其の三 竿竹
平成十一年度の祭り、オレは逸早く大工方になる為に十五人組に籍を移したかったが、この年はまだ十五人組に上がる事を見送った。それは柳井をこの年団長として指名したオレなりの見届ける義務と、青年団の行く末を案じ相談役として残ってやる必要があったからだ。
しかしオレが案じていた事も祭りが始まって杞憂だと感じた。よく親は無くとも子は育つというが、オレが居なくとも若い者は若い者なりに楽しんで祭りをしていたからだ。
この年の祭りには、横浜からモンゴルマンことモンちゃんと、東京から帰省していたトウダイこと喜代彦も参加し、約八か月ぶりの再会を祭りで共に楽しんだ。祭りが終わってもしばらくの間モンちゃんはマウ二に滞在し、互いに身体の大きい瀬尾とモンちゃんは仲が良かったので、二人を連れて犬鳴山温泉に向かった。
浴場では男湯と女湯を隔てている壁の天井近くに、空気孔のような穴が開いてあり、その穴から聞こえて来る女湯の湯を浴びる音や桶が浴場に打つ音が、オレ達男共の女体への想像を掻き立てた。都合の良い事に男湯にはオレ達以外に誰もいなかった。
「瀬尾、モンちゃん。肩かして!」
「えっ、タケッちゃん覗くんけ?」
「おぉ、ちょっと覗いてみる」
「マジでたけちゃん覗くの?」
「チョットだけ、チョットだけ」
190センチ程ある大男二人の肩を借り、組体操のようにしてオレは壁伝いに空気孔まで辿り着くと、そーっと穴に顔を近付けた。
「うぉ、オッパイや!」
「マジでタケッちゃん!」
「うわっ、また一人入って来た!」
「うそやっ、ちょっと変わってよ!」
「瀬尾揺らすなっ、観にくいやんけぇ~っ」
「タケッちゃん現状報告してよ」
「うわっ、股洗い出したっ!」
「丸見えけ?」
「おう。ボウボウや! なんか隠し撮りのエロビデ観てるみたいやわ!」
「うそやっ、マジで! ちょっと早よ代わってよっ!」
「瀬尾なに興奮してんな! じっとしとけってッ! うわっ、ちょっと瀬尾落ちるってッ! うわぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~っ!」
瀬尾が興奮して身体を揺らしたので、オレは体勢を崩し大浴場に水しぶきを上げて落ちてしまった。
「お~い瀬尾、もうちょっとゆっくり観らせよなぁ~」
湯から顔を上げて瀬尾にそう言うと、瀬尾は膨張していたチンコを両手で隠した。
「お前オレの言葉だけで立ってんかい! 凄まじい想像力やのぉ~ッ!」
「そう言うタケッちゃんかって、物干し竿になってるやぁ~ん!」
笑いもって言う瀬尾に、
「そや、濡れたタオルも干せるぞ!」
と言って、オレは手に持つタオルを我が竿竹にぶら下げてやった。
「しかしタケッちゃんほんまアホやなぁ~!」
「瀬尾、そんなにオレを褒めてくれるな!」
横で見ていたモンちゃんは、瀬尾とオレの掛け合いを、まるで漫才でも眺めるように見て笑っていた。