのだが、大抵の人は潜在能力という開く鍵を、自身で太平洋の真ん中へポチャーンと捨てているのが現状である。しかしこの自身の中にある潜在能力という鍵を使わなければ、せっかく購入した新車を一生ガレージに眠らせて置くのと同じくらい無意味な事でもあるのだ。では潜在能力を使う為にはどうすればいいのか? 

 それにはやはり、


(どうしてもそうなりたい!)


 と欲望が湧いて来るほど強烈な像を頭の中に描かなければならない。それによって人間はモチベートされ行動に移る訳である。


挿絵(By みてみん)


 今、食事前と仮定して、例えばビフテキ、あるいは焼肉が油を滴らせながらジュージューと音を立てて焼けている所を鮮明に思い浮かべてください。もし本当に鮮明に頭の中に描けたなら、きっと唾が出て来ると思います。更に梅干を口に入れ、舌の上に乗せ、そのあと歯で噛み砕いた所をリアルに思い浮かべれば思い浮かべるほど唾が出て来るはずだ。つまりこれは思い浮かべたものに体が反応するという例である。

 私達は一体毎日毎日何を思い浮かべているのか? それによって行動がモチベートされるのだが、もっと例を挙げてみると、


「自分はお金が一億円欲しい」

「いいでしょう。じゃあ一億円をビジュアライズしなさい! 一億円を頭の中に描きなさい!」


 と言われたら一億円は一万円札でどれ位の高さになると思いますか? もし一億円の高さが解らないのでビジュアライズ出来ないと言うのなら、あなたにはビジュアライズ出来ないのだから一億円はまだ早いかもしれない。したがって、自分は一億円をこう置いて、一枚一枚が手に取って見え、そしてあの刷ってある顔がカラーで自分の頭の中に焼き付いて来る時に、強烈に欲しいという欲望が出て来るのである。

 他の例をもう一つ挙げてみると、若いピチピチした女の子のヌードを思い浮かべてみたとして、その女の子が、「ねぇもう、あなた来てちょうだい」とベッドで寝そべっているとビジュアライズしてみる。するとはっきりビジュアライズ出来る人は、だいたいアソコとアソコの二点ぐらいはまぁしっかりビジュアライズしていると思うが、後は大体ぼやけているものである。その時こう聞くと、


「じゃああなたが今思い浮かべている女性の目は一重ですか? 二重ですか?」


 するとそこでまた焦点を当て直して一重か二重か考え直し、更に、


「髪型はどんな感じですか?」

「髪型? 髪型はそういえばショートだなぁ~」

「じゃあ唇と鼻と胸はどんな形をしていますか?」


 とまぁここは答えられるだろう。そして更に、


「足の長さはどうですか?」

「その人は肥えていますか? 痩せていますか?」

「肩はなで肩ですか? いかり肩ですか?」


 と尋ねて行ったら、その都度その都度焦点を当て考え直すのだが、つまり描いた時にはぼんやりとしたヌード姿しか思い浮かべられていなかったら、人間それに向かって努力しようとするだろうか? おそらくしないはずだ! ところがそれがハッキリと強烈にイメージ出来た場合、性欲が刺激され体が反応して来るのである。したがって頭の中に強烈にイメージを描かなければならないのだが、それ以外にもっとも描かなければならないのは、自分がこうなりたいと思う自分の姿である。

 話は戻るが、人生の成功六分野において目標を立て、経済面はどうしたい。家庭生活面はどうしたい。健康面はどうしたいとその姿を強烈に、全神経を集中して頭の中に焼き付けた時に、初めて、


(やりたい、どうしてもやりたい!)


 という抑えきれない抑えようのない欲望が湧いて来るのだ。これをポールJマイヤーは、


『モチベーション』


 と呼んでいる。更にポールJマイヤーはこう言っている。


『その時に強烈な欲望が湧いて来よう、その時に期限を設定しなさい!』


 したがってこの成功の五つの原則の内、まず第一原則、


『鮮明に結晶化せよ! 自分が欲しい物、なりたいものを出来るだけハッキリ、そして神経を集中してみなさい。必ずあなたの頭の中に見えて来る!』


 そしてそれがハッキリ見えた時に、


『その時にいつまでにやるという期限を設定しなさい! そして期限を設定したならば、その期限にあわせて行動計画を造れ!』


 これが第二原則である。第三原則で、


『その湧き上がる欲望をよりいっそう燃やせ!』


 そして更に欲望を燃やすと、その欲望が大きくなった時に、


「やれるッ! 俺は出来るッ!」


 と必ず自信が沸いて来ます。


『その自信を己自身の中に培え!』


 というのが第四原則です。そして、そこまできたら第五原則。


『人々が何を言おうと何をしようとも、何を言って思おうと構わない。自分の描いたその夢に向かって驀進(ばくしん)せよ!』


 これが成功の五つの原則である。


挿絵(By みてみん)


 これまでの話を聞いても、


「いやぁ~、ちょっとなぁ~」


 と、まだ知識だけ入れて実行に移さない方もいるかも知れないが、そういう人はなぜ行動を起こさないのか? それにはちゃんとした根拠があるのだ。

 私達は幼い頃から条件付けで育てられる。その条件付けはまず幼少期の両親の条件付けから始まり、


「そんな事してはいけませんッ!」

「そんな事出来るわけないでしょッ!」

「そんな事したら人は笑ってますよッ!」

「人には身分相応という事があるんだッ!」


 こうして


「出来ないッ! 出来ないッ! 出来ないッ! 出来ないッ!」


 という条件付けを徹底的に受ける。小学校、大きくなると近所、それがやがて中学校、高校と様々な所で条件付けが始まる。


「そんな事出来るわけがないッ!」


 そしてこういった言葉によって私達は大人になり、どんな事でも出来るのにも関わらず、なお昔の条件付けを引きずっている人があまりにも多く居るのだ。

 私は出来ないではなく、


『私は出来る!』


 である。

 月へロケットを飛ばした男がいた。そして月へ人類を運んだ。その男と周りの人達とどこが違うだろうか? 能力は大体同じである。彼と周りの人達の唯一の違いは、彼は、


「出来る!」


 と考え、周りの人達は、


「出来るわけがない!」


 と言ったのだ。

 百円でライターが出来ると言った男がいた。しかし多くの人は言った。


「百円でライターが出来るわけない!」


 しかし出来ると言った男は、それを全部作りあげて来たのである。

 もしあなたが難問にぶつかり、


「それは無理だ……」


 と言ったら、他の人が手を上げあなたに代わりにやるはずだ!

 これが会社での場合、


(自分がこの存在であるから会社が発展しないのではないかなぁ~?)


 などと考えている訳で、厳しい事をいうようだが、

 あなたが今のポストにいるから会社が上手く回っていないのではないですか?

 あなたが会社を辞めて他の人に変わればもっと上手く回るのではないですか?

 これが家庭での場合、


(私が親父だから子供達が上手く育たないんじゃないか……?)


 などと考えている訳で、またまた厳しい事をいうようだが、

 あなたのお子さんを誰か他の人に預けたら、今よりもっとお子さんが上手く育つのではないですか?

 つまり会社であなたが今のポストに座り、あなたが親父であること事態がガンになっている場合だってあるのだ。あなたが居なかったらもっと上手くいっている場合だってあるのだ。

 しかしここで考えて欲しいのが、


(俺が居るから俺がガンじゃないのか……)

(俺が頑張ってない。俺が意気消沈させているのじゃないか……)


 などとそう思っても、何もしょげる必要はないのだ。


〘会社は、その人の器以上には大きくならない〙


 とよく聞くが、近年では、


〘会社はその人の器以上大きくしてはならない!〙


 となっている。器以上大きくしたら周りに害をもたらし、社会公害になってしまうのだ。あなたがもし7の人間であれば、7以上の事をやってはいけないのだ。必ずこれは何らかの形で社会に迷惑をかけてしまうからだ。本当に伸ばそうとするなら、その唯一の方法は己自身が伸びる以外ないのだ。それには一にも二にも行動である! 頭でとやかく考える必要はもうないのだ。私達の中にはもの凄いパワーが有り、それを行動に移さなかったら出来ないのと同じなのだ。

 結論を述べると、私達は小さい頃からの条件付けで、私達は、秘伝として出来ないという言葉が出て来るのである? そして条件付けの結果いつもよく使う言葉に、

 不平、不満、愚痴、恐怖、疑い、心配、嫉妬、怒り、憎しみ、敵意、偏見、内気、臆病、妬み、嫉み、優柔不断

 などが上げられる。これはすべて『反モチベター』であり、一つも持ち合わせてはならない処分すべき思考なのだ!

 この反対の言葉に、勇気という言葉がある。オー・ヘンリー短編集の中からある画家のお話をしよう。ある画家がおりました。彼は自分が描く偉大なる作品の事を友達に話しました。友達は感動しました。


「何という素晴らしい。それが出来たら、これは文化が本当に変わってしまうぞ!」


 事実、それがもし実現した時には、彼の名前はレンブラントやルノアール以上の名声を博するほど立派なものでした。そして彼はどうしたでしょう? 毎日毎日その事を人には話しました。しかし、部屋が悪いとか、リュウマチが痛いとか、なんやかんや理由をつけて、いつまで経っても絵筆を執ろうとはしませんでした。そして数年が経過しました。あるとき友達が彼の部屋を訪ねました。彼のアトリエのドアを開きました。友達は仰天しました。ベッドの上で死んでいたのです。そして彼の死とともに幻の名作もこの世から消え失せたのです……。

 生前彼は頭ではいくらでも考えました。人にお説教もしました。話もしました。しかし彼は最後まで絵筆を執らなかったのです。始動する勇気に欠けていたのです。始動する勇気がなかったのです。最初の一歩を踏み出す勇気がなかったのです!

 講師の最後の言葉に、


『一度しかない人生です。どうしてもこの人生、成功に終わらさなければなりません! 同じ一回しかないならば、やった方が得じゃないですか? やろうじゃないですか思い切って! この人生に向かって、己自身を信じ、未来を信じ、そして大自然の偉大なる力を信じ、さぁ今この時こそ勇気を持って第一歩を踏み出す時です!』


 とここまでがポール J マイヤーの成功哲学の話しだったのだが、自分で言うのもなんだが、元々超前向きなプラス思考のオレは、頑固と言われるほど意志の強さも超の付く独自の物を持っていた。そんなオレだけにこのテープを聴き終えて、自身の意識が更なる高みへと上り、確信の世界へと替わった。これを使わない手はないと思った。そしてオレは第七の成功、遊びの分野でも成功してやろうと思った。


 更に、ポール J マイヤーとは違うが、この頃オトンから教えてもらった心に残る感銘を受けた詩を二つ紹介しておこう。


 『そのうち』

 そのうち お金がたまったら

 そのうち 家でも建てたら

 そのうち 子供から手が放れたら

 そのうち 仕事が落ちついたら

 そのうち 時間のゆとりができたら

 そのうち………

 そのうち………

 そのうち……… と、

 できない理由を

 くりかえしているうちに

 結局は何もやらなかった

 空しい人生の幕がおりて

 顔の上に 淋しい墓標が立つ

 そのうちそのうち

 日が暮れる

 いまきたこの道

 かえれない

          by 相田みつを


 もう一つが、


 『行動の原理』

 夢なき者に目標なし

 目標なき者に計画なし

 計画なき者に行動なし

 行動なき者に成果なし

 成果なき者に幸福なし

 堂々たるBusiness

 堂々たる人生

   利他愛

     &

    共に喜びを……

        by うちのオトン


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