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其の四 同罪

 中学に上がると小学校の時よりも更に内容の濃いクラブ活動が始まり、帰宅部という選択肢もあったが、オレは小学校からやっていたサッカー部に入部する事にした。練習場となるグランドは、春木中学から一キロほど離れた春木グランドという場所で行われるので、放課後練習着に着替えて春木グランドに行ってみると、サッカー部のメンバーの内、一年生から三年生までのほぼ半数がJFCの知った顔ぶれだった。練習が始まると上級生はボールを使った練習を行うのだが、一年生は一切ボールを使わせてはもらえず、基礎体力作りと称したランニングや筋トレが一年生の主な練習内容となっていた。そして二日目からはグランドにも行けず、学校の周りを永遠とランニングさせられるのである。しかし日を重ねて慣れ始めると、顧問の先生が四六時中監視していない事が解り、一年生の中でもオレを含めた数人だけが、コース内にある駄菓子屋で暇を潰しサボっていた。そして顧問が時折職員室から出て来ては正門前でタイムを計り出すのだが、その時は真面目に走っている一年生の仲間が駄菓子屋に寄ってくれ、「おい、計り出したぞ!」と情報をくれると、オレ達は頭から水道水を被り、さも走って来た感を醸し出しながら正門前を通過した。この地点から一周のタイムを計られているので、とりあえずは一周しなければならなかった。しかし一周が二キロ程あるので、オレ達は正門から右に折れた所で学校の壁をよじ登り、校内を通って正門から見えない道が折れた所まで行き、適当な時間を見繕ってまた正門を通過した。しかし体内時計ほど当てにならないものはない。いざ正門の前を通過すると、


「山本、お前ら世界新記録より早いタイムやんけ!」


 とサボっていた事が顧問にバレ、


「お前ら後でグランド十週な!」


 と顧問の見ている前で更に走らされる事になるのである。

 そんな日がしばらく続き、ようやく春木グランドで練習に参加させてもらえる日が来ると、春木グランドに運ぶラバーコーンやゴールネットにボールなどの必要道具を、一年生は前もって部室に取りに行かなければならなかった。そんなある日の事、いつものように練習前に部室に道具を取りに行くと、JFCの先輩でもある、あの小学四年生の時にSEX話を持ち掛けて来た二学年上の八男君が、練習着を着た格好でウンコ座りしながらタバコを吸っていた。


「うわっ、ビックリしたえぇ~、先生かと思たやんけぇ~っ!」


 扉を開けるなりいきなり言われた。


「ちょお早よ閉めえって、煙漏れるやんけぇ~」


 オレがラバーコーンやサッカー用具を持って部室を出ようとすると、


「武ちょっと待てってぇ~、お前も一本吸えや!」


 と、八男君はセブンスターの箱を指でポンポンしてタバコを一本箱から伸ばすと、マイクを人に向けるように腕を伸ばしてオレに勧めて来たのだ。


「いや別に要らんよ」

「そんなん言わんとええから吸えや」

「いやホンマええって」

「武、男やったら黙ってセブンスター吸ったらんか~い!」

「えっ、ほならセブンスター吸われへんかったら男ちゃうんけ」

「そや、男ちゃう。あっ、武ビビってんかぁ~?」

「いや、別にビビッてなんかないけど」

「あっ、よう吸わんのや、咽るのが怖いねんなっ!」

「いや恐ないよぉ~」

「ほなちょっと吸うてみい」


 そう言われてオレは促されるままタバコを口に銜えると、透かさず八男君はライターを向けて火を点けてくれた。一吸いして肺に入れてそのあと口から煙を出すと、


「はい、これで武も同罪。タバコ先生にチクったらお前も怒られる」


 と八男君は安堵した表情になった。八男君が執拗にタバコを勧めてきた理由は、チクられる事を恐れての事だった。なんともまあ~(こす)い理由である。


「八男君、端からそんなもんチクるかいなぁ~!」


 そう言うと、二人して笑い合いながらウンコ座りで鼻から煙を出した。

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