其の十八 落索(らくさく)
祭り後の片付けを経て、この年の落索(行事あとの慰労の宴)は皆で話し合った結果、祭りに収録に来た『純情学園男組』が放映される9月26日の土曜日に、会館で鍋をしながら皆でその放送を観ようという事になった。これまでの店を貸し切ってコンパニオンを呼ぶなどの落索とは違い、会館での地味な鍋会だが、オレ達にとっては皆がテレビに映ると大はしゃぎだった。鍋の品目は瀬尾が当時相撲部屋で作り慣れた『塩ちゃんこ』である。瀬尾の塩ちゃんこはそこいらのちゃんこ屋で出している物とは違い、ニンニク、柚子胡椒、塩などが出汁と溶け合った絶品の一品である。ちなみに瀬尾の愛ウサギ『大五郎』は具材には使用していない。
そんな塩ちゃんこを酒の肴に宴会が始まると、祭りの事を振り返って楽しく酒を飲みながら放映の時間を待った。
「おい、そろそろ始まるぞ、テレビ点けれ!」
そして放送が始まった。第4話『岸和田だんじり編』と称したその週のオープニングは、千日前の道具屋筋で男組メンバーが人数分ハッピを購入し、靴飛ばしで最下位の者だけが『いらっしゃいませ!』と文字の書かれたハッピを着用して皆で岸和田に向かうという、ハッピ争奪戦から始まった。そんな争奪戦は東野幸治が最下位となり、皆で南海電車に乗って春木駅に到着する場面がブラウン管に映し出されると、場は大いに盛り上がった。
更にストーリーが進んで行くにつれ、あの待機して行った最後から二本目の遣り廻しが映し出されると、
「うわっ、俺、映ってる!」
「うわっ、俺もや!」
「瀬尾くんアップでおいしいなぁ~!」
など様々な事を皆が言い合って、場は更に盛り上がりを見せた。
VTRは更に進み、男組メンバーが八幡町に訪れた場面に入ると、
「待ってましたぁ~っ!」
「よっ、大統領ぉ~!」
などと言って笑いが絶えないのだが、神社のタイヤレースの場面ではみな集中して見ていた。(そんなタイヤレースだが、この放送を見た旧市の青年団達が、内の町もタイヤを引っ張って走り込みの練習をしようと翌年から導入されたらしく、エスカレートした、とある町が、軽トラに綱を付けて公道で事故を起こしてケガ人が出た為、岸和田市では綱に物を付けての走り込みの練習が禁止されるようになったのである)
一次会の会館での落索が終わると、これまでの八幡町では筆おろしと称した童貞組を信太山(遊郭)に連れて行く行事があったが、二次会の信太山は一旦お預けになり、綺麗なお姉ちゃんが接客してくれる店に皆で流れた。男ならば金で女を買うのではなく実力でもぎ取れ! である。その競争率に敗北した男達はほぼ多数だったので、結局三次会で信太山に行く事になった。青い青春である。