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其の二十 永遠の絆

 十月に入り、引き合いの返しで無事太井町の祭りも終え、太井町の落索にも皆招待して頂いた数日後、ブチから突然電話が入った。ブチはタケタケと共に綱中責任者をしてこの年の祭りを盛り上げてくれた、歳はオレよりか五つ下のタケタケと同様に可愛い弟分である。そんなブチがオレに話があるので八幡公園に来てくれと改まって言って来たのである。


「どないしたんな、改まって話って?」


 公園に赴くと、


「実は……」


 とブチはいつになく真剣な表情だった。


「俺らの年の中で俺と桃木と岡ちゃんと三人、これは前から決めてた事なんやけど……」

「なんや、決めてた事って?」

「うん……」


 と少し話し辛そうだった。


「俺ら三人前々から旧市の祭りしに行きたかったんやけど、武くんが団長行く年は絶対おもろなるから、武くんが団長終わるまでは八幡町に()っとこって決めてたねん」


 衝撃と同時に嬉しさと悲しさがオレの中で入り混じった。


「だからケジメとして……、俺……、武くんに八幡町辞めること認めてもらいに来たねん」


 ブチの瞳はうるうると真っ赤に染まっていたが、涙は流さず、その眼には覚悟を決めた男の決意が見受けられた。


「で、どこの町行くんな?」

「春木南」

「そうかぁ~、春木南かぁ~、春木南やったら旧市に行けるもんなぁ~、そやけどブチ、一つだけオレと約束せえ! その約束するんやったら春木南に行くのん認めたる!」


 オレの中ではブチの祭りに対する志を尊重して、春木南に行く事はもうすでに認めていた。


「何、約束って?」

「もしも春木南に行って向こうの祭りに参加して、祭りがおもろなかったり、やっぱり八幡町に戻って来たいなぁ~と少しでも考える事があったら、その時は気兼ねなく素直に八幡町に戻って来るって約束するなら辞めること認めたる!」


 この言葉はオレの中の親心である。

 しかし頭の固いお茶目で少しおバカな生真面目なブチは、


「いや、春木南に入った限りは決して辞めません!」


 と決意を表明し、


「いや、ブチ、そこはわかったの一言でええんとちゃうかぁ~」

「いや、やっぱり入った限りは辞めたらアカンと思うし」

「いや、いや、いや、いや、ブチ! そこはドラマのワンシーンのように、オレの優しさに飛び込んで来る所やろぉ~っ!」

「いや、そやけど入った限りは絶対辞めません」


 とブチは譲らなかった。それにしても可愛い弟分である。オレが団長としての采配を振るう山手の祭りが終わるまで、このオレに付き合ってくれたのだから……。

 後にブチは途中参加で春木南青年団に入団したが、綱元という大役までこなす男に昇り詰めた。他町に行けども、いつまでもオレの可愛い弟分である。

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